風光る 脳腫瘍闘病記

首吊り



「叩き割ったろか・・」

ここは6階、飛び降りるには十分な高さだと思った。窓ガラス越しに外の景色を眺める。(あっ、あのビルとかいいんじゃない?確実に死ねそう・・)そのビルから飛び降りる自分の姿を想像した。次に食堂の方にも行ってみた。そこには非常用の扉があったがそこもまた、鍵がかけられていた。

(はぁ~・・どこもかしこも鍵ばっか・・飛び降りは無理かぁ・・)

私は部屋に帰っていろんな事を考えた。

「薬?でも、何百錠飲まなきゃなんないの?薬をためる時間なんてあたしには無い。今すぐ死にたい」私はなんとなく息を止めてみた。

「すぅ~~~~~」←とりあえず息は一杯すう。

30秒後、「うぅっ、苦しい」

45秒後、さらに苦しくなり「駄目だ・・死にそうぅ、でも死にたいんだからガマ・・ン・・」「ぷはぁ~~~~~~~~~~・・・・・」

「だぁ~~~~~~~~ハア、ハア、苦しすぎるっ・・・止めよ、窒息死は向いてない」「たくっ、何で楽に死ねないんだ!ムカつく・・」

「ご飯も水もとらない!これで衰弱死!これはどうだ?」

「無理やりチューブで流動食だな、こりゃ・・絶対死ねない」

トイレ行くのも看護士さんと一緒、コンビニ行くのも一緒、図書館行くのも一緒、どこに行くにも金魚のフンみたいについてくる。こんな状態が1ヶ月間も続くと気が狂ってくる。

それでもさぼりぎみだったリハビリにもチョクチョク行くようになった。でも私の鬱の波は激しかった。調子のいい時はとことんいい。でも悪い時は自殺の門番が扉を開けて待っている。

「また来たのか?これで何回目?いい加減死ねよ」と言われてる気がしてならない。「分かった、今度こそ死ぬから・・・」私は部屋の周りを見回した。ふとある物が目に入った。スポーツバックの取り外しの出来るベルトだった。私はそのベルトを持ってトイレに入った。

トイレの手すりにベルトを通して輪をつくる。「・・・・・・・」死んだら楽になれる。死ぬしか残された道はない。この先いい事はない。「お姉さんを殺したのは私だ・・」自分で自分の後押しをした。

ベルトで作った輪の中に首を通した。除々に体重をかけていった。

「お姉さんに出来て私に出来ない訳がない・・」私はありったけの体重をかけた。


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