ご存知のように玉川温泉は命の狭間で戦う全国にお住まいの方々がお越しになる。余命宣告受けていて俺の施術をもう一度受ける!という目標をもたれ予定では死んでいるはずなのに自らの力で俺との再会を果たされた。
しかし、玉川温泉はこういう方だけではない。数日後に亡くなられそうなお客様もいらっしゃる。
本22ページにこのように書いた。
施術室にご主人らしい付き添いの方がどこが悪いとも言わず
「気持ちよくしてあげてください」
とおっしゃった。そっと奥様に視線を向けたらその様子を察した。
抗がん剤の副作用で足がむくみ腫れまったく歩けない。
一生懸命、この手でその足を擦った。少しでも楽になってもらいたい一心だ。
さりげない会話をしたけれど明らかに命が残り少なくなっているとわかる方に何を言うことができるだろう。
意識がもうろうとしているお客様に向かって
「きっとまた来てくださいね!病気を治すために来るのではないですよ。僕に会うために来てくださいね。約束できます?」
と話した。
翌々日にも来て下さり、そのときはほとんど意識はない。でも、声を出して言った。
「奥さん!!!僕との約束、必ず守ってよ!守らないと約束にならないよ!待ってるからね!」
そのときだけ、ゆっくり目を開け言葉が出なくても「うん うん うん」と何回もうなずいた。そのとき、私は大変なミスをおかしてしまった。
涙が出て止まらない
この涙を見せてしまったら二度と会えないことを認めることになる。
施術が終って奥様はご主人に向かってにっこり微笑んだ。
ご主人は「おう、どうした!久しぶりに笑ったな!」
と奥様に語りかけ俺にありがとうと言ってくださった。