青き天体研究所

青き天体研究所

第二十話  焦り・・・。



その休みのお陰でクロガネクルーはヤル気を出し何かと準備をしていた。

そんな中、パイロット達はレーツェル、セインの命令によってミーティングルームにいた。

「今からアルブレードとエルシュナイデのパイロットを発表する。」

「何でまたアルブレードとエルシュナイデのパイロットを?そのままで良いじゃねぇか。」

「色々と事情があるんだ、リュウセイ。では言うがアルブレードにはイリス。エルシュナイデにはライに乗ってもらう。」

2人とも「了解。」と頷くがリュウセイだけは異議を唱えていた。

「何で俺じゃないんだ!?セイン、答えろ!!」

「お前にはビルトラプターがあるだろう。それに今のところ変更は無い。」

「だがビルトラプターは・・・・。」

「これ以上の質問は受け付けない。では解散!!」

セインはいきなり話を打ち切り解散を宣言した。

「ま、待て!話はまだ・・・!!」

「リュウセイ、見苦しいぞ!決定には従え。」

「ライ・・・。分かったよ。」

ライは義手である左手でリュウセイをなだめる。

左手の事は休みの間に事情が聞いているためリュウセイはそれに従うしかなかった。

ライになだめて貰ったリュウセイは「ビルトラプターの調整がある」と言って格納庫に向かった。




格納庫にはセインが整備士に何かをお願いしていた。

整備士は渋い顔をしたのだが何かを引き受けていた様であった。

「セイン・・・。何頼んでいたんだ?」

「・・・・・・リュウセイか。野暮用でな。・・・・・・何か言いたそうだな。」

セインはリュウセイに顔色を見て尋ねる。

「何でアルブレードのパイロットにしなかったんだ?ビルトラプターがあることは分かってるんだが・・・。」

「今の状況を考えてそれが正しいと判断したからだ。ビルトラプターについてなんか不満があるのか?」

「特には無いんだが、たまに俺の思うとおりに動いてくれないんだ。何だか分からないけど・・・。」

その言葉を聞きセインは目を見開く。

「本当か?それは・・・。」

「? ああ、本当だが。」

セインの微妙な変化に気付いたのだが不思議そうな顔をしている。

(まさか機体の限界を超えているのか!?だとしたら・・・・)

「分かった。こちらの方で何とかしよう。」

「本当か!?ならよろしく頼むぜ♪」

そう言うと嬉しそうにリュウセイは何処かへ行ってしまった。

セインはやれやれと思いながらリュウセイを見送る。

「全く気楽なものだな。あいつは。」

「マサキ・・・。何時の間にいた?」

「お前がリュウセイと話し始めた位かな。クロとシロがサイバスターの整備したいって言うからよ。」

そう言ってマサキはサイバスターを見上げる。

サイバスターの中から整備に奮闘してるのかクロとシロの声が聞こえてくる。

「・・・・・・リュウセイとの話を聞いちまったんだかもしかしてアイツ。」

「マサキの思う通り、リュウセイはビルトラプターの機体の限界を超え始めている。あのままだといずれ・・・。」

「そこまで分かってんなら早く何とかしろよ!?機体を変えるとか・・・。」

「今現存する機体でリュウセイに合う機体がない!あと少ししたら来るんだが・・・。」

「どう言う事だ?それは・・・。」

マサキはセインの発言に疑問を覚え尋ねようと近づく。その時―――

クロガネは突然激しい衝撃が襲った。

再び衝撃が走り立っているのがやっとの状態になる。

「な、何なんだよ!これは!?」

『総員第2戦闘配備!繰り返す、総員第2戦闘配備!!各パイロットは出撃の準備を!』

「どうやら連合の攻撃が始まったようだな。」

「こうしちゃいられねぇ!シロ、クロ!発進させるぞ!!」

「「了解ニャ♪」」

「俺も行くか。仲間を殺す訳にはいかないからな!」

話を中断し彼らは戦場へと向かった。







「十分休み貰いましたし頑張りますか♪」

「エクセレン、油断するなよ。前見たくなるかもしれんからな。」

敵機はガーリオン10体、バレリオン10体程おり、それぞれコンビネーションよく攻撃していた。

何故かゲシュペンスト、量産型ヒュッケバインはいない事が少し気がかりである。

「ハァァァァ!斬艦刀・一文字斬り!!」

巨大化した参式斬艦刀を振り回し敵機を一刀両断していく。

「クスハ!頼んだぞ!!」

「分かったわ!!雷神よ、来たりて我の敵を討て!」

龍虎王の出したお札が電撃に変わり敵機に襲う。その電撃に当たった機体は次々と墜ちていく。

その様子を見ていたリュウセイは彼らに続こうとビルトラプターを加速させる。

だが・・・。

「クッ!何だ、言う事が・・・・・・」

「! リュウセイ!!クソ!!」

ビルトラプターは言う事を聞かずに敵機に突っ込んで行こうとする。

それに気付いたマサキはサイバスターを加速させ、リュウセイの元へと急いだ。

「クソ・・・何だってんだよ!?ちゃんと動け!!」

リュウセイは何とか修正しようと悪戦苦闘するもののビルトラプターは全く聞こうとはしなかった。

そして、ぶつかろうとした次の瞬間――。

サイバスターが敵機を撃墜しビルトラプターを受け止めた。

「ふぅ。危なかったな・・・」

「あ、ありがとう。助かったよ。」

リュウセイは冷や汗を流しながらマサキに礼を言った。

その後、何とか全機撃墜に成功し、クロガネに帰還した。









「セイン、どう言う事だ!危うく死ぬところだったぞ!」

「済まない。まさかこんな事になるとは・・・。」

リュウセイはセインの首元を掴み問い正す。

周りのパイロット達はリュウセイを何とかなだめようとする。

「こちらのミスだ。関節部にコーティングを施し動きやすくさせたのだが・・・」

「ミスの一言で済むと思っているのか!?」

「リュウセイ、落ち着け!セインを責めても仕方がないだろ!!」

ブリットは何とかリュウセイを押さえ付ける。

しかしリュウセイの力が強く、押さえ付けるのがやっとの状態である。

「分かってる、分かってるんだ!だがなぁ、納得いかねぇんだよ!!」

「・・・・・・」

リュウセイの言葉を黙って聞くセイン。

俯いてさえ見えるその姿にリュウセイは言葉を無くす。

「後1日待ってくれ。頼む・・・。」

「・・・・・・たく、仕方がねぇ!今度はしっかりしてくれよな。」

「・・・・・・分かった。」

リュウセイはそう言い残して自室に向かった。

リュウセイを抑えていた彼らはそれを見送ると自分の配置へとついた。

「セイン君。一体どうしたの?」

「俺の判断ミスだ。リュウセイはもうビルトラプターでは自分の能力を生かしきれなくなっているんだ。」

「どう言う事だ?それは。」

「セインに代わり俺が説明する。よーく聞いてろよ。」

「マサキの説明で分かるのかニャ?」

「マサキは説明するのは苦手ニャからニャ。」

シロとクロがマサキ説明下手の事を少し心配する。

「うるせぇ。簡単言うとリュウセイはビルトラプターのポテンシャルを超えてしまったんだ。」

「でもリュウセイさんはビルトラプターに乗ってまだ4ヶ月くらいですよ?それなのにどうして・・・。」

「恐らくセインの地獄の特訓によって並のパイロットでは3年以上かかる技術を2ヶ月で習得してしまったんだ。」

その場にいたブリット、クスハ、フィスの視線がセインの方を見る。

セインはその視線をそらすように明後日の方向を見る。

「ビルトラプターはリュウセイ専用にカスタムしていたんだが、そのカスタムの限界を超えてしまった。故に・・・。」

「ビルトラプターではリュウセイの能力を生かしきれなくなってしまったって事?」

マサキとセインは縦に首を振る。

「だ、だったら再びカスタムし直せば・・・。」

「出来ない事はないがあまりしたくは無いんだ。それに・・・。」

セインは言うか言わないか考えた末に口を開く。

「本来のアイツ専用の機体が明日届く。それまで待って欲しいんだ。」

「本来のって、一体・・・。」

セインはそれ以上のことを話さずに何処かへ行ってしまった。

ブリットとクスハは問いただそうとしたのだが、フィスに止められて断念した。

影からある人物が聞いていた事を知らずに・・・・。








(俺はなんて事を・・・!)

リュウセイは自分を責め続けていた。

格納庫に忘れ物をしたため戻ってみるとマサキ達がいたのである。

顔を合わせ辛い思って影に隠れると話し声が聞こえたのである。

その内容は自分がビルトラプターのポテンシャルを超えている事であった。

(そんなことも気付かないで俺は・・・・・・!)

ちなみにセインの最後の言葉は呆然としていた為聞こえてはいなかった。

リュウセイの中に後悔の念が頭の中でグルグルと回っていた。

その時、リュウセイの部屋に連絡が入った。

「リュウセイ。済まないがF15区域の連絡が途絶えた。至急アルブレードで様子を見に行ってくれないか?」

「了解・・・。だがビルトラプターの方が早く着く。ビルトラプターで出る!」

「! 何言っているんだ!?もし敵が現れたら・・・。」

「俺が半分の出力で戦えば何とかなる。だから・・・!」

「・・・分かった。直ちに出撃してくれ。」

そう言い終わると通信が切れた。

リュウセイはテツヤの命令を受け、問題のF15区域へと向かった。







F15区域は地獄と化していた。

建物や自動車等ありとあらゆる物が壊されていたのだ。中には幼い子供まで・・・。

リュウセイは舌打ちをし辺りを散策する。

ざっと見て7割以上の住人が事が切れていた。

生き残った人々は救助に当たっている。

『ヒャハハハ♪ざまぁ見ろってんだ!この俺様に歯向かうからだよ!!』

「誰だてめぇは!?何処にいる!!」

『ここだよ!!』

「ッ!!」

突然ビルトラプターの後ろから現れた機体からライトソードで攻撃される。

その攻撃にすんでの所で気付き、ビルトラプターは回避する。

その機体のパイロットは嬉しそうに口笛を吹き、ビルトラプターの前に立つ。

『まさか最後の最後にこんなボスに出会えるんだもんな。最高だぜ♪』

「ボスだと!?どう言う事だ!!」

『そのままの意味さ。あのオッサンの言う通り最高のゲームだぜ!』

「ゲームだと!?これはゲーム何かじゃない!虐殺だ!!」

『俺に取っちゃあゲームなんだよ!このテンザン様にとってはな!!』

リュウセイはその名前を聞き驚いた。

テンザン、彼はアーケードゲーム『バーニングPT』の優勝者である。

つまりはリュウセイ達と同じ、民間人上がりなのである。

彼が何故連合にいるのかは不明だが、今の一撃からしてかなりの腕前である。

(それにしても、何だあの機体は・・・。)

リュウセイはテンザンの乗る機体を良く見る。

ゲシュペンストともヒュッケバインとも違うあの灰色の機体を。

『行くぜ、ファントム!奴を倒せばゲームクリアだぜ!!』

テンザンがそう言った後その機体は消えてしまった。

レーダーからも反応がロストし完全に消えてしまったのである。

そして次の瞬間、ビルトラプターに衝撃が走った。

いつの間にか後ろに立っていたあの機体から攻撃が当たったのである。

運が良く撃墜されずに済んだが、その攻撃力はグルンガスト並であった。

『ほぅ。中々やるじゃねぇか。』

ビルトラプターは声のする方を向く。

そこにはゲシュペンスト、量産型ヒュッケバインがそれぞれ10機ずつ。

そしてあの機体がいたのである。

(最悪な状況だ・・・。ヒュッケバイン、ゲシュペンストはともかくあの機体は・・・。)

テンザンの機体―ファントム―の特殊能力により苦戦を強いられている。

リュウセイは戦闘中ふと疑問に思いテンザンに尋ねる。

「一つだけ聞かせてくれ。何であの町を襲撃した・・・。」

『もちろん決まってるだろ!?クソババァ共がいたからだよ!!』

「なっ!?」

『あのクソババァは何時も俺に歯向かうんだ。だからお仕置きしたまでよ。最もあの世に逝ってるかもしれねぇがな!!』

そう言うとテンザンは馬鹿笑いを始める。

「・・・けんじゃねぇ。」

『あぁ?なんだって?』

リュウセイの肩が震えている事を気付かずに尋ねるテンザン。

「ふざけんじゃねぇ!!てめぇ何したか分かってるのか!?」

『何怒っているんだ!?こんな楽しいゲームを邪魔する奴が悪いんだよ!!』

リュウセイの手が怒りに震え出す。

今まで生きてきた内ここまで怒りに震えることは初めてである。

「生まれた時から親がいなくて寂しい思いをした奴を知っているか?

そいつはな、その寂しさを堪えて生きているんだよ。お前は裕福な方じゃねぇか・・・」

『関係ねぇな。俺には。』

「上等だ!!テメェは俺が必ず倒す!!」

『そう来なくっちゃな!そうじゃなきゃ面白くねぇ!!』

リュウセイはビルトラプターの右手に拳を作り、そのままファントム目掛けて攻撃を開始した。

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