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青き天体研究所
第二十七話 決戦、そして・・・
ラトゥーニが戦線復帰した事により、流れがこちらに向いたことに気付いたセインは打開策を立てていた。
物量差は1対8の割合、だがパイロットの腕はこちらの方に分があるのだ。
(・・・・・・これ以上考えても埒が明かねぇ。だったら―――)
「やるしかないよな・・・。大丈夫かな?」
何やら決意を固めるとパイロット、及び艦長をブリーフィングルームに集めた。
「こんな所に皆を呼んで何をしようって言うんだ?」
「もしかして告白タイム!?誰と誰がくっつくの!?」
「エクセレン・・・・少し黙ってくれないか。」
いつものコントが終わるのを見計らってセインの口が開いた。
「連合との戦闘が物量戦になってきた今、我々は苦戦を強いられてくるだろう。そこで俺はとある作戦を思いついた。」
そう言って目の前のスクリーンに何かが映し出される。
「これは・・・。」
「連合軍本部、通称ミドガルドだな。」
「そうだ。察しがついた奴もいると思うが俺が考えた作戦。それはこの戦力でミドガルドを落とす事だ。」
「落とすって敵の本部をか!?無茶苦茶だぞ!!」
「だが司令部さえ落とせば自然消滅する。分の悪い賭けだな・・・。」
セインの話した作戦に一同騒ぎ出す。
最も厚い戦力の場所に突っ込んでいこうと言うのだ。
確かにそれが成功すればこちらの勝利は確実だ。だが失敗する確率の方が明らかに高いのだ。
その騒ぎを気にせず、セインは話し続けた。
「俺の立てた作戦は二つある。まずは囮組と潜入組に分かれ、囮組が騒ぎを起こす。囮組が引き付けてる間、潜入組が中から破壊する。」
「実に簡単な作戦だな。それだけに分かりやすく、面白みもある。」
その話を聞いて戦意を高揚させるゼンガーとキョウスケ。
民間からパイロットになったリュウセイ達の顔には不安の色が隠せない。
「囮組なんだが高機動、拡散攻撃に特化したものにやって貰いたい。キョウスケ、エクセレン、リュウセイ、ライ、クスハ、ブリット、マサキ、フィス、イリスにお願いしたいんだが・・・。」
「了~解♪」
「・・・・・・・・・・。」
「分かった。」
と返事をする者もいたが、殆どが返事が出来るものがいなかった。
「潜入組はゼンガー、レーツェル、ラトゥーニ、俺で行く。質問ある者はいるか!?」
殆どの人達は首を横に振る。
武者震いなのか微かに震えている者もいる。
「よし、作戦は30分後。それまでリラックスするなり、精神統一するなりしていてくれ。・・・では解散!!」
その言葉を聞くと次々と散らばっていった。
『君達にいい事を教えてあげるよ。』
「如何したんですか?あなたとあろうお方が・・・。」
連合軍本部、ミドガルドの会議室で将軍クラスの者たちが中央に位置するスクリーンに向かって話している。
『ディパインクルセイダーズだっけ?彼等が攻め込んで来るよ。迎撃準備に取り掛かった方が良い。』
「それは本当なのですか!?」
『我々が嘘付くと思うのかい?信じる信じないは勝手だけどね♪』
「・・・・・今すぐ迎撃準備をしろ。目標が見え次第、一斉攻撃を開始する。」
『それで良いんだよ。君達は駒なんだからね。我々の言う事は聞いておかないと・・・・』
その言葉を最後の通信が切れてしまった。
「駒か・・・。ハッキリ言ってくれるな。」
将軍達はその場で目を瞑り、しばし黙想していた。
「DCだっけ?それが今攻め込んでくるんだってよ。」
「そんな訳無ぇだろう。ここは連合の本拠だぜ。それを承知で突っ込んでくる奴なんて・・・。」
見張りをしていた警備員はそんな雑談をしていた。
その内の一人がとある変化に気付く。
東の空から巨大なビームが飛んできたのである。
そのビームは彼らをそれ、ミドガルドに直撃する。
そのビームによってミドガルドの半分が壊滅、パーソナルトルーパーの数も50%以下となってしまった。
「す、すぐに配置に付くぞ!敵が来たぞ!!」
「まさか本当に来るとは・・・。奴らは馬鹿なのか!?それとも・・・。」
「ふぇっくしょん!!誰か噂でもしてんのか?」
「大丈夫ですか?セイ兄・・・。」
戦闘コード「突撃!連合軍をぶん殴れ!!」(命名リュウセイ)の参加するパイロット達は既に機体の中にいた。
クロガネの副砲とリヴァウサーの長距離ロングキャノンの先制攻撃により、見事主導権を勝ち取る事に成功したのだ。
「これよりミドガルドに攻撃を開始する!全員、生きて帰れよ!!」
「任せてくれ!」「ああ。」「了~解♪」などの返事が返ってくる。
「では、囮組は発進せよ!!」
アルトアイゼン、ヴァイスリッター、R-1、エルシュナイデ、龍虎王、サイバスター、リヴァウサー、ウィルはその言葉と同時に出撃した。
「先手必勝だ!ありがたく受け取れ!!」
アルトアイゼンのクレイモアが開き、無数の弾丸が飛び出し現在いる殆どの機体を破壊する。
それに合わせるかのようにヴァイスリッターもオクスタンランチャーから弾丸を発射し、確実に撃墜していく。
その攻撃によって現在いる60%の戦力を失わせる事に成功する。
その様子を見ていた潜入組はタイミングを見計らって出撃した。
『何だこいつらは!?化け物か!!』
『少しは黙って迎撃しろ!!このままではやられるぞ!!』
警備中の量産型ヒュッケバインのパイロットはその行動に驚きが隠せない様子であった。
そう話しているうちのも次々と撃墜されていく。
「話している暇があったら脱出するんだな!!」
『ナッ!!』
気が付くとそこにはエルシュナイデの姿があった。
量産型ヒュッケバインは何もする事無く撃墜されてしまった。
どうやらパイロットは脱出したみたいだが・・・・。
「ふぅ、大体これ位かしらね。連合の本拠地の戦力もこの位なのかしら?」
「だったら良いんですがね・・・。」
虎龍王に乗っているブリットはミドガルドの方向を見て呟いた。
ミドガルドから次々とパーソナルトルーパーが出てくるのである。
中にはドールの姿も・・・・。
「ケッ、結局は物量戦になっちまうのかよ!!」
「その様だ。・・・私にとっては関係ないんだがな。」
イリスはそう呟くと、ウィルをプロトファントムを起動させ敵陣に突っ込んでいった。
「イリスさん!?勝手な真似はしないで・・・・。」
「フィス、言っても無駄だと思うぞ・・・。スティール1より各機へ、一体一体相手にせず一気にケリをつけるぞ!!」
「「「「了解!!」」」」
キョウスケの指示の下、ウィル以外の機体がまとまって行動するようになった。
統率力の取れた攻撃の前に殆どの敵機は破壊されていく。
弾丸、エネルギーが少なくなっていく中、潜入組が成功する事を祈るしか出来なかった。
【侵入者発見!侵入者発見!直ちに迎撃・・・・】
「面倒くせぇ事になっちまったな。たく。」
「その内分かる事だ。なら早い方が良い。」
「確かにな。それに我々相手に白兵戦挑もうとする者はいないだろう。」
「どうでも良いんですが早く先に進みましょう。囮になっている皆さんがやられる前に!」
そう口々の呟きながらセイン達はミドガルド内部に潜入していた。
乗ってきた機体を隠しミドガルドに潜入したまで良かったが、セインのとある不注意により警報が鳴り響いてしまったのだ。
その事に気付いた何人かの兵は白兵戦に突入するが、ゼンガーの示現流とレーツェルの拳銃の腕前により何とか切り抜けているのである。
ちなみにセインもラトゥーニもある程度武器は使えるものの、ゼンガーとレーツェルの腕の凄さにただ見ている事しか出来なかった。
「もうすぐで指令室だ。急ぐぞ!」
そう言って右に曲がろうとすると、マシンガンによる攻撃が無数に飛び出してくる。
何とかその弾丸を避け、すぐに物陰に隠れる。
しばらくすると銃撃が止み、ゼンガーとレーツェルはすぐに応戦する。
数分後何とか片付き、目の前にある指令室の扉を蹴り開けた。
「そこまでだ!今すぐ降伏しろ!!」
「あなた達の負けです。諦めて下さい!」
そう言ってその場にいる将校全員に拳銃を突きつける。
しかし反応が無くずっと沈黙が保たれていた。
その事を疑問に思い、彼らに近づこうとする。
すると突然、何処からか拍手が聞こえてきた。
「素晴らしいよ。あの程度の戦力でここを落とすなんて。こちらの計算外だよ。」
「!! 誰だ!?何処にいる!!」
その言葉に答えるかのように声の主が闇の中から現れる。
その声とは裏腹に、その姿は15~8歳の少年であった。
その姿を見てセインは少し目を見開く。
「まぁこの程度の駒如きで君達を落とせるとは思わなかったけどね。」
「駒、だと!!人を何だと思っている!?」
「陳腐な事しか言えないのか?これは僕が暇つぶしに考えたゲームなのだよ!!連合はそのための駒ってところかな?」
「なっ!!」
少年の言った事に言葉を失う。自分達は躍らせれていただけなのかと思い始めたのだ。
「如何したのかな?停戦を呼びかけた方が良いよ。もうここにいるのは僕と君達だけなんだから。」
その言葉を聞きレーツェルは将校達の脈を調べる。
既に事が切れているらしく体が硬くなってきていた。
「敗者には死を。それが普通だろ?」
「貴様は・・・人の――」
「命を何だと思ってるんだ、て言いたいの?悪いけど僕らにとってはそんな事何とも思ってないんだ。」
「何もって。あなたは人間でしょ!何でそんな事が言えるの!?」
「人間?冗談はよしてくれ。僕は君達とは全く違う存在なんだよ!!」
違う存在――?その言葉に疑問が浮び、沈黙が流れる。
その時突然、セインがその少年に向かって話し始めた。
「まさか君がFATESになっていたとはな。アル!!」
「おや?何でここにセインが、いや化け物がここにいるのかな?我々と同類になった様子もないし・・・。」
「そんな事は関係ないだろう。貴様は俺の敵だって事以外はな!!」
「同感だね。君のした行為、忘れたとは言わせないからね!!」
「セイン・・・さん?何を・・・。」
ラトゥーニがその重苦しい空気の中、セインに尋ねる。
その時、少年は闇の中へと消えていく。
「逃げる気か?」
「僕は機体を持っていないからね。一時撤退するよ。後、僕の名はラファエルだ。アルなどこの世にいないのだからね。」
その言葉を最後に少年は完全に消えてしまった。
セインたちと多くの死体を残して・・・・・。
その後セインは停戦を呼びかけ、連合との戦争は終わりを告げた。
セインの言ったFATESとは、彼の言った化け物の意味とは。
その謎を残し、彼らはクロガネに帰還した。
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