“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

“飲食店の勉強代行業”大久保一彦の勉強録

2018.11.08
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テーマ: 日本料理(373)
紀茂登 @東京都新宿区東五軒町 ~ ピンの食材と繊細な包丁と素材を引き立てる火入れ
 “飲食店の勉強代行業”の大久保一彦は飯田橋界隈に出没しております。
処女作の『誰も言わなかった「飲食店成功」の秘密』でお世話になりました、フォレスト出版のそばを抜け、東五軒町へ。
この通りは目白・雑司ヶ谷で過ごした約十年よく通った道なので懐かしいです。
その懐かしい道を左に曲がるとしばらくして目的の店があります。


マンションとコインパーキングに挟まれた一筆の土地、それが本日目的の店でございます。



 最近、東京はバブルということで、地方の有名店が続々と都心に移転しています。
一方、私は、フェルナン・ポワンの「​ 料理人よ故郷へ帰れ ​」やアリス・ウオータースの「レストランは生産者に近づくべき」という理念に共感して、飲食店のお手伝いをしていることもあり、その理念とは符合しないかような店にあまり興味がないというのが本音です。

 ただ、『紀茂登』のお席を案内いただいた時に、私の塾生とかぶる部分があり、勉強しておく必要がるとぴんときて、二つ返事で訪問した次第です。

 水出しのウーロンが出て、・・



本日の主役の蟹を確認します。





お料理は零余子をのせた間人のセコ蟹のご飯から・・


優しいあたりのセコ蟹ですが、じわじわと濃厚さが増していきます。


干していないカラスミの天ぷらと銀杏
生らしい香りとねっとりした食感で美味しい。




蟹と木耳の椀
鶯菜と耳朶より大きな木耳、焼き目を入れた柚子
 まず、吸い地ですが昆布のクリア味わいがきます。
間人の濃厚な蟹の味わいを食して、その後吸い地の味わいがかわっいきます。
鶯菜は割っていわませんがかぶららしいふわっとしたテクスチャにしたてあります。
青菜の色も綺麗ですし、すばらしいお吸い物です。


淡路の天然の河豚


下には”かわはぎ”の肝が添えられています。


お酒は新潟の大洋酒造 “鄙願(ひがん)”です。


続いては、白甘鯛鯛(しらかわ)です。
 今や、大きくなるとキロ4万円を超えることが当たり前になった八幡浜の釣の甘鯛です。
ここ数年で取引額が倍以上になっていまして、『紀茂登』の大将も「蟹よりも高い」とおっしゃっています。
そう言えば、塾生の『う越貞』の大将も八幡浜のしらかわを使っていて、「関西の高級店が買い負けして、東に流れている」と嘆いていましたね。


さて、皮目を軽く炙った白甘鯛は見事な大根のけんをのせて提供しています。


とても脂のりしておていておいしいです。
そして、あしらいがこれまたおいしいです。
キューブの白。いい脇役。

おお、大将が器を拭いているぅ。
どこぞよの料理長と違いますな。


伊勢海老
軽く表面を霜ふりしている、食感の伊勢海老
お出汁のジュレにて


さて、・・




焼き蟹
出しに酢橘を絞って(これがうまい)
島根の藻塩


甲羅で炊いた蟹身とミソ
芳ばしい香りとクリーミーな味わいでこれはうまい


最後に、鰹のお出汁で伸ばしたお酒を注いで…


鼈と蓮根の焼き物
素晴らし焼きの鼈とホクホクの蓮根
大将曰く、ミソは越前、身は間人



水と昆布のだけで炊いた蕪
とても甘いです。
そして、軽くあたる程よい食感がすばらしいです。


〆はシャトーブリアンとご飯です。


シャトーブリアン
最初にしっかり焼いて、上段左でじっくり焼く
ちなみに、炉の上段左は55度~60度、右側は90度くらい

低温調理で、“絶妙な火入れ”と言われるロジカルな(既知の)おいしさを追求していないのがいいですね。
顧客が既知を身につける段階では、「何度で何分です」という既知を獲得する、マズローの欲求の言うところの”学習の欲求”を満たすアプローチがもてはやされます。
しかし、さらなる既知の獲得で、おいしいという感覚は悟りの段階に達して、文化的なアプローチになる。
これは、ヨーロッパのレストランを食べ歩いて私が感じたこと。
うむ。このシャトーブリアンを食べて、もはや、「何度で何分です」という低温調理からの昇華したヨーロッパのレストランと同じ段階が始まっているのでしょう。


さらば、モダニスト・クイジーヌ!
って感じかな。



シャトーブリアンに塩漬けの生胡椒


羽釜のご飯


塩昆布、白菜の漬物


鼈と河豚のお出汁の雑炊


牛乳と生クリームのパンナコッタ。
ローストしたアーモンドがのせてあります。


栗きんとん


塩金平糖


いやあ、素晴らしかったです。
トビの材料を使って、薬味まで美味しい繊細な包丁や火入れのメリハリが素晴らしかったです。
それは凄い。
また、勉強に行きたいですね。

 ちなみに、料金は日本酒を控えめに飲んで今の『くろぎ』と同じくらいです。
『くろぎ』や『紀茂登』に行ってみて、2019年の消費税率増税後のポストバブルの自分立ち位置が再確認できました。
なぜ、フェルナン・ポワンが「​ 料理人よ故郷へ帰れ! ​」と言ったのか。
グローバル化の後にあるものは、地方に呼び寄せるレストランしかない。
しかも、都市部でないなら、ピンの食材である必要はない。
 そして、それを実現するメソッドは十分手の内にあるな、
その表現でお客様に足を運んでいただける、そう確信した夜でした。
これは、面白くなりそうです。


「​ 料理人よ故郷へ帰れ! ​」か・・


紀茂登
東京都新宿区東五軒町5-5
電話 非公開

本日のおすすめ


京の名工!」幻のカニ!間人がに(たいざがに)(冷凍)(調理前1200g、調理後800g)の「蟹すきセット」(「極み出汁」、「こしひかり(丹波産)」、「京野菜」がついています)


【カニが食べたいけど面倒という方必見】セコガニ玉手箱(剥き身) Lサイズ(190〜200g)×5個間人、津居山、浅茂川、浜坂港など水揚げ








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