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青き天体研究所
第二十三話 人の心と人の命(前編)
「仕方がなかろう。あの戦艦には歴戦の勇者達がいるのだからな。」
「勇者だろうが何だろうが既に奴らはテロリストなんですよ。偽善という皮を被ったね。」
男は連合軍の仕官に向かって話し出す。
その士官の階級を見る限り、将軍クラスのものであるのだが腰が低そうであった。
「不沈艦・・・ですか。よくもまぁあんな戦艦でここまで出来たと思いますよ。
男はすぐ近くにある机に腰を掛け、笑い始めた。
その姿を見ている士官達は恐怖で顔が引きつっていた。
「私が提供した技術を使って早く片付けてくださいね。フハハハハハ・・・。」
そう言って男はその部屋から出て行った。
「恐ろしい方だ。こんなプランまでよこすとは・・・。」
そこにあった紙には複数の人の名前が載っており、上の方に『人工PD』という文字が書いていた。
「セイ兄!いい加減にして下さい!!何で検査させてくれないんです!?」
「大丈夫だって言ってるだろう!!何でも無いから!!」
「じゃあ何で3日に一回のペースで苦しがっているのですか!?それも同じ場所を押さえて・・・。」
「心配しなくてもいいから・・・。それよりアヤを呼んで来てくれ。彼女にはビルトラプターに乗ってもらう事にしたから。」
「もぅ!知りません!!」
そう言ってフィスはアヤを呼びに行ってしまった。
格納庫で始まっていた口ゲンカも終わり、辺りが静かになっていく。
その様子を見ていたクルーも方を撫で下ろし、再び自分の仕事に就いた。
一呼吸ついた後セインはメカニックの所へ行く。
「どうだ?」
「タウゼンフォスラーにあった機体は既に出来ましたが、副指令に頼まれたものは・・・。」
一人のメカニックはそう言ってセインをその場所に連れて行く。
その場所にはパーソナルトルーパーとも特機とも異なった機体が立っていた。
見る限り接近戦用の機体である。
「頼まれた機体、通称PAT何ですがどうも設定したとおりにいかなくて・・・。」
「貸してみろ。俺が確認する。」
そう言ってセインは目の前のコンソールからPATの設定を行う。
ここにいるメカニックより早く打ち込み、チェックしていく。
数分後、全ての事項を確認したのかコンソールから離れる。
「何とか修正したから大丈夫だと思う。後は武装についてだな・・・。」
セインの言った通り、この機体には武器という武器が見当たらない。
正確にはこの機体に合う武器が見つからず、武装が出来ないのである。
セインは溜息をつき、頭をかき始める。
その時一人のメカニックがセインに話しかけた。
「あの副指令。こんな感じでどうでしょうか?」
「ん、どれどれ・・・。」
そのメカニックが作ったプランをモニターに移す。
「・・・・・・。名前は?」
「え!アルですけど・・・。」
「アル、よくやった!このプランで行く!!」
セインはアルに向かって握手をする。
握手をされたアルはただ硬直するしかなかった。
(高速戦闘型にカスタムか・・・。全然思いつかなかったな。)
そう思いながらアヤが来るのを待っていた。
「何ですか、セイ兄は!!こんなに心配していますのに・・・・。」
フィスは文句を言いながらアヤを探していた。
「何時もそうです。私には何も言わないで勝手に決めてしまうんですから・・・。私って頼りにならないんでしょうか・・・。」
そう言ってフィスは立ち止まってしまう。
今までセインはフィスに何も相談せずに何か行動を起こすのである。
ディパインクルセイダーズの件もそうである。
その為フィスはたまにこう思いつめてしまう。―自分は必要な存在なのかと―。
「どうしたんだ、フィス?」
「・・・・・・あ!マイさんですか!?済みませんがアヤさん見ませんでしたか?」
「アヤか?見ていないけど・・・。」
「そうですか・・・?分かりました。」
マイが話しかけてきた事には驚いたがすぐに目的を思い出し、アヤを探しに行く。
するとマイはフィスの手を掴み、
「待って!何か悩み事でもあるの?」
「エッ・・・・・!!」
フィスは図星をつかれ、動きが止まる。そんな事を気にせずにマイは話し続けた。
「今のフィスの顔、悩んだときのアヤの顔にそっくりだから。私で良ければ聞くけど・・・。」
「ありがとうございます。私はセイ兄にとって必要ないのかなぁと思ってしまいまして・・・。」
「どう言う事?」
フィスは今までのセインの行動について話した。
自分になのも相談してくれないセインの事も・・・・。
それを聞いたマイは突然笑い出した。
「フフフハハハハ。」
「何で笑うんですか!?私はこれでも・・・。」
「ご、ごめん。でもたぶん勘違いしてるんじゃないかな?」
「何を言ってるんですか?だってセイ兄は・・・。」
「私の憶測だけどセインはフィスを巻き込みたくないんだよ。」
「何でですか!?私は今いる唯一の家族なんですよ。」
「だからよ。だからセインは余計に巻き込みたくないのよ。唯一の家族をね。」
その言葉を聞いたフィスは胸を締め付けられそうな痛みが走った。
セインの性格からして話さない事は考えられた事なのに頭が回らなかったのである。
そのことが不甲斐なく感じてフィスの目に涙が零れる。
「家族がそこまで考えてくれるなんて良い事じゃない。だから泣かないで・・・。」
「でも、私・・・・。」
「そばにいるだけで気付かない事なんて沢山あるんだから、そんな事気にしないの。私も気付かない事なんて沢山あるんだから。」
マイは思い出したかのように悲しそうな顔をする。
そのことに全く気付かないフィスは何とか泣き止もうとする。
数分後、何とか落ち着いたフィスはマイに渡されたお茶を片手にアヤを探していた。
マイも手伝うと言い、一緒に探している。
「お!やっと見つけた~。」
「リュウセイさん。どうしたんですか?」
リュウセイはフィスを見つけると近寄っていき、話し始める。
「セインからの伝言で、『アヤがこちらに来たので探さなくても良い。済まなかったな。』だってよ。」
「そうですか・・・。では私は格納庫に行きます。」
「待てよ!俺も用事があるから一緒に行くよ。」
「私も!!」
そう言ってフィス、マイ、リュウセイが格納庫に向かおうとした次の瞬間、クロガネ内に警報が鳴り響く。
『総員第二戦闘配備。各パーソナルトルーパー及び特機のパイロットは至急出撃の準備をしてくれ!』
「聞いたか!?行くぞ!!」
「「はい!!」」
「どうしますか、艦長?まさかアレを使う気なんですか・・・。」
「それしかなかろう。上の方に言われたんだから。」
連合軍の艦隊の艦長は何かを使うのに躊躇いを感じていた。
「でもアレは・・・・!」
「分かっている!!だが我々は軍人なんだ!致し方あるまい・・・。」
そう言って各クルーに放送を流す。
『これよりプロト隊を発進させる。各員は持ち場に着き、準備をしろ!!』
その放送が流れると、各クルーに緊張が走った。
「もうこれしかないんだ・・・。クロガネに勝つには・・・。」
そう呟き目の前のクロガネを睨み付けた。
「何だか嫌な予感がする・・・。」
「どうしたんだ、クスハ?」
クスハは直感的にこれから起こる何かに不安を感じた。
龍虎王も何か怒っている様にも見えた。
その一抹の不安を気にせずクスハ、ブリットは出撃した。
「どう言う事?敵艦からパーソナルトルーパーが出て来ないなんて・・・。」
今回が初陣のアヤは少し疑問を抱く。
本来、敵艦であるクロガネが近くにいるのなら沈める為にパーソナルトルーパーの一機や二機出ているはずなのである。
今回の戦艦にはそれが見当たらない。
「何だ?敵機がいねぇじゃねぇか。」
「油断するな、リュウセイ!例えR-1に乗っていてもやられるかもしれんからな。」
「分かってるよ!」
そう言ったとき、敵艦のハッチが開き敵機が出撃した。
敵機の数はこちらと同じ十一機。
どれも新型機らしく、見たことの無いものであった。
「ファントムじゃねぇのか。なら俺だけで・・・。」
「!! マサキ、来るぞ!」
その機体からフォトンライフルが放たれる。
マサキはセインの一言を聞き、間一髪で直撃を免れた。
「危ねぇ~。やりやがったな!!」
サイバスターはカロリックミサイルをその機体に向けて撃つ。
しかしその機体はカロリックミサイルの軌道を読んでいたかのように避け、同時にフォトンライフルを撃つ。
「クソ!シロ、クロ!!」
「「任せるニャ!」」
サイバスターから二機の小型機械『ハイファミリア』を出し、その弾道を破壊した。
「気をつけろ!こいつら今までと違うぞ!!」
サイバスターはディスカッターを取り出し接近戦に持ち込んだ。
敵機もロシュセイバーを取り出し、ディスカッターの太刀を薙ぎ払う。
「各機に通達。アンノウンを撃退する!調べたい事がある為、一機だけは撃墜するな。」
「アラアラ。難しい事言ってくれちゃって。」
「そう言うな。気が滅入るだろう・・・。」
そう言っていた間にも爆発音が鳴り響く。
「我に断てぬ物無し!」
「フッ。もう少し努力したまえ。」
「早ッ!!」
どうやらゼンガーとレーツェルは撃墜したらしい。
だが彼らの機体にはかなりの傷跡が残っていた。
「アレを見せられちゃがんばらなくちゃならないわね。」
「その様だな。行くぞ、エクセレン!」
「はいはい。Bモードっと。」
ヴァイスリッターはオクスタンランチャーを連続してその機体に撃つ。
当然の如くオクスタンランチャーから発射された弾丸は切り払われていく。
その時・・・。
「・・・何処を見ている?」
その言葉と同時にアルトアイゼンのリボルビング・バンカーがコックピット目掛けて撃ち込まれ撃墜する。
近くにいた機体がロシュセイバーを取り出し斬り込む。
アルトアイゼンはそれを予知していたかのように左肩にあるクレイモアを至近距離で放つ。
もちろん避ける事が出来ず、全弾命中した機体は爆発する事無く倒れこんだ。
「何だかちょっとした応用には弱いようね。」
「その様だな。だがAIにしては何だか動きがスムーズじゃなかったか?」
「言われてみればそうね。」
そう言ってアルトアイゼンはバンカーのカートリッジに弾を補給しつつクロガネの元に向かった。
その頃、龍虎王とビルトラプターはと言うと・・・。
「何で当たらないの!?」
「アヤ、落ち着いてください。よく見て戦えば隙が見つかるはずです。」
既に敵機を撃墜したエルシュナイデはビルトラプターに向かって指示を出す。
龍虎王はと言うと、何故か拒否反応を起こして上手く動かないのである。
「どうしたの、龍虎王!?何で・・・。キャ!!」
「大丈夫か、クスハ!?」
「う、うん。炎の符水よ、敵を焼け!!」
その言葉と同時に龍虎王の札から炎が出てき、敵機を飲み込む。
終わったと思い油断していると、フォトンライフルから放たれたビームが龍虎王を襲う。
しかし、その攻撃を最後に動かなくなってしまった。
「終わった・・・。アヤさんは!?」
そう言って振り返ろうとすると爆発音が聞こえてきた。
「大丈夫ですか、アヤ!?」
「ええ。何とか・・・。フォローありがとう、ライ。」
「当然の事をしたまでです。」
どうやらライのフォローがあって何とか撃墜できたようである。
「どうやらそちらも終わりましたか・・・。」
「クスハたちの方もか。ならクロガネに帰還するぞ!」
「「「了解!!」」」
そう言って龍虎王、ビルトラプター、エルシュナイデはクロガネに戻っていった。
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