青き天体研究所

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第三十四話  凶鳥と百舌と隼と・・・



その間、リュウセイがヴァルシオーネに飛び付くというハプニングがあったが、それ以外は何事も無く辿り着いた。

マオ社に収容し、各クルーは今までの緊迫感を解いた。

そして、重要人物であるセイン、リューネ、テツヤ、レーツェルは社長室へ。

リュウセイ、ライ、アヤ、マイはR格納庫へと向かった。






社長室へと向かったセイン達は社長室へ入った。

そこには忙しそうに司令を出している女性の姿があった。

「お久しぶりです、リン=マオ社長。」

セインの声に気付いたのかリンと呼ばれた女性は持っていた電話を置き、セイン達の方を向いた。

「随分派手にやられたみたいだな。四肢を破壊された機体にコックピット付近を突かれ、完全に機能停止した機体。お前達の戦歴が良く分かるな。」

「痛いとこを・・・」

その言葉を聞き、顔が引き釣るセイン。

その他の人達も図星を突かれ、冷や汗をかく。

その様子を見てリンは笑みを浮かべる。

「冗談だ。だが本当に大変だったみたいだな。」

「まあな。だが獲たものも沢山ある・・・。」

「そのようだな。」

リンはセインの様子を察し、何があったのか分かっている様であった。

「ところでマオ社長。アレは完成しているのか?」

レーツェルは話が終わったのを見計らって、リンに尋ねる。

アレの意味が分かったらしくリンは頷く。

「ああ。一応プラスパーツも完成して、後はパイロットの信頼だけってとこだな。」

「つまり完成しているんだな。」

「そのようだ。私も詳しい話は分からない。全て担当の者に任せているからな。」

そう言ってリンは溜め息を一回つき、近くのコーヒーメーカ-から人数分のコーヒーをカップに入れる。

「積もる話もしたいしな。近くに座ってくれ。」

リンの行為に甘え、セイン達は近くにあったソファーに座る事にした。








「何で俺達だけ呼ばれたんだよ~、ライ。」

「俺に聞くな!そう言えばお前、訓練は終わったのか?」

「もちろんだぜ!!いやぁ、生きてるって本当に素晴らしいね・・・(泣)。」

(一体どんな訓練だったんだろ?)

リュウセイとライの会話を聞き、心の中で突っ込みを入れるマイ。

アヤは終始無言の状態が続いていた。まるで何かに緊張しているような・・・。

「・・・・着いたわ。ここよ、R格納庫は。」

「R格納庫、ここが・・・。」

そう言ってリュウセイ、ライ、マイは辺りを見回す。

格納庫と言う割には機体が置いてなく、研究資料やら何かが散らばっているだけなのである。

ライはその中の一枚を拾い上げ、その中身を読み始める。

(アルダート?クソッ、前の字が擦れて良く読めないが・・・。)

「何を見ているんだ、ライディース=F=ブランシュタイン君?」

その声に気づきライは持っていた紙を床に落とし、声のした方に体を向ける。

そこには青い髪をした男性と女性が立っていた。

セインやフィスより色が濃く、まるでここから見える地球のような色であった。

「初めまして・・・で正しいのかな?俺の名はイングラム=プリスケン。イングラムで構わない。こちらは・・・。」

「ヴィレッタ=バディムよ。ヴィレッタで構わないわ。」

突然現れた二人の人物を見て、リュウセイ達の緊張が走っていた。

その様子を見て二人とも微笑んでいたように見えたが、すぐにもとの表情に戻る。

「お前達を呼んだのは他でもない。ライ、アヤ。お前達の機体ととある機能について説明しておきたいからだ。」

「俺とアヤの機体・・・だと?それにとある機能とは・・・。」

その言葉を待っていたかのように彼らは不敵な笑みを浮かべていた。







その頃・・・・







漆黒に包まれた宇宙空間の中、紫色の機体、ヒュッケバインMk-2カスタムが飛行していた。

「この近辺に異常は見当たりません。一応、もう少し巡回した方が宜しいでしょうか?」

【ああ、頼む。・・・済まないな、ラトゥーニ。マオ社に着いてから休憩無しで・・・。】

「良いんです。気が、紛れますから・・・・。」

そう言ってラトゥーニはクロガネからの通信を切る。

ラトゥーニにとって、この近辺の空間に良い思い出が無いのだ。

もちろん、その事を知っているのはラトゥーニ以外知らないのだが・・・。

「オウカ姉様・・・。」

今現在、生きているのか分からないオウカの名前をぼそりと呟く。

生き残ったスクールのメンバーの中で、一番オウカを慕っていたのがラトゥーニであった。

それ故にオウカと離れたこの宇宙が好きなのではないのだろう。

(生きているよね、絶対に・・・。)

もしもの事をあまり考えないように、ラトゥーニは巡回を続けた。

刹那――――

フォトンライフルらしき弾丸がMk-2カスタムのフィールドにぶつかり、ラトゥーニに衝撃が襲ってくる。

「キャッ!!何、敵!?」

そう言ってラトゥーニは持っていたフォトンライフルを構え、索敵を開始する。

『私とした事が、こんな初歩的なミスをするなんて・・・。』

「エッ・・・。」

通信機から聞こえてくる敵機のパイロットの声を聞き、ラトゥーニは呆然とした。

聞き間違いようの無いその声に向かってぼそりと呟いた。

「オウカ・・・姉様?」

『・・・誰、あなたは?』

敵機のパイロットはその言葉を聞き、名前を尋ねる。

「ラトゥーニです。オウカ姉様。」

ラトゥーニは確信を獲たのか嬉しそうに自分の名前を言

う。しかし、それを聞いたパイロット―――オウカの手が微かに震えた。

『・・・けるな。』

「エッ!?」

『ふざけないで!よくも私にその名前を出せましたね!!』

「何を・・・・・・」

オウカのその怒り狂った声を聞き、何が起こったのか分からないラトゥーニ。

そしてオウカ機のフォトンライフルがMk-2カスタムに向かって放たれた。

Mk-2カスタムは寸でのところで回避する。

『ラトゥーニ、アラド、ゼオラは殺された・・・。あなた達、ディパインクルセイダーズの手によってね!なのに・・・あなたは!!』

「何言ってるの、姉様!私達を・・・。」

『黙りなさい!あなたのした事、万死に値します!ラトゥーニに謝りながら死になさい!!』

その言葉を最後に通信が切れ、攻撃が始まった。

オウカ機はMk-2カスタムにライフルが効かない事を確認し、ビームサ-ベルを抜き突撃した。

何が起こっているのか分からなくなっていたラトゥーニはその攻撃の反応し遅れ、Mk-2カスタムの左肩を斬られてしまう。

「クッ!」

少し呻き声を出すがすぐに態勢を整え、ロシュセイバーを抜く。

そして再び突撃してくるオウカ機の攻撃を回避し、ロシュセイバーで斬りつける。

しかし常人とは思えない反応で回避し、ロシュセイバーとビームサーベルがぶつかり合った。

宇宙空間の中、激しいスパーク音が鳴り響く。そして一旦離れ、相手の隙をうかがった。

ラトゥーニのMk-2カスタムに対して、オウカの機体は量産型Mk-2。

機体の性能としてはラトゥーニの方が上であるが、オウカのずば抜けた反射神経によって互角異常に戦っている。

しかし、ラトゥーニには迷いがある為いささか反応が鈍っている部分もある。

その為かMK-2カスタムには多くの傷が目立っている。

『その程度で実力でラトゥーニの名を語るなんてね。残念だわ・・・。でも!!』

量産型Mk-2はフォトンライフルをMK-2カスタムに向け、乱射する。

もちろんMK-2カスタムにはAbフィールドがある為、フォトンライフルの弾丸がその場で四散する。

しかしそれは罠だった・・・。

何時の間にか量産型Mk-2はMk-2カスタムの傍に近寄っており、ビームサーべルを振り上げていた。

『コレで・・・お仕舞いよ!!』

その言葉と同時にビームサーベルを振り下ろした。

ラトゥーニは何が起こったのかわからないものの、コックピット目掛けて振り下ろされたビームサーベルを避ける為、Mk-2カスタムの右腕を盾にする。

結果、右腕は一閃されコックピット部の装甲に一部傷を付ける事になってしまった。

斬られた右腕からはスパークがバチバチと音を立てている。

何時爆発してもおかしくない状況の中、ラトゥーニは今の攻撃の解析をする。

(フォトンライフルで牽制しすぐに加速、そしてビームサーベルを使う。MK-2カスタムのAbフォールドをうまく使った作戦・・・さすがオウカ姉様。)

ラトゥーニは感心しながらも冷や汗をかいている事に気付く。

右腕が破壊された事によってAbフィールドは消滅、更にロシュセイバーのエネルギーも尽きかかっている。

そして、動揺している自分・・・・。

まさに負ける可能性が限りなく高いこの状況に、ラトゥーニは何とか活路を見出そうとしている。

(負けられない・・・。会えたんだ、オウカ姉様に。だから・・・・)

「絶対に負けない・・・。絶対に元のオウカ姉様に戻って貰う為!!」

『元の私?何を言ってるのか分からないけどこの状況の中、どうやって勝とうと言うの?』

「リュウセイが言ってた・・・。『思い』さえあれば、何だって出来ると・・・。だから!!」

『そんな物、あった所で意味は無いわ!その『思い』、消してあげる!!』

そして量産型Mk-2は、再びフォトンライフルを使ってMk-2カスタムに目掛けて撃った。

その弾丸はまっすぐMk-2カスタムのコックピットに向かっており、Mk-2カスタムは回避運動をしようとしたその時・・・。

その弾丸が目の前で四散し、何かがMk-2カスタムの前に立ち量産型Mk-2を斬り裂いた。

量産型Mk-2は何とか回避するが、ビームサーベルを持っていた右腕と左足を一閃した。

目の前に現れた機体には右腕には鋏らしき物が、左腕には三連ガトリングが付いていた。

そして背中にはテスラドライブらしき物が・・・・。

【何とか間に合ったようだな。大丈夫か、ラト?】

目の前に現れた機体から聞こえる声を聞き、ラトゥーニは目を見開いた。

「その声・・・もしかして、アラド?」

【当たり前だろ!俺以外の誰だって言うんだ・・・・。】

【ア~ラ~ド~!何相手に突っ込んでんのよ!?やられたら如何する気!?】

【ウルセェよ、ゼオラ。ラトが無事なんだから良いだろ?】

突然割り込んできたその声を聞き、再びラトゥーニは驚く。

しかしそんな事など気にしていないかのように口論が続いている。

【良い!?お姉様が見つかるまで、私達は死ねないの!だから死ぬような事はしないで!!】

【俺の戦い方に口出すんじゃねぇよ!それに俺の悪運があれば大丈夫に決まってるだろ!!】

【そんな運、捨ててしまえ!!】

「アラド、それにゼオラ。こんな所で喧嘩しないで・・・。」

ラトゥーニが割り込んだ事によりその口論が止まり、ゼオラはやっとの事でラトゥーニの事に気付く。

そうだった。すっかり忘れてた・・・。 ラト、大丈夫!?】

【聞こえてるぞ、ゼオラ。】

【五月蝿い!アラドは黙ってて!!・・・あの量産型Mk-2、かなりの腕前だけど大丈夫だった?】

「うん、それにあのパイロットは・・・・。」

ラトゥーニがパイロットの名前を言おうした時、突然何処からか攻撃され、彼らに衝撃が襲った。

【クゥゥゥ・・・!何なんだよ、いきなり!!】

『五月蝿えんだよ、さっきからペチャクチャペチャクチャ。ゲーム中は静かにする物だぜ!!』

『テンザンか・・・何のつもりですか!?』

量産型Mk-2の横に突然現れたファントムの姿に、オウカは動揺した様子を見せない。

『オッサンが撤退するってよ。それで俺様がお前を迎えに来たって事だ。』

『そう・・・。わかったわ。』

「オウカ姉様!!」

ファントムが現れたから撤退しようとする量産型Mk-2の姿を見て、ラトゥーニは通信機に向かって叫ぶ。

その声に気付いたのか、量産型Mk-2は振り返って通信を入れる。

『この戦闘はまた今度にします。次は・・・容赦しません!!』

「オウカ姉様・・・・。」

その言葉を最後に量産型Mk-2行ってしまった。







「なぁ、今オウカって言ってたけど、もしかして本当に・・・・。」

「うん、本当。あの機体に乗っていたのはオウカ姉様よ。」

アラドの乗っているビルトビルガーとゼオラの乗っているビルトファルケンの通信コードを入力し、通常回線で会話をしている。

アラド達はMk-2カスタムの肩を持ち、マオ社へ向かおうとしていた。

「生きてたんだ・・・。でも、どうして・・・。」

ラトゥーニの言葉を聞き、アラドとゼオラは衝撃を隠せない。

オウカは自分達の事を――特にラトゥーニの事を――優しくしてくれていた為、襲っていた事が信じられないのだ。

しかし、現実に襲っていたところを見ているので信じるしか他ならない。

「分からない。何故だか分からないけど、オウカ姉様の中で私達は死んでる事になってるみたい。でも・・・。」

つらい筈のラトゥーニはその表情を明かさずにゆっくりと話す。

「絶対に『思い』は通じる筈。だって、オウカ姉様も私達も人だから・・・。」

その言葉を聞き、アラドとゼオラはゆっくりと微笑んだ。

自分の信じる人が敵になったと言う真実がラトゥーニの言葉によって和らいだような気がしたのだ。

アラドは満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに話す。

「そうだな・・・。俺達でオウカ姉さんを助けようぜ♪」

アラドの声にラトゥーニとゼオラはこくりと頷いた。

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