Jazzateers / Up To My Eyes '86「Blood Is Sweeter Than Honey」
AZTEC CAMERAやORANGE JUICEを見出した今や伝説的とさえ言えるスコットランドのポストカード・レコードでアルバム2枚分もの録音を残していたジャザティアーズ。Edwyn Collinsのプロデュースでも録音を残しましたが、不遇にもそれらが当時陽の目を見ることはありませんでした。うまく歯車が嚙み合っていればネオアコを代表するグループになっていたかも知れませんね。そんな彼らが1986年に残していながら長らく未発表だったアルバム「Blood Is Sweeter Than Honey」に収録されているのが本曲。(初出CDは「I Shot The President」で後に同名タイトルで再発された。)ちょっと地味で暗めだけどメロディはよく出来ていて特にサビのラインは魅力的。少し神経質っぽい感じのヴォーカルはネオアコ的で、それに加えて明るく快活で爽やかなコーラスが実に良いアクセントになっている。流石名門ポストカード出身だけのことはあるなと納得のいく出来ですね。ネオアコを代表するグループにはなれなかったけど、もっと評価されるべき素晴らしい曲だなと感じます。
Cleaners From Venus / A MERCURY GIRL '87 「Going To England」
1980年代に活躍したイギリスのギターポップ・ユニット、クリーナーズ・フロム・ヴィーナスの1987年のアルバム「Going To England」収録曲。元々は1986年のアルバム「LIVING WITH VICTORIA GREY」に収録されていたものだけれど、いまいちチープなアレンジだったからか翌年に作り直した感じですね。グループ名が「金星の掃除屋」で曲名が「水星の少女」ってことで何やら宇宙的ロマンを感じさせますが曲はシンプルで落ち着いた淡々としたバラード。派手さはないけどソロでも活躍したMartin Newellによるメロディは魅力的で秀逸です。そして何と言っても特筆すべきは間奏で聴けるピアノの綺麗な音色。甘く悲しげな美しい旋律を高らかに奏でます。ここの部分は少しウォール・オブ・サウンド的雰囲気があるので、本格的音壁として作り替えたらどうなるだろう?と思わず夢想してしまいますね。上品で知的で控えめな雰囲気ってことでセーラーマーキュリーのテーマソングとして推奨します。
Funny Little Dreamというデュオでも活躍しているインドネシアのジャカルタの歌手Ganesha Mahendra Nurdinのバンドが2000年に発表したアルバム「DECADE」収録曲。「YOU TUBE」での再生数もかなり少なく、個人的に一体どういう経緯でこんなマイナー曲を知ったのか全く覚えがないんだけど、なかなかの良曲です。ジャカルタといえば以前 ジャカルタの煌めきギターポップ MONTE CARLO / I KNEW IT 「SUMMER IN VIENA」
も取り上げてますが、密かにネオアコ/ギターポップ系の良質な発信地になっているのかも。「YOU TUBE」の説明文に「The Field Mice」にインスパイアされたとの記述があることから、曲名のサラという女性名もSarah Recordsから拝借したものなのかも知れませんね。そんな訳で曲も 体温低い FIELD MICE / IF YOU NEED SOMEONE 「Where'd You Learn to Kiss That Way?」
辺りを彷彿させるような繊細で思慮深さを感じさせる良質なギターポップ。悲しげで内省的な雰囲気のバラードだけどメロディラインは美しくヴォーカルも甘みがあって良い。バンド名にサイレントと入ってるけど全体に感じさせる出しゃばらず謙虚な雰囲気に好感が持てるのです。
ORANGE JUICE / CONSOLATION PRIZE '82 「YOU CAN'T HIDE YOUR LOVE FOREVER」
史上初のネオアコ・アルバムであるORANGE JUICEの「YOU CAN'T HIDE YOUR LOVE FOREVER」は、当ブログでも既に何曲も取り上げている名盤中の名盤ですが、「FALLING AND LAUGHING」、「TENDER OBJECT」、「DYING DAY」といった傑作以外にも彼ららしい良曲はまだまだ有ります。残念賞というタイトルの本曲も彼らの持つ弱弱しさや痛みを感じさせる内容。明るめで和める雰囲気の曲調で上記3曲より痛みは大部和らいでいるけど本質は同じかと。サウンド的にはエンディングで突如アップテンポに攻めに転じる姿勢が素晴らしい。ここで「I'LL NEVER BE MAN ENOUGH FOR YOU」と繰り返しながら曲は終わるんだけど、何とも物悲しい彼ららしい表現だなと思いますね。
1980年代後半に自主製作っぽい2枚のシングルを残して消えてしまったマンチェスター出身のインディー・ギターポップ。マニアックなコンピ「The Sound Of Leamington Spa VOL.1」収録曲。シスター・レインがバンド名でバート・レイノルズが曲名なのでややこしい。バート・レイノルズは1960年代中期から1980年代まで活躍したアメリカの大物俳優だけど、何故曲のタイトルになっているのかは全く不明。そして曲も全くバート・レイノルズを彷彿させることのない如何にもイギリスのインディーなギターポップという感じなのですが。しっとりとした繊細な音色のギターで始まるウオーキング・テンポのこの曲はサビの込み上げるような甘く切ないメロディが特徴的。ヴォーカルの声質も若者っぽく瑞々しいのでサビが実に魅力的です。あまり似てないけど魅力度という点ではフリッパーズギター時代の小山田圭吾くんに近いかも。インストっぽいパートではスキャットなども入りネオアコ風に盛り上がります。残念ながら「YOU TUBE」などに音源はないようです。
JOHNNY SAYS YEAH! / I WON'T LET YOU GO '87
1986年と87年にインディーのDay I Ate The World Recordsから2枚のシングルを残しているギターポップバンドのシングル曲。恐らくはバンド名を略したと思われるレコード番号(JSY)やチープなイラストなどから相当マイナーな存在だったと思われます。所謂自主製作ものですかねえ。曲はカントリー調のリズムが和めるギターポップ。メロディは少し哀し気だけど薄っすらと陽の光が射している温かい感じはあります。インディーということで、かなり手作り感というか素朴な雰囲気がありますが、そこがいい味になってる気がします。もう少し甘酸っぱさやヒリヒリ感、メロディのトキメキ感があれば良かったかな。
80年代中期にアルバム2枚を残したイギリスのネオアコ系グループの85年のシングル「A Stranger On Home Ground」のB面曲。「Fulham」というのはフルハム三浦のフルハムではなく「フラム」と読み、どうやらロンドンの同地区にある建造物か何かを指した歌のようです。曲はゆったりとした情緒的なバラード。バンド名からは彼らの忠誠的な人柄が伝わってきそうですが、そんな彼らの印象を彷彿させるかのような実直で誠実なイメージの曲。全体を通して甘いメロディラインは出来が良く、心が洗われる感じがありますね。一番の聴き所は間奏で聴けるピアノの軽やかで切ない響き。これ、もう少しウォール・オブ・サウンド風に仕上げてくれてたらどうだったろう?と夢想してしまいます。
FARMER'S BOYS / THE WAY YOU MADE ME CRY '83 「Get Out and Walk」
81年前半に2枚のアルバムを残したギターポップ系バンドの1STアルバム「Get Out and Walk」収録曲。バンド名は農家の少年達という意味だろうか、イギリスのNorwichという市の出身のようなので田舎の素朴な雰囲気を出したかったのかも。曲はやはり泥臭くいまいち垢抜けないギターポップ。ちょっと痛みを感じさせるヴォーカルだけどメロディは明るめで牧歌的な感じ。テンポは速くて良いのだけれど、全体としていまいちキャッチーさに欠けるかな。聴き所は間奏のギターソロで初期ビートルズを彷彿させる感じが良い。 ACT NATURALLY
辺りを狙いましたかねー。同時期のアズテックカメラやフレンズアゲインのような洗練された煌きは感じさせないけれど古き良き時代のマージービートっぽくて思わずほっこりしてしまいます。
ACID HOUSE KINGS / 7 DAYS 「Sing Along With Acid House Kings」'05
1992年から活躍しているスウエーデンのポップグループの4枚目のアルバム収録曲。彼らには既に紹介済みのハリーラブな 「KEEP YOUR LOVE」
という名曲も有ります。曲は女性がリードヴォーカルを取るミディアムテンポの甘めのラブソング。聴き所はイントロやサビで聴けるウーウーコーラス。情感を込めて盛り上がる一瞬の甘いときめきはなかなかのもの。メロディの出来も良く、全体として感じられる青春時代の甘酸っぱい感覚は流石のセンス。
ACID HOUSE KINGS / KEEP YOUR LOVE '05 「DO WHAT YOU WANNA DO」収録
スウェーデン出身のネオアコ系4人組バンドの2005年製「恋はあせらず」トラック。同じくスウェーデンの最近のバンドLOVENINJASの曲のカバー。曲調は全く異なるけどタンバリンから始まりギターとベースでハリーラブを奏でる形は2003年の「JET / ARE YOU GONNA BE MY GIRL」を彷彿させます。女性とのツイン・ヴォーカルの肩の力の抜け具合がスウェーデン流なんだろうか、全体として淡白な印象を受け、それが良い持ち味になっているようですね。エコー感のあるギターのカッティングも効果的で心地よい浮遊感を出すことに成功しています。この浮遊感はハリーラブものとしては新境地という感じがしますね。サビ含めたメロディもなかなか良質です。
PHIL WILSON / EVEN NOW '87 12"「Waiting for a Change」収録
ロンドンのJune Bridesというバンドでヴォーカルをやっていたフィル・ウイルソンがバンド解散後、ソロで発表した12インチシングル「Waiting for a Change」収録曲。1987年にCreation Recordsから出ています。全体としてエコーで靄がかかったかのような幻想的な雰囲気の曲。情緒的で切なげなメロディを甘く優しく歌い上げます。メロディの出来も良いけれど、コーラスやギターなどを幾重にも重ねたアレンジに妙味がありますね。ドラムもエコーを効かせてちょっとした音壁風味。
MASHMALLOW KISSES / EVERYONE ELSE IS AHEAD, FAR AHEAD '04 「I Wonder Why My Favorite Boy Leaves Me an Ep」
香港出身のネオアコ系男女デュオのCD「I Wonder Why My Favorite Boy Leaves Me an Ep」収録曲。男女共に淡く優しいウイスパリング・スタイルで歌う楽曲で、いわゆる渋谷系って感じ?ハモったり、交互に歌ったりと淡白な中にも情報量の詰まった聴き応えのあるヴォーカルワーク。特に女性の可愛らしい声質がイイね。メロディは少し物悲しげだけど品の良さと質の高さを感じさせます。どちらかというと質素で派手さの無いサウンドですが、途中に入るオルガン風の間奏のフレーズが心に沁みて魅力的。
次のイギリス首相に最も近い男と言われる現イギリス労働党党首キア・スターマー氏(@Keir_Starmer)が最も好きな音楽アルバムは、なんとネオアコ最重要アルバムでもある「ORANGE JUICE (@EdwynCollins) / YOU CAN'T HIDE YOUR LOVE FOREVER」だというのだから驚きです。( 元記事
)
調べてみると1962年生まれで現在61歳のキア・スターマー氏は大学時代にザ・スミスに熱中し、髪型はモリッシーの影響だそうな。スミスはメジャーなのでまだ分かるけど、ナイーブさ、弱弱しさ、青春時代のほろ苦さや甘酸っぱさを売りとしたオレンジジュースのファーストアルバムと大物政治家というのはギャップが大きすぎますよね。当ブログでも政治家ネタとしては 「若き麻生首相の本棚の中身(漫画好きの麻生太郎 元総理大臣)」
というのを記事にしましたけど話の「濃密度」が違い過ぎ。何より、「YOU CAN'T HIDE YOUR LOVE FOREVER」はネオアコの最重要アルバムとして当ブログの象徴とも言えますし、個人的に生涯のベスト5に入るほど大好きなアルバムなので好感度爆上がりです(政治的な話は別として)。それは国内の多くのネオアコ好きな方々も同様なようで、だからこそ反響が大きかったのかなと。
因みにこの事を知ったのは、私がフォローしている元英国タイムズ紙の主任ロック評論家Pete Paphides氏(以前、 The Bluebells / I'm Falling (2021 Wall Of Sound Version)
を彼の番組でオンエアして頂いた)の ツイート
にエドウィン・コリンズ氏が返信していたので、あれ?と気づいた次第です。エドウィンによると特にキア氏は「Falling and Laughing」がお気に入りのようですね。政治的な話は分からないけれど、彼の今後の活躍によりネオアコ界隈が脚光を浴び盛り上がるといいなと感じました。がんばれ!キア・スターマー!仲間だぜ!
アズテックカメラの元ネタは? AZTEC CAMERA / HIGH LAND, HARD RAIN
ネオアコの大傑作アルバム「ORANGE JUICE / YOU CAN'T HIDE YOUR LOVE FOREVER」と並び評価の非常に高いアズテックカメラの1STアルバムはネオアコ開始の大号令でもあった訳で、それだけに如何にしてネオアコは始まったのか?という疑問を紐解く意味でも実に重要なアルバム。両アルバム収録のネオアコ良曲の元ネタは、フリッパーズギター元ネタのページを作っている私としては長年気になっていました。先日表題アルバムの日本盤にロディフレイムによる各曲の解説が掲載されているのを読んだので、ここではそれらの元ネタをご紹介。
「OBLIVIOUS」:アレンジはちょっとラテンっぽい。ギターソロは「LOVE / ALONE AGAIN OR」(1970年)のトランペットソロにインスパイアされている、とのこと。 「LOVE / ALONE AGAIN OR」
(トランペットソロは1分48秒から2分12秒まで)聴いてみるとスペインのフラメンコのようなちょっと哀愁を帯びた暗めのメロディ。正直なところギターソロ部分との類似点は感じられなかったんだけど、曲全体で聴けるギターの感じは、なるほどこの曲辺りの影響が強かったのかなという印象。ただ、曲全体がラテンっぽいか?というとそんなことはないんじゃないのかなあ。
「PILLAT TO POST」:このアコースティック・ギターはスタックスの曲の一部かな、とのこと。スタックスはアメリカ南部のソウルのレーベルだけど、あまりにも漠然とした表現なので特定は難しそう。分かる方います?特に間奏のギターの元ネタは知りたいですね。こちらも曲全体がソウルっぽいかというと全くそんな感じはない。
「RELEASE」:ウェス・モンゴメリーにインスパイアされた曲、とのこと。
ある程度元ネタに言及されているのは上記のみ。どうも本人の言葉からは、パーフリのように明確な元ネタは分からなかった感じがします。個人的には「WALK OUT TO WINTER」や「PILLAT TO POST」の疾走感と瑞々しさ等の具体的な元ネタがあったら知りたかったのだけど、ちょっとしたヒントを大きく膨らませ、あくまでロディフレイム本人のオリジナリティに寄与するところが大きかったのかなという印象が残りました。何か元ネタに気づかれた方いましたら是非教えて下さい。
以下、工事中です。
ランキングや解説、偏差値詳細などはおいおい付け加えていきます。
AZTEC CAMERA / THE BOY WONDERS ライブバージョンも良い。 AZTEC CAMERA / LOST OUTSIDE THE TUNNEL 「HIGH LAND,HARD RAIN」収録