文春新書『英語学習の極意』著者サイト

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37 観た・読んだメモ

令和3年12月21日から令和4年4月30日までの実況です。項目ごとに、日付を遡る形で記載しています。
ひとつ前の 令和3年9月6日~12月20日 の実況はこちら。
ひとつ後の 令和4年5月1日~9月16日 の実況はこちら。


観 た:

令040430  明日をひらく ― 受賞作家の現在(北村一二三・岡田修二・末永敏明・菅原健彦) @ 上野の森美術館ギャラリー

令040430  第40回 明日をひらく絵画 上野の森美術館大賞展 + 第39回上野の森美術館大賞展入賞者展 @ 上野の森美術館

令040429  菊池玲生 個展―「日本画」のシミュレーション Reo KIKUCHI Solo Exhibition: Simulation of "Japanese style painting" @ アートスペース羅針盤

令040429  没後25年を考える 池田満寿夫の ”知られざる藝術” @ 不忍画廊

令040429  秋山 隆 彫刻展 @ 日本橋高島屋美術画廊

令040429  安田明玄佛像展 ―安田素彩の佛画とともに― @ 日本橋高島屋美術画廊

令040429  油彩の源流 ―我は観る― @ 日本橋高島屋美術画廊

令040429  東島 毅 "Me 3.0" @ 日本橋高島屋美術画廊X

令040428  Douce Lumiere(鷲見 茜・富田菜摘ほか) @ UCHIGO and SHIZIMI Gallery

令040427  MOTコレクション 光みつる庭 Garden of Light/途切れないささやき Continuing Whispers @ 東京都現代美術館

令040427  Tokyo Contemporary Art Award 2020-2022 受賞記念展(藤井 光・山城知佳子) @ 東京都現代美術館 3F

令040427  吉阪隆正展 ひげから地球へ、パノラみる @ 東京都現代美術館 1F

令040427  生誕100年特撮美術監督 井上泰幸展 @ 東京都現代美術館 B1F

令040426  MET Live | Richard Strauss: "Ariadne auf Naxos" @ 東劇

令040425  六原 龍 展 @ ぎゃらりぃ朋

令040425  開廊25周年記念展 ベストセレクション ~夜(コロナ)が明けたら~ @ 柴田悦子画廊

令040425  伊藤由華展 @ OギャラリーUP・S

令040425  エンク・デ・クラマー Enk de Kramer 展 @ Oギャラリー

令040424  Liebestraum(美術・多田さやか、踊り・皆川まゆむ) @ アトリエ第Q藝術

令040423  橋本 健 個展 @ ギャラリームサシ

令040423  流 麻二果 (ながれ・まにか) 「その光に色を見る」 Spectrum of Vivid Moments @ Pola Museum Annex

令040421  こまつ座 第141回公演 貧乏物語 @ 紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

令040421  極波 佑 展 Yu KIWANAMI Solo Exhibition: Hello My Pops Hero @ 新宿高島屋10階 美術画廊

令040420  旧安田楠雄邸庭園 The Former Kusuo Yasuda Residence and Gardens @ 文京区千駄木五丁目

令040416  朱 夫 誠 展 Light simulation @ Gallery Tsubaki GT2

令040416  内藤亜澄展 Hobby horse in the frame @ Gallery Tsubaki

令040414  モリケンイチ個展 「素晴らしき新自由世界 ―ロココ調ミゼラブル」 @ みうらじろうギャラリー

令040414  倉田明佳作品展 @ みうらじろうギャラリー@5

令040414  アンチポデス The Antipodes @ 新国立劇場 小劇場

令040413  広島ジャンゴ2022 @ シアターコクーン

令040412  藝大コレクション展2022 春の名品探訪 天平の誘惑 @ 東京藝術大学大学美術館本館 展示室1

令040410  Disney and Cameron MacKintosh's ミュージカル「メリー・ポピンズ」 @ 東急シアターオーブ

令040409  井上雅之展 ―多摩美術大学退職記念― @ ギャルリー東京ユマニテ

令040407  Daoko Exhibition "the twinkle of euphoria" @ Artglorieux Gallery of Tokyo

令040405  没後50年 鏑木清方展 + MOMAT コレクション/新収蔵&特別公開|ピエール・ボナール ≪プロヴァンス風景≫ @ 東京国立近代美術館

令040402  メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 @ 国立新美術館 企画展示室1E

令040402  第98回 白日会展 @ 国立新美術館 展示室2A~2D

令040402  小さな从展+从クロニクル @ 不忍画廊

令040331  サロメ奇譚 @ 東京藝術劇場 シアターイースト

令040329  Disney and Cameron MacKintosh's ミュージカル「メリー・ポピンズ」 @ 東急シアターオーブ

令040329  第45回从展 @ 東京都美術館 1階第4展示室

令040325  ドレスデン国立古典絵画館所蔵 フェルメールと17世紀オランダ絵画展 @ 東京都美術館 企画展示室

令040324  MET Live | Giuseppe Verdi: "Rigoletto" @ 東劇

令040324  いい芽ふくら芽 受賞者展 @ Artglorieux Gallery of Tokyo
(鷲見 茜「ふぐの子 れんげ小皿」2つを \11,000 で購入)

令040322  大沢 愛 展 Mana Osawa @ Gallery Q

令040322  命、ギガ長 (なが) スW (ダブル) @ ザ・スズナリ

令040319  野澤義宣 展 @ ギャラリー枝香庵

令040319  万物資生|中村裕太は、資生堂と    を調合する @ Shiseido Gallery

令040319  Vivle 2022 ―日常の煌めき― 女流画家五人展 @ シルクランド画廊

令040319  第57回 昭和会展 @ 日動画廊

令040317  VOCA 30 Years Story/Tokyo @ 第一生命ロビー

令040317  青野文昭 どこから来てどこへ向かうのか Where do we come from and where are we going @ 上野の森美術館ギャラリー

令040317  VOCA展 2022 The Vision of Contemporary Art 現代美術の展望 新しい平面の作家たち @ 上野の森美術館

令040316 Broadway HD "Present Laughter" @ 東劇

令040315  日本画のゆくえ ~ 継承と断絶・模倣と創造 Whereabouts of Japanese Painting: Inheritance and Disconnection・Imitation and Creation @ 栃木県立美術館

令040314  『楽園の美女たち Paradise Garden』出版記念展 @ かわうそ画廊

令040312/13  アートフェア東京2022 @ 東京国際フォーラム

令040309  中村恭子・郡司ペギオ幸夫 「立ち尽くす立ち尽くす前縁・立ち尽くされた境界」展 @ art space kimura ASK?

令040308  MET Live | Jules Massenet: Cendrillon/Cinderella (abridged English version) @ 東劇

令040308  Collaboration '98 山本容子&和田誠展 「2人のシネマ」 @ ギャルリー東京ユマニテ

令040308  南谷富貴 展 @ アートスペース羅針盤

令040307  ボストン美術館所蔵「The Heroes 刀剣×浮世絵 ― 武者たちの物語」 @ 森アーツセンターギャラリー

令040303  FACE展2022 @ SOMPO美術館

令040303  琉球王国の文化 手わざ Tewaza: Recreating Ryukyuan Handicraft Culture (沖縄県立博物館・美術館 琉球王国文化遺産集積・再興事業巡回展) @ 東京国立博物館平成館1F

令040303  特別展「ポンペイ」 @ 東京国立博物館平成館2F

令040302  ダミアン・ハースト 桜 Damien Hirst: Cherry Blossoms @ 国立新美術館

令040302  令和3年度第45回東京五美術大学連合卒業・修了制作展 @ 国立新美術館

令040301  シラノ Cyrano @ TOHO シネマズ日本橋

令040301  ミロ展 日本を夢みて Joan Miro and Japan @ Bunkamura ザ・ミュージアム

令040228  山城えりか『クラウドガール』原画展 @ Span Art Gallery

令040228  Teruhisa Kitahara Music Toy Collection: "Radio Days" @ 京橋エドグラン B1 タウンミュージアム

令040228  坂口 健 作陶展 @ 日本橋高島屋美術画廊

令040225  S氏コレクションによる加藤清美追悼展 @ ギャルリー東京ユマニテ

令040224  大内さよ展 @ 十一月画廊

令040224  Power of "A・R・T" 展 @ Artglorieux

令040224  早川剛 展 @ Galerie Paris

令040223  番留京子展 Vendome Kyoko Exhibition @ 藍画廊

令040223  奥野正人展 ~『静謐紫翠』モノクロームの世界~ @ Oギャラリー UP・S
(「おんな<森羅紫翠>II」を \34,500 で購入)

令040223  彦坂ゆね ボールペン画展 いのちを祀る @ 枝香庵 Flat

令040222  「岡本太郎と夜―透明な渾沌」(常設展) | 第25回岡本太郎現代藝術賞展 @ 川崎市岡本太郎美術館

令040221  MET Live | Matthew Aucoin: Eurydice @ 東劇

令040217  水戸部七絵 Mitobe Nanae: I am not an Object @ 東京オペラシティ アートギャラリー

令040217  ミケル・バルセロ展 Miquel Barcelo @ 東京オペラシティ アートギャラリー

令040217  Drawings 坂本睦美・佐藤明日香・勢藤明紗子・堀川すなお @ ex-chamber museum (アーツ千代田3331, 205号室)

令040217  オルタナティブ! 小池一子展 ― アートとデザインのやわらかな運動 Alternative! Kazuko Koike Exhibition: Soft-Power Movement of Art & Design (佐賀町エキジビット・スペースの展覧会記録など) @ アーツ千代田3331 メインギャラリー+佐賀町アーカイブ(B1F)

令040215  ポーラミュージアムアネックス展2022 ―主題・素材を超えて― Beyond the subject/material (松田壮統 (まさのり) ・杉山夏実・稗田直人) @ ポーラミュージアムアネックス

令040215  Musical 笑う男 ー永遠の愛ー The Man Who Laughs: The Eternal Love @ 帝国劇場

令040210  星野美智子展 @ Gallery Goto

令040209  山部泰司展 @ Gallery Q

令040209  シノバズクロニクルV 「版」の藝術 @ 不忍画廊

令040209  TransForm ―変容シテユクカタチ― 古賀勇人・林茂樹・藤田朋一 @ 日本橋高島屋美術画廊X

令040209  石川直樹 Streets Are Mine @ ギャラリー エークワッド

令040208  東恩納裕一、滝戸ドリタ/世界の涯ての庭と室内。 At World's End, Garden and Interior ― Higashionnna Yuichi, Takido Dorita @ AL(恵比寿南三丁目)

令040208  ( )第14回恵比寿映像祭 スペクタクル後 After the Spectacle @ TOP Museum

令040203  ライラブアート16 視覚トリップ展 ウォーホル、パイク、ボイス 15人のドローイングを中心に @ ワタリウム美術館

令040203  Paraillusion|ヨフ  (ヨフ: 大原崇嘉、古澤龍、柳川智之が2015年に結成したグループ) @ art space kimura ASK?

令040203  かなざわのわ フォトプロジェクト「金沢写真部」写真展2022 「●●に届けたい金沢」 @ 72Gallery

令040203  安井寿磨子展 YASUI Sumaco @ ギャルリー東京ユマニテ

令040203  大塚 亨 彫刻展 "memory recollection" @ アートスペース羅針盤

令040203  精緻な銅版画の世界 (岡上淑子、加藤清美、坂東壮一ほか) @ ギャルリー東京ユマニテ bis

令040202  柳宗悦没後60年記念展 民藝の100年 100 Years of Mingei: The Folk Crafts Movement @ 東京国立近代美術館

令040201  MET Live | Terence Blanchard: Fire Shut Up in My Bones @ 東劇

令040201  星 美加 展 ―風の記憶― @ 佐藤美術館

令040201  ユネスコ無形文化遺産 特別展 「体感! 日本の伝統藝能 ―歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界―」 @ 東京国立博物館 表慶館

令040131 フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊 The French Dispatch of the Liberty, Kansas Evening Sun @ TOHO シネマズシャンテ

令040127  矢萩喜從郎 新しく世界に関与する方法 Kijuro Yahagi: New Ways of Meeting the World @ 神奈川県立近代美術館 葉山

令040127  フィリア ― 今 道子 philia ― KON Michiko @ 神奈川県立近代美術館 鎌倉別館

令040125  MET Live | Modest Mussorgsky: Boris Godunov @ 東劇

令040125  武田双雲展 飛翔 @ Artglorieux Ginza

令040122  絵画のゆくえ2022 Face 受賞作家展(庄司朝美、魏 嘉、古橋 香、松崎森平、奥田文子、大槻和浩、齋藤詩織、松浦清晴、小俣花名、鈴木玲美、高見基秀) @ SOMPO 美術館

令040120  クリスチャン・マークレー [翻訳する] Christian Marclay: Translating @ 東京都現代美術館 1F

令040120  ユージーン・スタジオ 新しい海 EUGENE STUDIO: After the rainbow (寒川裕人 Eugene Kangawa, 1989年米国生れ) @ 東京都現代美術館 B2F

令040120  Viva Video! 久保田成子 The Art and Life of Shigeko Kubota @ 東京都現代美術館 3F

令040119 大坂秩加|つぎはぎのうろこ Chika Osaka “Patched Scales” @ Gallery MoMo Ryogoku

令040119  (Group Exhibition) The Beginning 2022 (清水智裕ほか) @ Katsumi Yamato/無一物

令040119  羅針盤セレクション 5人展 Vol. 1 (竹馬紀美子、寺田朋代ほか) @ アートスペース羅針盤

令040118  Into the Woods イントゥ・ザ・ウッズ @ 日生劇場

令040115  LIFE LINE 画廊新春企画 38 Artists New Year Group Show 2022 - Part I @ Gallery Face to Face
(浅野井春奈 木彫「ネジ ー支えるー」を購入 ¥29,700)

令040115  吉澤舞子展 アトラスを開く @ Gallery Q

令040113  石川真衣 Dance Macabre @ AL(恵比寿南三丁目)
(リトグラフ "Crossing" を購入 ¥29,500)

令040113  金魚絵師 深堀隆介「金魚鉢、地球鉢」 Riusuke Fukahori: Your World, My World @ 上野の森美術館

令040112  生誕100年 斎藤真一展 ”瞽女と初期作品” @ 不忍画廊

令040112  ガラスに宿る生命力 郡和子ガラス展 @ 日本橋高島屋美術画廊

令040112  花信風 第10回 Artist Group ―風― 小品展 @ 日本橋高島屋美術画廊

令040112  加藤ゆわ展 たべしゃべり よそおい なまめく @ 日本橋高島屋美術画廊X

令040111  The Club Collective ―Echoes 子どもたちへ― @ 蔦谷書店銀座 The Club

令040111  Up_02(家田実香、竹内義博 ほか) @ 蔦谷書店銀座 Atrium

令040111  Artglorieux Selection Part II (Rupert Smith, Nick Walker, 大沢愛、YuDai ほか) @ Artglorieux

令040107  偶然と想像 @ Bunkamura ル・シネマ

令040106  生誕120年記念 篁牛人展 昭和水墨画壇の鬼才 @ 大倉集古館

令040106  Kikuchi Biennale IX 第9回菊池ビエンナーレ 現代陶藝の<今> @ 菊池寛実記念 智美術館

令031223  音楽劇 海王星 @ PARCO 劇場

令031222  緑の道/Green Routes @ nca|nichido contemporary art (CADAN 有楽町)

令031221  こまつ座第140回公演 雪やこんこん @ 紀伊國屋サザンシアター Takashimaya

令031221  松岡ミチヒロ展 <立体> @ 新宿高島屋10階美術画廊

令031221  清川あさみ個展 TOKYO MONSTER, reloaded @ 銀座蔦屋書店 Ginza Atrium


読 ん だ:

令040430  日本の問題は文系にある  なぜ日本からイノベーションが消えたのか     (産経新聞出版、令和4年刊)   山本 尚 著
(最後の侍が著したというべきか。今や世界は「破壊的イノベーションか死か」の段階。医薬では試行錯誤で物質を探す時代から、生体内の蛋白情報交換システムを制御して医薬を生もうという時代。偶然から必然へ。|『論語』の素読は、知の積み重ねで自ら意味を悟れるところに意義。|日本は根っからのエリートが良い仕事をするという社会でなく、能力なしでも時機を待てば責任ある地位に至る。若者は能力を磨く必要性を感じなくなろう。能力主義を生き抜いた海外エリートに太刀打ちできない。まして国の指導者には、世界を牽引した記憶を持った人材が必要。|ジョブズの Stay foolish は、論理に流されることを戒めている。|集中して考えることから非集中に移るとき、すばらしいアイディアが誕生する。集中のベータ波から、非集中のアルファ波やガンマ波にかわり、脳全体を使うようになる。これがボーッと考えることの秘密。|日本社会は「リスクフリー」を目指しすぎ、自己主張の強いひとには住みにくくなっている。最近はリスクに対する対応が主な業務のはずの、政治家や防衛省の官僚までリスクフリーに染まり、極めつけが厚生省のコロナ対応。)

令040429  日経テクノロジー展望2022 世界を変える100の技術      (日経BP 令和3年刊)    日経BP 編
(e-Fuel = 水を電気分解した水素と CO2 を触媒反応で合成した液体燃料! 人工光合成は、光→電気は単なる太陽電池を使うので、要は電気をつかった水素や炭水化物の合成であり、がっかり。癌スクリーニングは、血液・尿で癌の有無をふるいわける。AI音声サービスの CoeFont で将来、声優は失業かも。デジタルツイン AnotherMe. カーボンナノチューブトランジスターで構成した RFID タグは 1枚1円が視野に。匿名化技術関連の国際アンケート結果に驚く。日本人は個人データ提供を「とても不安に感じる」ひとが米国の15%に対して25%だと。つくづくリスクフリー第1の国民性がウザく感じられる。FCV 用の水素は純度が99.97%以上必要で高価な由。)

令040427  Watermark      (Penguin Books, 1997 | First published in 1992)    Joseph Brodsky 著
(ヴェネツィアへの愛を詠う散文詩。ネイティブでなくても、これだけの文学が書けるということだ。)

令040426  放送通訳の現場から― 難語はこうして突破する      (イカロス出版、令和3年刊)    袖川裕美 著
(向学心があり謙虚な著者には好感がもてるものの、レファレンスの辞書がやたら前世紀のもので、しかも英和中心というところ、がっくりくる。arguably の意味も取り違えている。これは「(文句なしに)間違いなく」という意味ではなく「主観的には確信しているが」という意味だよ。teething problem, dis(en)franchise, have the policy chops and political savvy, middle-out economics (trickle-down economics との対比で). 元副大統領の娘 Lis Cheney はあっぱれな女傑らしい。)

令040420  ことばの波止場      (中公文庫、令和2年刊、原著・平成7年刊)    和田 誠 著
(名著!|≪「ちょっと待てまずは確認右左」というふうな熟成されてない七五調というのはあまり感心できません。七五調に収まっていることで安心してるようなイージーさがあって、ことばが上すべりしてる。とりあえず七五調が標語のしきたり、というお役所的な気分も困りますね。≫)

令040418  アート:“藝術” が終わった後の “アート” Art in a New World       (朝日出版社、平成14年刊)    松井みどり 著
(現代アートをそれなりに見た今だから話についていけるという意味では、自分のバロメーターになる本。知らない作家の名もたくさん紹介されているので、作品画像を検索して学んでみたい。|本書があらわすアート史は、いささか若書きというか、まるでアート界ぜんたいが「あの思潮へ、この評価へ」とばかりにちょこまか右往左往しているように読める。ファッション史を書くとしても同じようなことにはなるのかもしれないが、アートはファッション以上に多様多面的かつ重層的で包容力に満ちたものであるはずだ。その意味では、議論のしかたの座標軸設定を誤っているのではないかと思える。その意味で心が不快にざわつく本でもある。)

令040413  美しすぎる少女の乳房はなぜ大理石でできていないのか      (幻冬舎文庫、平成27年刊)    会田 誠 著
(痛快の一書。会田さんはハチャメチャを演じてはいるけど、そしてそれはただ演じているだけではないわけだが、ハチャメチャだけのひとではなく、それどころか配慮と遠慮(shy の意と深謀の意の両方)の人であるわけだ。そして、無駄なところに頭を使わないゆえの頭のよさがある。)

令040411  チャイニーズ・タイプライター  漢字と技術の近代史    (中央公論新社、令和3年刊)    Thomas S. Mullaney 著、比護 遥 訳
(中国語ワープロ以前のさまざまな試み。電信コードブックにも工夫と進化があった。林語堂が試作した「明快」というタイプライターのメカニズムに驚いた。けっきょくワープロ前夜までの進化の行き着くところは、頻出熟語の漢字どうしを隣り合わせに並べて「連串字」方式に臨機応変に組み替えていく漢字活字盤だったようだ。これを今日の「予測変換」に通ずるものと観ずるところがさすが。)

令040409  謎解きの英文法 省略と倒置     (くろしお出版、平成25年刊)    久野 暲・高見健一 著
(pick up after という句動詞がおもしろい。散歩道の入り口の立て札に≪Leash and pick up after your pet≫. 文例に I don't have to pick up after my husband. He knows how to pick up after himself. And if I have to pick up a random sock or two. . . that's fine. |an unputdownable novel のような言い方はふつうだそうだ。それを引き写した「臨時語(nonce word)」にたとえば I had some unputoffable business to take care of.|there 構文の意味上の守護は、定名詞句か不定名詞句かによるのではなく、発話の時点で聞き手にとって「新情報」を表わすものでなければならない≫ だから A: "I'm afraid there's nothing to eat." ― B: "Well, there's the leftover apple pie from last night." とか I won't feel lonely anymore, because I know there's still you. )

令040407  謎解きの英文法 動詞     (くろしお出版、平成29年刊)    久野 暲・高見健一 著
(抽象論や思い込みに陥ることなく、英語という現象に素のまま向き合う姿勢がじつに好もしい。|John was shot by Mary deliberately. は Mary acted deliberately. しかし John got shot by Mary deliberately. は John acted deliberately. ← 納得!|教養のある標準語を話す人たちの38%が適格文と判断する構文パターンに「非標準」の烙印を押した『ウィズダム英和』に対して、≪母語話者たちの文法は、細部については一致していないことが珍しいことではありませんから、辞書の記述としては、もっと柔軟な態度が必要ではないかと思われます。≫|He stopped to smoke. の to smoke は stopped の目的語ではなく「タバコを吸うために」という副詞句。)

令040407  Word by Word: The Secret Life of Dictionaries      (Vintage Books, New York, 2017)    Kory Stamper 著
(本書のおかげで Merriam-Webster's Collegiate Dictionary, 11th Ed. の魅力にひたれている。nude の項と marriage の項は『英英辞典の底力』のコラムのネタにするつもり。)

令040403  そして、みんなバカになった     (河出新書、令和2年刊)    橋本 治 著
(全集を通読した作家は谷崎潤一郎と三島由紀夫。三島の『午後の曳航』の情景描写がひときわ美しいと。都はるみと森進一には義太夫の重量感。寺山修司が撮った写真に、お母さんに黒いシミーズを着せ娼婦のメーキャップをさせたものがあるのだと。さすが、ただものじゃない。|≪日本人って、西洋人の視点を媒介しないで自分たちで自己分析する能力がない。≫ ≪日本人は面倒なことを考えなければいけないときに、いつも商売をすることでかわしてきた。≫ ≪年とった自分に引きずられて死んじゃった川端康成と、年とった自分を笑える谷崎潤一郎の差って、すごく大きい≫ ≪何かを言えば誰かが抗議の声をあげるものだから、それを避けようとして、すごく慎重に迂回して言う風潮になった。民主主義が進むと逆になにも言えなくなる。これは民主主義の最大の弊害だと思いますよ。建設的な意見は出てこなくて否定的な意見ばかり出てくるという。≫ ≪子供に必要なのは雑然たる知識で、だから教科書じゃなくて副読本をいっぱい与えるべき≫)

令040331  英語教育の危機     (ちくま新書、平成30年刊)    鳥飼玖美子 著
(文科省の英語担当の役人の現実遊離ぶりは、大東亜戦争時の未熟なエリート参謀らを彷彿とさせる。まったく公開の議論なしに「英語の授業は英語で行うことを基本とする」と勝手な通達を出し現場を大混乱に陥れる。副題がやや売らんかなだが、それに引かれて買ったわけだから文句を言ってはいけない。パリ市街からセーヌ河に沿って郊外から河口へと猥雑な繁華は移動し、20世紀へと。印象派誕生から爛熟への時期の同時代風俗史。この時代の文学作品を読むのにも必要な背景知識だろう。著者は美術評論家ではなく文学者。)

令040331  日本刀     (岩波新書、昭和14年刊)    本間順治 著
(「取扱と保存」の章に、日本刀手入れの手順の実際と、日本刀をまもる心意気を学んだ。うちの父は手入れの仕方を多少誤っていたかもしれない。終章「武将と名刀」が読ませる。)

令040330  日本美術の底力  「縄文×弥生」で解き明かす    (NHK出版新書、令和2年刊)    山下裕二 著
(作者不明の六曲一双「日月山水図屏風」サントリー美術館あたりで見せていただいたことがあっただろうか。日本橋三越本店の佐藤玄々「天女 (まごころ) 像」も、改めて眺めよう。≪マニュアル通りにやるだけでは、縮小再生産にしかならない。新しい価値は、藝術的な素養を積んだ人の突飛な発想から生まれる。≫)

令040323  役者ほど素敵な商売はない     (新潮社、令和2年刊)    市村正親 著
(市村さんは愛情をもって振り返っているが、浅利慶太ってつくづく不愉快な奴だ。ぼくはぜったいダメ。この辺が人徳の分かれ目なんだろうな。まぁその浅利がこんないいことも言ったらしい:「役をきちんと生きることが出来れば、役の仮面が透けてその中から役者の顔が見える」|市村さん語録 ≪その台本に入っている激しい人生を、ゆっくりと自分の中に移動させていく。台本に書かれた文字を自分の言葉にしていくことが好きなんでしょうね。≫ ≪いい演技というのは、200パーセント稽古して、50パーセントで表現できればそれでいいのかも。≫)

令040321  誰も知らない印象派  娼婦の美術史   (左右社、平成22年刊)    山田登世子 著
(副題がやや売らんかなだが、それに引かれて買ったわけだから文句を言ってはいけない。パリ市街からセーヌ河に沿って郊外から河口へと猥雑な繁華は移動し、20世紀へと。印象派誕生から爛熟への時期の同時代風俗史。この時代の文学作品を読むのにも必要な背景知識だろう。著者は美術評論家ではなく文学者。)

令040318  商業美術家の逆襲  もうひとつの日本美術史    (NHK出版新書、令和3年刊)    山下裕二 著
(名著。大観も清輝も、省亭や吉田博の前にコテンパンだ。作品群を自分の目で判断し美術史に位置づけていく。という美術評論の基本を体現されている。|人物は全身を描くのが日本の伝統で、それを打破したのが歌麿の大首絵。|御舟は伝統的な線描を捨てて「塗る日本画」の端緒をひらいた。しかし人物画はヘタ。|明治後期の挿絵界の三巨頭、水野年方、富岡永洗、武内桂舟。|鰭崎英朋。伊藤彦造の「山姥と金時」。小林清親のポンチ絵。新版画運動の版元、渡邊庄三郎。山口はるみ、空山 基、田名網敬一、上村一夫、林 静一、玉井力三、藤戸竹喜。なかでも、つげ義春は原画が将来国宝になると章名に記す。≪20世紀後半の日本美術の中心にあるのは、間違いなくマンガです。≫|)

令040315  日航123便 墜落の波紋 そして法廷へ     (河出書房新社、令和元年刊)    青山透子 著
(前作を読んでいない読者には、本書の前半が一読しても意味をなさず、その意味では編集が不親切。冒頭数ページに問題の概要をまとめるべきだった。中ごろから、問題の概要まとめの箇所が散見する。|それにしても、本件あきらかに自衛隊+米軍のスキャンダル隠蔽だ。日本人という不器用なる民族は、フタをすることだけ上手なつもりなのか。黒幕の司令塔になったのは誰だろう。)

令040314  ビートルズ     (新潮新書、令和3年刊)    北中正和 著
(自己模倣をしなかったビートルズの全体像をしっかり聴き直すべしと契機をいただき感謝。ビートルズを軸に音楽史もエスニック史も編めるわけだ。R&Bは黒人のポピュラー音楽の総称で1949年から業界で使われた。「カントリー」はアイルランド人などヨーロッパ移民が持ち込んだ民謡が米南部で土着化し変化したものを基礎に、ポップからジャズまで取り入れながら商業化されたもので、Tennessee州 Nashville が流行発信地。)

令040313  漢文ノート  文学のありかを探る    (東京大学出版会、令和3年刊)    齋藤希史 (まれし)
(学識ある筆者の立ち位置は飄々。きもちのいい教養書。吉川幸次郎畢生の杜甫詩の注釈書もいつか読まねばと思うが、別途37名が分担執筆した講談社学術文庫全4冊も優れたものらしい。|以下私見:漢文にも、読みにくい『論語』の対極としていて、江戸期から明治日本の硬軟自在の漢作文あり。この訓読体が明治期の官用文語にもなったわけで、学校の言語教育で取り組むべき漢文は先ずそれだ。どうしても孔子・孟子を語りたければ、中国哲学のひとこまとして世界史教材のコラムでとりあげるべし。)

令040307  バーナード先生の英語上達の常識  ゆっくり、ふつうが結局速い!     (プレイス|河出書房新社、平成16年刊)    Christopher Bardard 著
(語・語群の入れ替えで英語指導するのが上策だが、日本では英語をメタ言語で解説する(give モノ to ヒト、の類)指導法が主流。それが教師にとっては簡単・安全だから。著者は上策を「タテ方向に教える」、下策を「ヨコ方向に教える」と呼ぶ。≪英語が上達するのは、自分独自の戦略を多く考え出すことのできる人。≫|run a dog over (= on purpose) ; run over a dog (= by accident) という177頁の記述は決めつけすぎ。この著者は決めつけをやりすぎる傾向あり。)

令040306  侯孝賢 (ホウ・シャオシェン) の映画講義      (みすず書房、令和3年刊)    侯孝賢 講、卓伯棠 編、秋山珠子 訳
(原著はもとより、訳文づくりも入念な名著。全6講のうち第1講の半生記が右から左へ抜けてしまったが、完読後に再読したら侯孝賢ワールドの縮図そのものだった。若い頃はワイルドでもあり、読書遍歴も半端なく、人間観察に長け それを楽しんで「人」の自在の姿を撮り続け、行き当たりばったりのところもあり、だからこその名監督。≪ドラマ性は現実の時間の道理を逸脱するところから生まれる。≫≪ノートをとることで頭の活動が阻害されることもある。もしただ聞くことに集中すれば、内容の一部は覚えきれないにせよ、別の発想が生まれるはず。≫)

令040303  句動詞の底力  「空間発想」でわかる広がる英語の世界    (プレイス、平成25年刊)    Christopher Barnard 著
(句動詞を扱う著作を応援したいのはヤマヤマだが、この著者は副詞の away や back の意味を細分羅列してみせる等、学習者のタメにならないアプローチが目立ちすぎ。もっと大枠を語ってほしいのだが、すぐに各論入りするのがいけない。いちばんの欠点は、強勢のありかに全然触れていないこと。前置詞と副詞の区別は、強勢のありかを判断する上で非常に意味があるのだが、この著者はむしろネイティブの感覚では前置詞と副詞に区別はないと言い募る。|数々の句動詞用例は学習教材としては大いに役立たせてもらった。)

令040227  シン・ニホン  AI×データ時代における日本の再生と人材育成     (News Picks Publishing 令和2年刊)    安宅和人 著
(人材育成体制が衝撃的なまでに年々劣化している日本に対して、米国・中国をはじめまともな国々は人材の意味と育成の方法を心得ている。安宅さんは優しくも「日本の妄想力があればAI×データ時代の実りの時期である第2・第3フェーズには間に合う余地あり」と説き、教育体制の大改革のための具体的な国家財政案まで提示してくれる。数兆円単位だが、社会保障費の巨額に比べれば誤差の範囲だし、とにかくシン・ニホンを推進するために不可欠の方策だ。政界は有無を言わさずこれに従えと言いたい。前世代踏襲の鈍重なるB級日本ではけっして劣化スパイラルを抜け出せない。そうなるとA級人材は国境を越えて羽ばたくしかない。)

令040225  海外取引の成否は「契約」で9割決まる      (幻冬舎・経営者新書、平成30年刊)    菊地正登 著
(素人向けの良書。日本語の「目標」は必ずしも達成を要しないが、英語の target は達成すべき義務。訴訟抑止の手法に「裁判は被告の国で行う」と定めるやりかたも。海外取引のトラブルの多くは解約時に起きるので、解約についての取り決めは必須。契約書本体が標準約款で変えられないというのであれば、別途に覚書を結んで契約文言への但し書きを入れる手がある。)

令040225  人新世の「資本論」      (集英社新書、令和2年刊)    斎藤幸平 著
(空振り本の極み。気候変動に対処できる新たな経済の処方箋が示されるのかと最後まで期待して読んだが、けっきょく青臭い「市民」「草の根」の頑張りに期待しましょうというご宣託だ。いかなる批判を受けようと著者は「わたしはこれまで著作の形で残らなかったマルクスの脱成長の本意を紹介したまでですよ。あくまでマルクスの思想の解説をしているだけです」とズルい逃げ口上を用意しているであろう。
著者のいう市民営の「コミュニズム」に至るには資本主義を廃絶せねばならぬであろうが、その地獄のプロセスについては論じるのを避ける。著者の口説から推測するかぎり、資本主義廃絶の仕方はけっきょく「市民」の代表を名乗る勢力が画策する経済活動規制でしかない。
原子力は「民主的に管理するのは無理」だから廃絶。投資目的の土地売買を禁止し、地価を劇的に下げる。著者は言う ≪マーケティング、広告、パッケージングなどによって人々の欲望を不必要に喚起することは禁止される。コンサルタントや投資銀行も不要である。≫≪必要のないものを作るのをやめれば≫ いいと著者は言うが、それを判断するのは市場ではなく「市民」だよ、ということらしい。この「市民」崇拝こそ、おぞましいファシズムではないか。市民の代表を名乗った者が勝つわけだ。
脱成長は分業を否定して職人の喜びを復活させ経済を地域レベルに矮小化することで達成し、エネルギーは太陽光や風力でエネルギーをまかないましょうと著者は言うが、そのロジックに基づけば各地域に太陽光パネルや風車を手作りする作業場を作らねばならない。各県に電気自動車工場を作りましょうということになる。著者には政治史と経済史を中学生に戻って勉強してもらいたい。)


令040219  日本人が知らない英文法      (プレイス、平成17年刊)    Christopher Barnard 著
(表題はこけおどしにあらず。「能動態」「受動態」「中間態 The door opened. のごとし」をもつ「中間動詞」の概念。動詞の6分類(物質、行動、心理、発言、関係、存在)によれば、I can taste the wine.は心理動詞で、I am tasting the wine.は行動動詞。speak/talk は行動動詞で、say/tell は発言動詞。さいしょは煩瑣な印象だったが、分類する意味に納得。describe は行動動詞なので ×He described that it was a beautiful site.は不可で、He described how beautiful the site was.は可。文法学習とは語彙の入れ替え作業がスムーズにできるようになることだ、という指摘は我が意を得たり。)

令040216  民王 シベリアの陰謀      (角川書店、令和3年刊)    池井戸 潤 著
(いくらドタバタもの民王ブランドとはいえ、あまりに軽い世紀の駄作。コロナ禍の現実との出入りもあり、TVドラマ化も困難か。)

令040213 世界の知性シリーズ  近代の終わり   秩序なき世界の現実     (PHP新書、令和3年刊)    大野和基 インタビュー・編
(バイデン大統領は人の意見を聞くフリをするのはうまいが、もともとの考えを改めることは少ないと。米国の福音派プロテスタントは、おのれと聖書だけで成り立つがゆえに信仰のありかたが人の数だけある。これが極論の土壌にもなり、忌み嫌う対象が一致したときに結束する。|米国と中国が世界秩序を形成するというより、地域大国の活発な行動に両国が対応する場面のほうが多くなる。|優秀な人々:ECBのイザベル・シュナーベル理事、IMFチーフエコノミストのギータ・ゴピナート氏、NY市立大ジョシュ・メイソン助教授、西イングランド大ダニエラ・ガボール助教授。)

令040211  倫敦巴里      (話の特集、昭和52年刊)    和田 誠 著
(『雪国』冒頭のパロディーは語り口を写すさすがの取り組み。川上宗薫と宇能鴻一郎って、こんなにちがってたんだ。谷川俊太郎の巻はマザーグース訳詩仕立て。)

令040211  銀座界隈ドキドキの日々      (文藝春秋、平成5年刊)    和田 誠 著
(一時代の文化を総なめにした人だ。いちばん笑わせてもらったのが、ライト・パブリシティの同僚・柳町恒彦氏が毎日昼飯に鰻喰いで名をウナギ町と呼ばれるようになったあおりで、アシスタントに「きも吸」の仇名がついたという段。それにしても、和田誠さんがライトを退社するとき引き留められるでも別れを惜しまれるでもなく送別会もなく、というのがぼくの商社退社に似ている。)

令040211  A面B面 作詞・レコード・日本人      (文藝春秋、昭和60年刊)    阿久 悠・和田 誠 著
(阿久悠さんの語りが本の後半、仙人めいてくる。「また逢う日まで」の「ふたりでドアを小林亜星さんが作詞と思っていた。すごい遊び方だ。最初にはやったのはキャバレーだった由。森昌子は「先生」でなく「せんせい」。なるほど。研ナオコがタレントとしては三枚目なのに歌は二枚目でうまくやっているというのも首肯。なかなかないことだって。|作詞にかける時間は、取り掛かるまで発酵させる時間をおくと、こういうタイトルで書こうと思いはじめてから1曲2時間以内。うちワンコーラスが1時間20分でのこりで2番3番を書いちゃう。|「乳母車」がせつない。「この僕は手ぶらでも あの人はカタカタと乳母車おしている 3年の年月がそこにある」「風が出てきたからとあの人は 乳母車おしながら去って行く」「ぼんやりと見送ったこの僕は オーバーのえりを立てて歩きだす」)

令040203  ハムネット Hamnet      (新潮社 Crest Books 令和3年刊)    Maggie O’Farrell 著、小竹由美子 訳
(上京して、夫が老王の幽霊に扮するハムレットの上演を見つめる妻アグネスの心の内を描いた最後のページは感動的。後ろ3分の1の第2部は原語で読みたくなるが、退屈な第1部は時間飛躍台の意味があるとはいえもっと何とかならなかったものか。|両親が死んだ子は orphan だが兄弟を失った子をあらわす言葉は何なのと問うハムネットの双子の妹ジュディスのつぶやきに、ふと言語の本質を感じた。)

令040131  The Remains of the Day      (Faber and Faber, London 1989)    Kazuo Ishiguro 著
(購入して32年、ようやくにして声が立ち上がった。自ら設けた矩を誇りに生きた執事 Stevens は、矩そのものに操られる存在と化した。)

令040131  東京路地裏横丁      (CCCメディアハウス、平成27年刊)    山口昌弘 著
(なんと路地裏の飲み屋街というのは一般生活と一線を劃している点では特別であっても、飲み屋街どうしを比べると極めて没個性なり。ひとが酒食に個性を消す場所だからだ。)

令040130  荒木経惟 トーキョー・アルキ      (新潮社 とんぼの本、平成21年刊)    荒木経惟 著
(2009年。ほんの昨日だが、アラーキーは同じ東京でももう今は二度と会えないだろうと思える光景を切り取るみごとさ。≪考えなくても、写真には時代が出ちゃう≫ ≪写真家って、時代を撮るんじゃなくて、時代に撮らされてるんだよ≫。   そのセンスが渋谷を語れば ≪少女から女に行くあたりの娘が多いのが渋谷らしいな≫。モノクロで撮るのは ≪みんなが俺の写真をどんな色に染めるかが楽しみなんだよ≫。)

令040130  オフ・オフ・マザーグース      (筑摩書房、平成元年刊)    和田誠 訳
(名著。custard と mustard が「お菓子」と「からし」。pouring と snoring が「どしゃぶり」と「お眠り」。pie と eye が「あめだま」と「めだま」。絶妙な脚韻の発見が目白押しで、ことばへの純愛を感じる。軽妙なあとがきも、じつは日本語脚韻についての総覧になっている。パロディ・ぱくりを「いただき」とお呼びになるのも品がある。和田さんの本格的な脚韻和訳は昭和59年の「キス・ミー・ケイト」だった由。和田訳の Kiss Me, Kate が聴けたならなぁ。)

令040129  全体主義の誘惑 オーウェル評論選      (中央公論新社、令和3年刊)    George Orwell 著、照屋佳男 訳
(オーウェルはかくも欺瞞や媚びの悪に敏感で、沈着なひとであった。聖者の本質的な邪悪を認識し ≪聖者は無罪と判明するまでは有罪を宣告されていなければならない≫ と述べつつガンディーが虚栄を持たぬ人物であったことを高く評価し、≪彼が恐怖の念から言わずにおいたことはひとつもなかった≫というオーウェル。それに付言して「ガンディーが現代中国で活躍の場をもちうるか」と問う訳者もみごとな知識人だ。平和主義者がソ連・中国に大甘だとオーウェルは言う。欺瞞に満ちた人々は不滅なり。)

令040123  中世ヨーロッパ ファクトとフィクション      (平凡社、令和3年刊)    Winston Black 著、大貫俊夫 監訳
(人間としての常識を発揮せねばならぬということだ。われわれを覆う「中世=暗黒」のイメージが、ギボンのような教養人を含む近代の論者によってゆがめられたものであることに愕然とする。「地球が丸い」ことは古代から常識であり、「球体である地球の周りを同じく球体である諸天体が周回している」と考えられていた;だからガリレオは「それでも地球は丸い」と言ったわけではないわけだ。|西ゴート族のローマ略奪はわずか6日間、ヴァンダル族のは15日間、実際にはさしたる打撃ではなかったらしい。ゲルマン諸族による文明崩壊現象ではなかったわけだ。)

令040121  連句遊戯      (白水社、平成22年刊)    笹公人・和田誠 著
(おふたりの連句の展開がしばしば同種のテーマで停滞して、連句の醍醐味である縦横無尽の広がりの境地でないのが惜しまれる。和田さんの句「手作りの酒猿がふるまう」がいい。和田誠さんの寺山修司さんとのコラボ「初恋地獄篇」聴いてみたい。『銀座界隈ドキドキの日』『倫敦巴里』や、和田さんと阿久悠さんの対談本『A面B面 作詞・レコード・日本人』も。和田さんは渥美清さんと一緒に映画館で「男はつらいよ」を観たんだって。そのあとどんな酒席になったのかな。)

令040118  英単語学習の科学      (研究社、平成31年刊)    中田達也 著
(著者はとっぽい。いろいろ海外の単語記憶実験結果が羅列してあるが、具体的な実験方法や対象者レベルがわからないから、一般論として語れるか大いに疑問。語呂合わせによる記憶便法まで推奨しているのには興ざめ。何度も「スペイン語でノコギリを意味する単語」として出てくる serrote はポルトガル語なり。著者の不まじめさがこういうところに出る。Just The Word というコロケーション検索サイトを知ったことだけが収穫だった。紹介されている Vocabulary Size Test をやってみたら "at least 18,500 word families" とのこと。20,000 word families 以上が native speaker だという。)

令040116  連句日和      (自由国民社、平成27年刊)    笹公人・矢吹申彦・俵万智・和田誠 著
(これまで読んだ連句の本では、前の句の情緒にひっかけてつけていく流儀だったが、ここではしばしば、単に前の句のなかの単語への駄洒落でつけていて、いかがかと思うが、それも楽しいといえば楽しい。)

令040113  本音化するヨーロッパ  裏切られた統合の理想    (幻冬舎新書、平成30年刊)    三好範英 著
(著者はぼくと同年齢で、東大教養から読売へ1982年入社。バンコク・プノンペンへ3年、ベルリンへ3度で計10年。そういう記者人生ができればよかったね。ヨーロッパは自ら繰り出した「きれいごと」で自縄自縛に陥った挙句、自分自身ですらなくなった。いちど理念によって立つと、その理念を克服するのもまた理念の力を借りねばならない。挙句に正と反の動きだけが生まれ、なかなか合とならない。今やアイデンティティは「敬意」「寛容」「多様性」などの、ゆるい自己規定にすぎない。ベルリンの小学校で、家庭でドイツ語を話さない生徒の割合が43%、ハンブルク市で22%とは!|「イスラム教は最終的な判断をする機構がない」という AfD のフェスト氏の指摘は重要。穏健派が異端視され、共通基盤は7世紀のコーランしかない。)

令040110  カステーラのような明るい夜      (七月堂、令和3年刊)    尾形亀之助 著、西尾勝彦 編
(1900~42の詩人の詩集『色ガラスの街』(1925)、『雨になる朝』(1929)、『障子のある家』(1930)、雑誌掲載作などから。≪かわいそうな囚人が逃げた/一直線に逃げた // 雨のなかの細路のかたわら/草むらに一本だけ桔梗が咲いている≫)

令040110  チャイナ・ウォーズ  中国は世界に復讐する    (イースト・プレス、平成24年刊)    Peter Navarro 著、小坂恵理 訳
(原書は2008年刊、破局まっしぐらに見えた胡錦涛時代なり。14年後のいまになってみると、習近平のICT監視社会実現で社会がずいぶん落ち着いたように思えるから恐ろしい。問題の本質が潜在化し深化しているだけなのに。|月には核融合燃料となるヘリウム3が大量に存在し、核融合発電技術が確立すればヘリウム3をスペースシャトルで地球に運んで人類のエネルギーをまかなえる規模という。)

令040110  自分のミライの見つけ方  いつか働くきみに伝えたい『やりたいこと探し』より大切なこと    (旬報社、令和3年刊)   児古美孝一郎 著
(2019年の日本財団による18歳意識調査の結果が衝撃的。「自分で国や社会を変えられると思う」に日本は18.3%、インドネシア83.4%、ベトナム47.6%、中国65.6%だ。中高生で「なりたい職業」に登場するのは医師や教師、美容師など専門職ばかりと。なるほどだ。これをまっすぐ実現できる子がぞろぞろ医師になる。他の職業に興味を失い視野を狭めることにも。基本の自問はむしろ「自分がこの社会で役立ちたいこと、役立てることって何だろう」。至言。|若いうちは、いつか何かに出会えるように自分の中に小さな「資源」を蓄えること。「資源」とは「自分の中の小さな感動」だと。|知識のない人は、自分が「何を知らないのか」を知ることさえできない。知識の一定のストックがなければ、人は考えることも判断することも表現することもできない。的確な検索ワードさえ思いつかない。)

令040108  菜根譚コンプリート 全文完全対照版  本質を捉える「一文超訳」+現代語訳・書き下し文・原文     (誠文堂新光社、令和2年刊)   洪自誠 著、野中根太郎 訳注
(明代末期の作だけあって、中国語文語が現代漢語の感覚で読める。内容も穏当かつ革新的であり、漢文学習教材としてうってつけ。ただ、現代中国語の「得」や「的」がときたま現れ、訓読派は戸惑おう。冷静に思い返せるもおう一人の自分を持て、といった近代感覚にあふれる。単に「枯れ」ちゃダメ、酒と茶を絶やさず潤いをもって暮らせ、と現実的。|家庭内で子供を注意するときは、声を荒げて激しく怒るのではなく、他のことにかこつけて諫める(”借他事隠諷之”)ないし時間をおいて別の機会に注意を促す(”俟来日再警之”)。|人に恩恵を与えるときは最初から、恩返しできないような人に与えよ(”施恩,務施不報之人”)。|多くの自分の能力を誇るよりも、能力はないが自分の本性は失わない、というほうがよい(”多能不若無能之全真”)。|欲望や好き嫌いがなかったら、ひとの心は成り立たない。ただし、自分が物を使うのであって、物に自分が使われるのではない(”無情欲嗜好,不成心体。只以我転物,不以物役我”)。)

令040103  人生も作品! 藝術家たちのプライベート美術館      (講談社 The New Fifties, 平成31年刊)   講談社 編
(これは行きたいと思ったのが、京都府立堂本印象美術案、萬鉄五郎記念美術館(花巻)、香月泰男美術館(長門。おもちゃオブジェのコーナーを見たい)、田中一村記念美術館。木版創作版画家・斎藤清、千住博の弟子・石井鈴。|棟方志功『板極道』、熊谷守一『へたも絵のうち』。)

令040103  ふだん使いの言語学  「ことばの基礎力」を鍛えるヒント     (新潮選書、令和3年刊)   川添 愛 著
(「おかしな文」の腑分け法総覧。「置き換え」「入れ替えテスト」「かきまぜ」などで、似たような語の並びが異なる構造をもつことをあぶり出す。「は」が旧情報符号であるのみならず、文のなかで影響範囲を広げる役割を果たすことにも言及する。)

令040101  喝! 日本人      (実業之日本社、平成14年刊)   松永安左ヱ門 著
(電力の鬼が語る『世渡り太閤記』(昭33)、『かみなり談義』(昭34)、『出たとこ勝負』(昭37)の合本。55歳定年の時代に、65歳定年制・週休2日制の導入の仕方を提言し、「仕事とカネのほどよい分配」を説いた。水力全盛の時代に火力発電を説き、大福帳の時代に複式簿記を導入すした。|「大物」と称される仁には「大胆とみせかけるために、いかに小心翼々とびくついていることか」「芝居が第二の天性となると、もうそれ以外のことは何一つとしてまともに出来なくなる。いつかは化けの皮がはがれる。道化者の転落がある」。|バカのいきみ出す知恵は知れたもんであるが、知恵の生み出すバカは底知れずおそろしい。秀吉の大成も、その持ち場持ち場でバカになりきり、その役になりきり、しゃにむに働けるだけ働いた結果による。|正面切ってまともにぶつかって行くばかりが藝でもない。矛盾も撞着も知らぬ顔してほったらかしておいて、別の方からじわじわと取り崩して行くのがもっとも賢明な行き方。|ムダや抜かりが無いことにとらわれすぎ、しなくてもよい多くの手落ちや失策をしでかす。器量もおのずから狭くなり、活動も小手先細工。ソツのなさを狙って、かえってつまらぬソツばかりとなる。|世間の多くは勇気が足りない。みな自分の利害を考えすぎる。自分の損得を考えるから勇気が起こらない。)

令040101  五・七・五交遊録      (白水社、平成23年刊)   和田 誠 著
(豊かな人生とは和田誠さんのような人生を言うのだろう。100頁に掲載の土谷耕一さんの回文句「家の外門松まどか屠蘇の酔」を賀状ネタにさせてもらった。「北風や世界は青き壜の底」(和田誠→ささめやゆき)。「大いなる運河目指せし冬鴎」(和田誠→宇野亞喜良)。「夏の夜や何を夢みる影法師」(和田誠→小田島雄志)。|色川武大『怪しい来客簿』『離婚』『百』『狂人日記』。永六輔『一流の三流』『わらいえて』。岸田今日子『あの季 (とき) この季』『あかり合わせがはじまる』。高橋睦郎作詞『四人目の王さま』『17のこもりうた』。丸谷才一『歌仙』『浅酌歌仙』『とくとく歌仙』『すばる歌仙』『歌仙の愉しみ』。)

令031229  Homo Deus: A Brief History of Tomorrow      (Vintage, 2018)   Yuval Noah Harari 著
(サイボーグ人間について理系の目で書いた本かなと思ったのは偏見で、人類史を遠大な視野で展望する一書。Homo Deus and Dataism と改題したいくらい、データの自在な流通がもたらす人間とデータの主客顛倒(=Dataism)について語る。|さて、そうなると中国は、データ流動の自由を阻害する体制ゆえに大きなしっぺ返しを受けるはずだが! 中国の体制は、データ流動に対して共産党(=人力)が勝ちを収めると信じて行動しているからね。)

令031221  失われた20世紀 <下>     (NTT出版、平成23年刊)   Tony Judt 著、河野真太郎ほか 訳
Reappraisals: Reflections on the forgotten twentieth century  第11章「1940年、フランスの敗北」は発見。なぜドイツがあっさり勝てたのか。準備のウラをかかれた。第14章、ベルギーのなりたち。第16章、イスラエルが建国時には東欧出身ユダヤ人から成り、アラブ人の存在を意識にのぼらせない人々であったのが、六日間戦争を契機に中東ユダヤ人が集結しアラブ人への強硬・非友好に転換した。第19章、キューバ危機におけるケネディとフルシチョフを活写。フルシチョフはその衝動的な動きに疑義を呈する者が身近にいなかったがゆえの脆弱さがあった。第20章、キッシンジャーは大国主義でカンボジアをメチャクチャにしたな。結びの章、国家はいまやグローバルな市場の力に対抗するための、習慣と伝統と利害欲望に関知する(ように見える)最大の緩衝力。だから経済における敗者たちこそが国家をもっとも必要とする。)


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