青き天体研究所

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第四十四話  天使達との決着


一体は所々に焦げたような後が見られるが、もう一体の方は純白であった。
その純白の機体のパイロット、ミカエルは正面の機体に向かって話始めた。

『まさかあのような行動で彼等二体を倒すとは・・・・・・どうやら昔のままとは思ってはいけないようだな。』
「ハァ、ハァ・・・・当たり前だろ?貴様等FATESと違い、こっちは成長するんだ。そんな事も忘れたみたいだな、ミカエル!」
『フッ。確かにそうかもな。だが貴様には負ける訳にはいかないんでな。ここで死んで貰う、セイン=ブルースウェア!』

そう言ってミカエル機―光龍はレイピアのような剣を構え始める。
その行動に答えるかの様にセイン機―スレイヤーは弐式斬艦刀を取り出し構える。

「断る!・・・何時かのリベンジだ。俺にとどめを刺さなかった事、後悔させてやるよ!!」

その言葉が試合の鐘となり、二体は一瞬にして衝突した。




今まで宇宙に居たセインが何故地球に居るのか。
その理由は時を少し遡る必要がある。




地球の周回軌道上に三体の機影が何かを待っているかの様に漂っていた。
それぞれの機体が天使の姿をモチーフにしているようで、少し神々しさがある。

『来たか・・・』

その内の1体のパイロットが呟く。
その呟きとほぼ同時に二本の長剣を携えた機体―スレイヤーが現れた。

『やっと来たみたいだな。待ちくたびれたぞ。』
「待ってくれといった覚え等無いんだが・・・」
『調子に乗るなよ、破神が!』
『恐れ多いながらウリエルの言う通りですね。もう少し言う事を考えて貰えませんか?』
「ミカエルにウリエル。て事はお前はメタトロンか?」
『良くお分かりで。』
「分かりたくも無いがな。全く・・・予想通り過ぎて呆れるのを通り越して感心するな。」

セインはそうは言っているが、明らかに呆れた口調で話している。
だが敵機から目を反らさない辺り、色々と考えを巡らせているのだろう。
しばらくの間、沈黙がこの場を包み込む。
そして・・・・・・。

『惨下の時間は仕舞いだ!死んで貰うぜ!』
『一人を殺すのに二人で攻め込むのは私の流儀に反しますが仕方ありません。ご覚悟を・・・!』

ミカエル機以外の機体が一斉に攻め込んで来た事を確認すると、セインはスレイヤーの弐式斬艦刀をすぐに抜いた。

「・・・・・・覚悟なら出来ているさ。貴様等が現れ始めた時からな!!」

その言葉と同時に構え、セインは戦闘態勢に入った。


スレイヤーは弐式斬艦刀を両手で持ち、相手の動きを即座に観察する。

(ミカエルは動く気配が無いから無視して良いだろう。メタトロン機は直線的な特攻、ウリエル機は何処行ったかは不明。なら・・・)

セインはその思考の元メタトロン機に突っ込んで行く。
そして弐式斬艦刀をメタトロン機のコックピット目掛けて振るった。
だが・・・・

『そう来ると思っていましたよ。ですが・・・』
「な、何!?」

確実にコックピット目掛けて振るった弐式斬艦刀がその手前で止まってしまったのだ。
まるで見えない壁にぶつかったかのように。

『私は言わば、防御に特化した機体。私の特殊フィールドの前にはどんな攻撃も無力。そして・・・・』

その言葉と同時にメタトロン機の後ろから同じ大きさ位の機体が飛び出してくる。
その手には槍らしき物があり、今にもスレイヤー目掛けて突き刺しそうである。

『俺の槍で貫けぬ物など何もねぇ!くらいな、破神が!!』
「クッ・・・・・。」

スレイヤーはすぐに腰に付いてあるロングメタルソードを取り出し、その槍に軌道を逸らした。
そしてすぐに後退し体勢を整える。

「・・・なるほどな。メタトロンが盾となりウリエルがその盾の後ろから槍で攻撃をする。見事なコンビネーションだな・・・・」
『褒めて頂き有難う御座います。しかし我がフィールド、キャンセラーと。』
『俺の全てを貫く槍。その二つを攻略出来る筈が無い!』

そう言って同じ要領で攻撃をしてくるメタトロンとウリエル。
その攻撃を先程の方法で防ぎながら隙を見つけようとするセイン。
何度も二本の剣と槍、そして特殊フィールドがぶつかり合い、火花が飛び散った。
メタトロンとウリエルはまるで勝利を確信したかのように攻撃の嵐を止めない。
何度も攻撃を受け続けている内にセインはある方法を思いついた。

(・・・・・・確かここは地球の周回軌道上。ならやってみるか。)

またメタトロン機とウリエル機から離れ、セインは弐式斬艦刀をしまいロングメタルソードを両手で持つ。
諦めたのか―――メタトロンとウリエルは一瞬そう思った。
次の言葉を聞くまでは。

「最強の矛と最強の盾・・・・か。笑われてくれるぜ。そんな攻撃しか出来ないとはな・・・。」
『何が言いたいのです?現にあなたを追い詰めているではないですか。』
「そう見えるならお前らの目は節穴だな。」
『言わせて置けば・・・今すぐ止めを刺してやるよ!死ねや、破神が!!』

そう言って再び同じ方法で攻撃してきたメタトロンとウリエル。
その動きを見てセインは少し溜め息をついた。

「馬鹿の一つ覚えか、それは?それと一つ言って置く、ウリエル・・・」

接近するメタトロン機を飛び越え、ウリエル機の元へ突っ込んでいくスレイヤー。
その行動はまるで予想道理であるかのように、ウリエルは持っていた槍をスレイヤーに突き刺そうとする。
その軌道をロングメタルソードで逸らし、そのままコックピット目掛けてロングメタルソードを突き刺した。

「俺の名前は"セイン"だ。しっかり覚えて死んで来い!」

そう言って突き刺したロングメタルソードをそのまま上に斬り上げ両断する。
そして両断されたウリエル機は爆散した。

『ウリエル!?馬鹿な、ありえません!』
「あれだけ技を見せられれば欠点くらい分かるだろ。さて次はお前の番だ、メタトロン!」
『忘れたのですか?私には全ての攻撃が聞かないのですよ。』
「知っているさ。ならこうするだけだ!」

そう言うとすぐにメタトロン機の背後に移動し、ロングメタルソードで推進部を破壊する。
あまりに一瞬の出来事でメタトロンもキャンセラーを使う事が出来なかったのだろう。
そして破壊したと同時にスレイヤーはメタトロン機を捕まえ、そのまま何処かへと加速していく。

『このまま何処へ連れて行こうと言うのです?』
「・・・良い事を教えてやる。地球に降下する際、強力な摩擦が発生するんだ。もしもだ、このままお前を盾に地球に降下したら如何なると思う?」

セインのセリフを聞きやっと意図が分かったメタトロンは焦りを感じる。
セインのしようとしている事、それはメタトロン機を盾に地球に降下する事だ、
機体の性能にもよるが、入射角によっては機体が燃え尽き消滅してしまう。
勿論最強の盾を持っていたとしても・・・

『な、何を考えているんです!?あなた、死ぬ気ですか!』
「言った筈だ。覚悟は出来ていると。・・・俺のスレイヤーが先か、それとも最強の盾を持つ貴様が先か。お互い、覚悟を決めようか。」

更に加速をするスレイヤー。
意地でも外そうとするメタトロンだが、しっかり掴んでいる為中々外せない。
そうこうしている内に地球の重力圏内へと突入してしまった。
摩擦が激しい為か機体が段々赤くなっていく。

『私が、この私がこのような方法で。ミカエル様、後は頼みまs・・・・』
「ハァ、ハァ、ハァ・・・・クッ!流石に暑いで済まないな。苦しい・・・。」

地球へと降下していった為、段々と小さくなっていく。
その様子をしばし見ていたミカエルはセインに感心しながら後を追うように地球へと降下していく。
無論、決着を着ける為に・・・・。



そして冒頭に至る・・・・・




スレイヤーの弐式斬艦刀と光龍のレイピアが激しくぶつかる。
斬るのに特化した武器と突くのに特化した武器同士がしなり合う。

「ハァァァァァァァァ!!」
『ウォォォォォォォォォ!!』


お互いの武器が弾き、弾かれの繰り返しがしばらく続く。
隙を見せた段階で負ける――それ故に隙を見せないよう努力しているようである。

『千の連撃、見切れるか!!』

光龍はレイピアを残影を見えるような速さでスレイヤーに向かって連続で突き刺す。
何十何百、いや何千のもレイピアの突きが襲ってくるように見える。
見切る事は不可能――セインはダメージ覚悟で光龍の元へと突っ込んで行った。
本元を叩けば良い、そう思ったからだろう。
無数の突きの嵐に突っ込んでいくスレイヤー。

「ハァァァァァァァ!食らえッ!!」

今まで溜めていた勢いを込めた一撃を光龍の頭部目掛けて振るい下ろした。
その軌道に気付いたミカエルは連続突きを止め、太刀をレイピアで受け止めようとする。
だがその重い一撃を受け止める事が出来ずレイピアが折れてしまう。
勿論その一撃の勢いは止まらない。
その太刀はそのままレイピアを持っていた腕を斬り落とした。
斬り落とされた腕が爆発し、視界がゼロになった。

「クッ・・・・」
『チィ・・・・!』

予想外の爆発に二人とも後退する。
もし視界が無い状況でやられたら、そう思ったからだ。
視界が晴れるまで息を整えるセインとミカエル。
数秒後、視界が晴れていき相手の姿が段々と見え始めてきた。
光龍は腕一本持っていかれたにも係わらずまだまだ戦える様である。
一方スレイヤーはあの突きの嵐によって受けた被害が大きかったからか、所々の装甲に小さな穴が見えている。
しかし動く分にはまだまだ大丈夫な様だ。

『中々、やるな。まさか腕一本持っていかれるとは。』
「行った筈だぞ、昔とは違うと。」
『そのようだな・・・・』

強がってはいるものの、お互い疲れの色を隠せないでいる。
その事は彼らも感じとっているだろう。
だがそれでも隙を見せないよう心掛ける。

『・・・・・如何だ?そろそろ。』
「何がだ。」
『決着を着けないかと言ってるんだ。。お互い損傷はあるし、このままでは埒が明かないからな。』
「なるほど・・・良いだろう。受けてたってやる!」

そう言ってスレイヤーは弐式斬艦刀を両手に持ち直し構えた。
対する光龍も以前スレイヤーを落としたあの技を使う為、背中の四対の翼を広げエネルギーを集束させていく。
お互い構えたまま動こうとしない。
否、動けないのである。
技を出した瞬間やられる、それが分かっているから。

「・・・・・・・聞きたい事がある、ミカエル。」
『何だ?遺言なら聞くが・・・』
「何故ウリエルとメタトロンと戦っている時、手を出さなかった。手を出していれば確実に俺を殺せた筈だ。」
『その事か。自分が強いと思っている奴等に手を貸してやる義理など無い。それに・・・・』

ミカエルは躊躇っているかのようにしばらく言葉を詰まらした。
そして・・・・

『貴様を殺すのは俺の役目だからだ。それ以上でもそれ以下でも無い。』
「そうか・・・・。もう一つ聞く。以前の戦いでは気付かなかったが、お前の太刀筋はどこかで見た事がある。お前は誰だ?」
『そんな事か・・・・。言う必要も無いだろう?何故なら貴様はここで死ぬんだからな!!』

そう言って集束していたエネルギーが折れたレイピアに集中しだした。
来る!――そう思ったセインは構えを変え、光龍に突っ込んでいった。
そんな事など気にも止めず、光龍はそのレイピアをスレイヤーに目掛けて突き出す。

『エターナルレイン・フォースブラスト!!』

レイピアから突き出された巨大な光りが四つに分かれ、スレイヤーを襲う。
その軌道は的確にスレイヤーの四肢、そしてコックピットを狙っていた。
まさに絶体絶命と思われるこの状況、だがセインの顔に笑みが浮かんでいた。
まるで勝利を確信したかの様に。

「貴方の技、使わせて頂きます。 ・・・さん

そう言った瞬間、スレイヤーは弐式斬艦刀を盾にし突っ込んで行った。
弐式斬艦刀の刃がその光りを二つに斬り裂いて行き、スレイヤーの装甲には何一つダメージを受けずにいる。
そして光りを全て斬り裂いた後、斬艦刀を水平に持ち・・・・・

「食らえ!これが俺の全力だ!! ハァァァァ・・・・・

そのまま斬艦刀を光龍目掛けて横に一閃する。
知覚で捉える事の出来なかったその太刀筋にただ何もする事が出来なかった。

「う・・・うぐッ!ハァ、ハァ・・・・」

反動が大きかったのか、それともまた別の件でなのか。
どちらにせよあの時に起こった発作がセインに襲い掛かる。
だがその発作が起こったにも拘らず、ミカエルは動こうとしなかった。

『・・・・・・まさかあの人の太刀筋を真似するとは。流石だよ、セイン。』
「クッ!・・・・・・この太刀筋を知っているという事は、やはりお前はクr。」
『それ以上言うな。やっとこれで逝けるんだから・・・・ありがとう。』

その言葉を最後に光龍が爆発を起こした。
そしてその爆発した物体はそのまま青い海へと落ちていった。
セインはそれをただ見届ける事しか出来なかった。
そしてすぐにその発作を止める為モルヒネを投与し痛みを和らげた。
しばらくの間、意識がぼぉっとし、立ちくらみのようなものが起こった。

「・・・・・・兎に角休息を取れる陸地を探さないと。それからクロガネに通信を入れて無事である事を伝えて置かないと」

そう良いながら頭を抑え移動を開始しようとした次の瞬間であった。
突然スレイヤーの機能が停止し動かなくなったのだ。

「エネルギー切れ?こんな所でかよ・・・・」

セインは舌打ちをし、何とか起動させようと努力する。
だがその努力も虚しく、機能が停止したスレイヤーは何もする事無く海へと落ちていく。

「こんな所で・・・俺はまだ・・・・・・・・」

その言葉を最後にセインは意識を失ってしまった。
そしてそのまま勢い良く海の中へと落ちて、海深くへと沈んでいった。


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