第二十四話 人の心と人の命（後編）
マサキはアンノウンとの戦いに苦戦を強いられていた。
カロリックミサイルからディスカッターまで避けられた為、内心焦っていると言うのもあるだろう。
「どうするニャか!?このままじゃ・・・。」
「シロ、クロ!もう一度ハイファミリアだ。何とか隙を作ってくれ!!」
「了解ニャ!!」
そう言ってシロとクロが消え、サイバスターから2機の小型機が飛び出す。
複雑な動きにアンノウンも追いつけないようである。
アンノウンはその小型機に構ってサイバスターの事を忘れていた。
マサキはその隙を逃さなかった。
ディスカッターを取り出し、アンノウン目掛けて突っ込んでいく。
刹那――
アンノウンは若干反応に遅れ、ディスカッターが腹部に突き刺さる。
「今だ!サイフラァァッシュ!!」
ディスカッターを突き刺したまま、サイバスターはサイフラッシュを行う。
サイバスターから発せられる強力なエネルギー波に飲み込まれ、アンノウンは消滅した。
「やったぜ!」
「ニャにがニャったぜか!?こんニャ至近距離でサイフラッシュを撃つニャんて・・・」
いつの間にか戻っているシロとクロはマサキに突っ込みを入れる。
「何かアイツ、シュウみたいでムカついたからやっちまったんだよ!人を馬鹿にしたように攻撃を避けまくりやがって・・・」
「それはマサキの攻撃が直線的だったからニャと思うニャ。」
「うるせぇ!クロガネに戻るぞ!!」
そう言ってサイバスターを発進させる。
クロガネのいる場所と全く別の方向に・・・。
リヴァウサーは苦戦を強いられていた。
元々遠距離、砲撃戦に特化した機体だけに接近戦は不利であった。
「このままじゃ・・・。」
既にコールドメタルナイフは弾かれ、ただ逃げる事しか出来ない状態である。
その時、リヴァウサーの目の前にアルブレードが現れる。
「フィス、どいてろ!!」
その言葉と同時にブレードトンファーで一閃する。
アンノウンは何とか避けるものの、左腕が両断された。
「ありがとうございます。」
「礼は後だ!・・・来る!!」
イリスの言う通り、アンノウンは残った右腕を使ってロシュセイバーを取り出し攻撃を開始した。
ロシュセイバーとブレードトンファーがぶつかり合い、激しいスパーク音が鳴り響く。
次の瞬間、アルブレードの後方から長距離砲が撃たれアンノウンに激突する。
その弾丸がコックピット部に当たり爆散した。
「どうですか?私の腕前は・・・。」
「流石だな。その距離から当てるとは・・・。」
「そう・・・ですか・・・。」
フィスは何とかして乱れた呼吸を整えた。
「心配無いと思うがセインのところに行く。大丈夫か?」
「大丈夫です。・・・それよりイリスさん。」
「何だ、手短に言ってくれ。」
「もう少し話し方を変えた方が良いと思いますよ。それではあまりにも・・・」
「? 分かった。なるべく努力はする。」
今まで猫被っていたイリスのイメージが大きい為、フィスは変な感じがしたのだろう。
そんな会話をしながらセインの下に向かった。
「やはり、こいつらは・・・」
スレイヤーの動きに翻弄され、身動きの取れないアンノウンを見ながらセインは呟いた。
どうやらセインはこの機体に見覚えがあるようだ。
「オレの予測通り、連合のバックに奴等がいる・・・!」
そう言って舌打ちをする。
アンノウンはフォトンライフルを取り出しスレイヤー目掛けて発射する。
スレイヤーが切り払おうとした次の瞬間、遥か後方から発射された弾丸がフォトンライフルの軌道をずらした。
まさに神業的行動にただ驚く事しか出来なかった。
「何とか間に合いました。」
「セイン、他の機体は撃墜している。残りはこれだけだ。」
その神業をした張本人達から通信が入った。
どうやらセインが無事だったのを見て安心しているようだ。
「そうか・・・ほとんどの奴らは俺の話を聞いていなかったのか。」
「セイ兄、そんなに怒らないで・・・」
セインの口調が明らかに怒っている事を察し、何とかなだめようとするフィス。
「そんな事よりどうする?」
「とりあえずフィスとイリスはそこにいる弩級の方向音痴を連れてクロガネに向かってくれ。俺はこいつを捕獲する。」
その言葉を聞き、辺りを見回すとサイバスターの姿を発見した。
通信機を介していないのも関わらず、クロとシロ、そしてマサキの声が聞こえてきた。
フィスとイリスはその様子を見てただ呆然とするだけだった。
「・・・・・・分かりました。何分ぐらいで終わりますか？」
「５分。いや、２分で終わらす・・・・！」
スレイヤーは急激にスピードを上げ、アンノウン目掛けて突っ込んでいく。
その速さに追いつけないのか、アンノウンはフォトンライフルを連続して撃ち続けた。
スレイヤーはその軌跡が分かるかのように避けていく。
「そんな攻撃に・・・当たるかよ！！」
弐式斬艦刀を取り出し、ビームを切り払いながら進んでいく。
そのスピードを緩めず、アンノウン目掛けて斬艦刀を振るった。
刹那一閃―――
その一撃を食らったアンノウンは爆散せず、動きが止まってしまった。
スレイヤーは持っていた斬艦刀をあった場所に収め、動かなくなったアンノウンを持ち始める。
「どうしたんだ？動きを止めちゃって・・・。」
「・・・い、いいえ。ただあんなに簡単に済ましてしまったもので。」
「パーソナルトルーパーはコックピット部を強打するとほんの０．０５秒ほど動きが止まる。そこを利用すれば動作でもない。」
「それ以前にあれもパーソナルトルーパーだったんですか！？」
「ああ、あの武装からしてMk-3と同等の力があるようだ。だが―――。」
「？？？」
セインはその先を話すのを止め、クロガネに向かって移動しだした。
クロガネ帰還中の間、セインは一言も話さなかった。ただ、悔しそうな顔をするだけで・・・・・。
「で、どうだったの？あのアンノウンの解析結果は。」
「まだ分からん。セインが確保したアンノウンのコックピットを開ける所だ。」
クロガネに全員帰還し、格納庫にてアンノウンの解析が始まっていた。
骨格からしてＨフレーム、つまりヒュッケバインタイプの機体である事は確かなのだが装甲面、コックピット部が不明なのである。
生体反応があるにも拘らず、アンノウンから出てくる気配が無い。
その為テツヤは強制的にコックピットを開ける事にしたのだ。
「コックピット部にスライサーのセット出来ました。」
「構わん、やってくれ。」
テツヤの命令が下り、スライサーでコックピット部に穴を開ける。
コックピットのカバーが外れそこに現れた者、それは・・・・。
「何だよ・・・これ。」
「ひ、酷い・・・。」
コックピットにいたのは機体と完全に融合した若者の姿だった。
両腕と下半身が機械によって繋がれており、既に生体機能が停止しているようであった。
例えるなら、ガ○ガ○ガーF○N○Lのソ○ル１１○星○に利用されたア○マ状態である。
「考えたな。人をパイロットではなく部品として使うとはな。」
「これならパイロットの経験が無くとも立派に戦える。だがこれは・・・・・・！！」
「明らかに非人道的だ。人を人としてではなく物として扱っている！！」
キョウスケ、ゼンガー、レーツェルは冷静を保っているものの、その声は怒りをあらわにしていた。
「・・・今すぐ彼を助け出せ。くれぐれも慎重にな。」
「・・・・・・了解。」
悔しそうな顔をするテツヤは歯を食いしばりながら命令を下す。
せめて仏になってしまった彼を解放してあげたいのだろう。
それを解析したメカニックもそれを察しすぐに取り掛かった。
「クソ！！何で助けられなかった！！」
「リュウセイ、落ち着け！物に当たっても仕方が無いだろう！！」
自分の不甲斐なさに怒りを覚え、物に当たるリュウセイを何とか止めようとする。
「だが俺は！！」
「・・・だったらその怒りを敵にぶつけるんだ。」
今まで黙っていたセインが口を開いた。
「俺はもうそのつもりでいる。絶対に・・・ぶっ殺す！！」
「セイ・・・兄？」
「たとえ俺以外の人を敵にしてもな！！」
「な、何言ってるんだよ！？落ち着け！！」
「落ち着け？俺は何時も落ち着いているさ・・・。」
そう言いながらセインは何処かに行ってしまった。
セインの豹変にただ呆然とするしかなかった。
「どうしたんだろう。あの時のセイン、何か怖かった・・・。」
「ああ、こんなセインを見るのは初めてだ・・・。」
今まで一緒にいたリュウセイ、ブリット、クスハ、フィスはそれぞれ感想を呟いた。
その様子を一部始終見ていたキョウスケとエクセレンは渋い顔をする。
「あの豹変。恐らくあっちが・・・。」
「本性だろうな。だが何が彼をそこまで変えたんだ？」
「分からないわね。ただ分かる事はあの子は何かを憎んでいる事ぐらいね。」
(やっと見つけた！やっと奴らを・・・・・・！！)
その思いがセインの中で渦を巻く。
自分自身では気付いていないのだがかなりの殺気を出しており、近寄ったクルーはその威圧に押し殺されそうになる。
(俺の予測どおりだ。だったら俺は・・・・・。)
セインは途端に壁を一発殴る。
硬いはずの壁に殴った後がくっきり残り、セインの手血が流れ始める。
「俺は・・・・を倒す！その為に来たんだからな！！」
周りに聞こえないような大きさで呟き、セインは自室の中に入っていった。
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