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2011.07.01
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カテゴリ: 経済状況について
 「過去10年間において初めの三年間と最後の三年間の平均を比べて、一株当たり利益が最低三分の一以上伸びていること」

 これは、かのベンジャミン・グレアムが、『賢明なる投資家』において企業を買う際の定量的な基準の一つとして提示したものです。
 ベンジャミン・グレアムといえば、バリュー投資の考え方を生み出した偉大な理論家・投資家です。初めてこの文章を読んだときは、

「割安株投資といっても、ある程度の成長性は必要なのだな」、

「日本企業は成長性が低いので、上記の基準を満たす企業はさほど多くないだろうな」

等と思ったものです。

 ですが、よくよく考えれば、上記の理解は明らかに間違っていることに気づきました。インフレの影響というものを考慮せず、名目上の利益の成長しか見ていなかったからです。

■ ■

 以下は、過去30年間の日本と米国のインフレ率の推移を示したグラフです。

日米インフレ率比較.png


世界経済のネタ帳 』)

 上記のグラフのバックデータから計算すると、1981年から2010年の30年間における米国の平均インフレ率は、3.16%/年です。
 ちなみに日本の場合、同期間の平均インフレ率は0.81%/年です。近年のデフレの影響などもあり、かなり低い水準となっているようです。
(ここでいう平均は単純平均の数字)

 ここでちょっと考えてみたいと思います。

 毎年3.16%のペースでインフレが進行する場合、価格100の製品は、10年後いくらになるのでしょうか?

 答えは、136.49です。

 つまり、米国企業が米国で販売している製品やサービスの価格は、10年間でおよそ36.5%上昇するのが当たり前だったのです。
 実質の成長率というものは、名目上の成長率からインフレ率を差し引くことで計算できますので、年3.16%、10年で36.5%以上利益を伸ばしていない米国企業は、実質的にはマイナス成長であるということを意味します。

 このようなインフレの影響を考慮すると、グレアムが提示した基準は、以下のように解釈をすることも出来そうです。



 「過去10年間において初めの三年間と最後の三年間の平均を比べて、一株当たり利益が最低三分の一以上伸びていること。」

 「なぜならば、 米国では10年間で物価が3割上昇する。名目利益が三分の一以上伸びていない企業は、実質ではマイナス成長となっている ことを意味するからだ。」

■ ■

 日本は世界でもトップクラスに物価の安定している国です。よって、日本人は"インフレ"や"物価"という概念に弱くなっているのかもしれません。またその事が、デフレゆえに名目リターンが小さく見える日本株への悲観に繋がっているとすれば・・・・






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最終更新日  2011.07.01 23:27:29
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