青き天体研究所

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第十八話  彼女の正体



彼女達が一番驚いた事はクロガネのクルーの殆どが民間からパイロットになった事で、リュウセイもその一人である事が信じきれないようであった。

そして彼女達はと言うと・・・

「アヤさん、マイちゃん!早く来てください!!」

「分かった。少し待っててくれ。」

(何故海にいるのかしら・・・・。)

クスハ達に連れられて海水浴に来ていた。

ちなみにクスハ達は3日連続海水浴をしているのだが、全く飽きていないらしい。

しかも一日中浜辺にいるにもかかわらず、日焼けの後が全く無いのである。

補足しておくとブリットは初日の経験からあまり浜辺には出てきていない・・・。

「行くぜ!風の魔装機神乗りの実力見せてやるぜ!!」

そう言ってリュウセイに向かってビーチボールを投げつける。

「食らうかよ!マイ、頼む!!」

「分かった。・・・そこだ!!」

マイは相手のコートの死角目掛けてスマッシュする。

もちろん取る事が出来ずにリュウセイチームに点が入る。

「やったな、マイ♪」

「リュウセイのパスのおかげだよ・・・♪」

「クッソ~、絶対に勝ってやる!行くぜ、フィス!!」

「分かりました。絶対に勝ちましょう!」

そう言って再びビーチバレーが始まった。

その様子を見ていたアヤは少し苦笑する。

「どうしたんですか?アヤさん・・・。」

「アヤで結構よ。え~と確か・・・。」

「ブルックリン=ラックフィールドです。ブリットて呼んで下さい。」

「分かったわ。ところで何で水着に着替えないの?」

「いや、それは・・・・。」

ブリットは少し冷や汗をかき明後日の方向へ向く。

(言えるわけない。初日クスハに見とれていて危うく死ぬ一歩手前までいっていたからなんて・・・!)

そう、ブリットはあの時(十六話参照)倒れていたのは熱中症で倒れていたのだ。

発見が遅れた為、ここ1・2日ほど生死をさまよっていたそうだ。

「き、気にしないでください。・・・・嬉しいんですか?」

「え、ええ・・・。マイのあんな表情見たの久しぶりだったから・・・・。」

「・・・そうでしたか。」

セインから聞いたのだが彼女達は3年ほど前から監禁されていたそうだ。

その間ずっと緊張して来た為、あんな楽しそうな表情を見た事が嬉しいのだろう。

「ブリット君~!こっちに来て一緒にビーチバレーやろうよ~♪」

「え!で、でも・・・・・・・。」

「私の事は気にしないで行って上げなさい。」

「・・・分かりました。では!!」

そう言ってブリットはクスハ達の下へと向かった。

「本当に平和ね・・・。あの子達がパーソナルトルーパーのパイロットだなんて嘘みたい。」

アヤは雲一つ無い空を見上げて少し微笑んだ。







「全く・・・。いい加減にしてしてくれないか?」

「うるせぇ!!貴様に受けた借り、しっかり返さないといけないんでな!!」

「だからと言ってな・・・。数の横暴は無いだろう。」

セインの周りには50人ほどの若者で一杯になっていた。

どうやらイリスに絡まった男が借りを返すべくセインに何度も喧嘩を吹っかけているようだ。

この集団にさすがのセインも驚く事しか出来なかった。

「あのなぁ、俺一人如きに武器持った集団50人なんて卑怯だと思わないのか?」

「関係ねぇな!俺らはテメェのすかした面に一発殴れれば気が済むんだよ!!それなのにテメェは・・・。」

今まで攻撃しかけてきたのだが全部自滅しており、セインが悪いというわけではない。

しかし男にとってそれは許せない事であるのだ。

「まぁいい、かかって・・・・。 !!!」

突然セインがひざまずき胸を抑える。

(クソ・・・最近間隔が短くなってきてるぞ。)

段々肩で呼吸し始め体中に汗が出始める。その様子を見て50人全員が動揺し始める。

どうやら集まった若者全員気の良い者達だらけのようで苦しがっているセインを心配し始める。

「大丈夫か!?今医者を・・・。」

「医者は・・・いい。コートのポケットに・・・入っている・・・クスリを・・・。」

その言葉を聞き喧嘩を吹っかけた男はすぐにそのクスリを出してセインに渡す。

「済まない・・・・。」

「良いって事よ。困ったときはお互い様だ!それに・・・そんな事でくたばっちまっても困るしな。」

「そうか・・・そうだな。だいぶ楽になった。こんなもので済まないがこれで好きなだけ遊んでくれ。」

そう言ってセインはその男に灰色の袋を渡し去っていった。

「何だ?・・・これは金貨じゃねえか!?こんなものいらねぇのに・・・。」

男達はそう呟くとセインの向かった方角を見た。








「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・。」

何処かの家の影に寄りかかり汗をぬぐった。どうやら薬の方が効いているらしく少し目が虚ろになっている。

「大丈夫、セインさん?」

「イリス・・・か。大丈夫だ。少し・・・休めば・・・・。」

イリスは持っていた紙袋を置くとセインの下に向かっていく。

イリスは腰に何か持っていたのだが、それを引っ込めてセインに水を飲ます。

「早くこれを・・・。」

「済まないな。大丈夫だから・・・・。」

セインは何とか立とうとしたのだが立つ途中で気を失ったらしく倒れてしまった。



数十分後、気が付いたセインは起き上がり辺りを見回した。

どうやらここは現在泊まっているホテルらしく、誰かが看病していた形跡が残っていた。

「何とか収まったようだな。それにしてもいったい誰が・・・。」

「気が付きましたか?」

「あなたは・・・・・・?」

「私はここの管理をしている者です。貴方は気絶した後、数人の若者達によってここに運ばれたんです。」

どうやらその話を聞く限りではあの時の若者達が渡した金塊を返そうと追いかけた所、倒れていたセインを見つけ運んだようである。

そばには渡したはずの袋がそこに置いてあった。

「運んだ若者達が置いていったんです。『自分達は当然の事をしたまでだ。だからこれは貰えない。』って。」

「そうか・・・全く馬鹿な奴らだな。これがあれば遊んでられるのに・・・。」

そう言いながら中身を確認する。どうやら中身には手を付けていない様である。

「本当に今時の若者なのにしっかりしていらっしゃいますね。」

「ああ、そうだな。だいぶ良くなったから出掛けて来る。済まなかったな。」

「いえいえ、行ってらっしゃいませ。」

ホテルの従業員はセインを見送り何処かへ行ってしまった。

「大丈夫でしたか?セイン・・・。」

「イリスか・・・。何処行っていたんだ?」

外にはイリスが待っていた。どうやら目が覚めるまで外で待っていたようだ。

「え、え~と・・・。お医者さんを呼びに・・・。」

「そうか・・・なら良いんだ。」

そう言ってセインはイリスを連れて何処かへ行ってしまった。

その頃ホテルでは従業員が一人、路地裏で殺されているのが発見されたのだかこれはまた別の話。








「何処行くんですか?」

「少し付き合ってくれないか?暇なんでな・・・。」

「え!で、でも・・・・。」

「何、ただスレイヤーの部品を買いに行くだけだ。安心しろ。」

そう言うとセインは無理やりイリスの手を引っ張って市場へと向かった。



市場では機械の部品の他、食材、装飾品等たくさんの物が置いてあった。

「ホントに色々な物が置いてありますね。 私には眩しい位

「? 取り合えず俺は欲しい部品を買いに行って来るがイリスはどうするんだ?」

「私?私は目的が無いので終わるまでブラブラしてますよ。」

そう言った途端、人ごみに紛れて何処かに行ってしまった。

セインはそれを確認すると近くにある店に入って欲しい部品を買っていた。

何件か回ってようやく全ての部品を買い終わった後、イリスを探していると・・・

「何見てるんだ?」

「この装飾品を見ているんです・・・・。」

イリスの目線の先には真ん中に青い石の入った十字架のネックレスがあった。

「綺麗・・・。」

「・・・・・。済まないがそれをくれないか?」

「3500円だよ。」

店の店主がそう言うとセインはその金をぴったり渡し、そのネックレスを買った。

セインはその買ったネックレスをイリスの首にかけた。

「これは・・・。」

「欲しそうだったからな。なんとなくだよ。」

「・・・・ありがとう。 こんなもの貰ったの初めてだ。

聞こえないくらい小さな声で呟くと首にあるネックレスをまじまじと見る。

セインはその様子を苦笑しながら見ている。

「じゃあ帰ろうか・・・。みんな待っている。」

セインはそう言い残してクロガネの方に向かっていった。

「私は・・・・如何すればいい。こんな相手・・・初めてだ。」

イリスはただ呆然と立っていた。








その後セインとイリスはレーツェル達と合流し、クロガネでレーツェルの作った夕食を食べた。

フィスはセインがビーチに来なかった事を怒り、セインはタジタジになっていた。。

その間もイリスは何かを考えていた。



深夜、セインの部屋に再びフードを被った人物が立っていた。

その人物はナイフを取り出し寝ているセインに向かって振り下ろす。だが―――

「・・・・ダメ!出来ない・・・。」

そう言ってあと数センチのところで振り下ろすのを止める。

「何で出来ない。・・・こいつを殺さなければ私は―――」

「当たり前だろ、殺せないのは。」

後ろから声が聞こえたのでその人物は振り返った。

「まさか『サイレントアサシン』が殺しに来るとはな。思っても見なかったよ・・・だが!」
・・・・・・・
そこには寝ているはずのセインが立っていた。そんな事お構い無しに話し続ける。
サイレントアサシン
「色々と不自然だったんだよ。もう辞めにしたらどうだ静かなる暗殺者、いやイリス!!」

そう言われその人物はフ-ドを外した。その顔はまさしくイリスの顔であった。

「何故分かった。私が暗殺者だと。」

「最初に会った時から怪しいと思ってたよ。あの若者たちに対して殺気が出てたからな。確証したのはその夜、お前俺を殺そうとしたときだ。」

「・・・・・・。」

「何で連合の依頼を受けたのかは知らないが金の為ならすぐに止めといた方が良い。分か・・・」

「金の為じゃない!!私がこの依頼を受けたのは!!」

「! どう言う事だ?」

セインが尋ねるとイリスは目をつぶり話始める。

「私がこの依頼を受けた理由、それは私の過去を知る為だ・・・。」

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