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EMBRACE OF LIGHT
8th 再出発
ドアを開けるなり麻都は叫んだ。ベッドに横たわってる刻真はしっかりと目を開けていた。
刻真 「・・・騒々しいぞ。何事だ?」
麻都 「・・・・・あ」
刻真 「・・・?どうした、麻都?」
麻都は俯いたまま固まっている。そして瑞樹に向かって静かに手を差しのべた
瑞樹 「?・・・・あぁ」
瑞樹はどこからともなく[ある物]を取り出して麻都に渡す。麻都はそれを大きく振りかぶって刻真の頭上目掛けて振り落とした
ビコ~ン!!
大きな音を立てたそれは、良く見る[ピコピコハンマー]だった。だが、おふざけで聞けるような音ではない。英明・リーベルは唖然とした。
麻都 「・・・・・・」
刻真 「・・・・痛いじゃないか?」
麻都 「・・・・う」
刻真 「・・・・う?」
麻都 「うるさ~い!!」
再び鳴り響く轟音。英明は固まったままだが、リーベルは明らかに怯えている。
瑞樹 「久しぶりに聞いたわねぇ、麻都ちゃんのピコ音。」
英明 「ぴ・・・ピコ音?」
瑞樹 「あれ喰らっちゃったら・・・大概の人は気絶するわねぇ。」
リーベル 「気絶!?・・・でも刻真君は・・・」
刻真 「・・・・何をそんなに怒ってる?」
麻都 「やっかましぃ!!」
なおも叩き続ける麻都。半泣き状態だった。
瑞樹 「あらあら、只者じゃないわねぇ、彼。」
英明 「・・・楽観視してて良いのか?」
麻都の攻撃がやむ。タイミングを見計らって刻真が口を開ける。
刻真 「・・・何が気に食わないんだ?俺はお前の傭兵として助けにいったn」
麻都 「それが問題なのよ!!」
またもや1発。
麻都 「確かにアタシはアンタのマスターよ・・・でも!!」
麻都の涙腺が限界を超えた。泣きながら叫ぶ。
麻都 「アンタの命は1つだけなの!アンタは1人しかいないの!!アンタの変わりはどこ探しても居ないの!!!分かった!?」
刻真 「・・・・・りょ、了解・・・・すまなかった。」
麻都の叫びにその場に居た全員が凍りついた。その静けさを打ち破ったのは麻都本人だった。
麻都 「でも・・・・ありがと。」
刻真 「・・・・?何だ?」
麻都 「ありがとって言ったの!!1回で聞き取りなさいバカ!!」
刻真 「あ?・・・・あ、あぁ。」
瑞樹 「あらあら、仲が良いんだか悪いんだか。」
英明 「・・・・ゼロ。」
英明が前に出る。
刻真 「・・・英明。」
英明 「・・・・・・・・。」
突然、英明はその場に土下座をする。
英明 「すまなかった!!俺のせいで・・・こんな事に。」
刻真 「・・・・・・。」
英明 「許してくれとは言わねぇ・・・でも何か・・・何か手伝わせてくれ!!罪を償いてぇ!!」
刻真 「・・・・・リーベル。」
刻真はリーベルを呼ぶ。
リーベル 「何スか?」
刻真 「英明の精霊・・・渚は?」
リーベルは重い表情になった。
リーベル 「・・・あれはまがい物の精霊ッス。ただ形を作っている・・・デク人形に過ぎないッス。」
英明・刻真 「・・・・・。」
麻都 「・・・どういう事?」
刻真 「俺達の世界での[精霊]という物は、汚れ無き存在・・・浄化された魂がなれる物なんだ。」
リーベル 「英明の精霊・・・渚はレオンによって[強制的に精霊にされた]精霊・・・なんスよ。」
刻真 「・・・リーベル。渚をちゃんとした精霊にする方法を考えてくれ。」
リーベル 「・・・え?」
刻真 「英明。」
英明 「!?」
刻真 「罪を償いたいならこれからは俺達と行動を共にしろ。そうすれば渚を精霊にしてやってもいい。」
英明 「・・・・脅しかかってねぇか?」
刻真 「交渉と言って欲しいな。」
刻真が笑う。
英明 「・・・・へっ、そういう事にしとくぜ。」
英明も笑う。
麻都 「・・・・友情・・・の形なの?」
瑞樹 「そう見た方が良いみたいねぇ。」
全員が静かに笑う。そんな中、笑いを止めて何かを考える刻真の姿があった。
刻真の身支度が終わる
壮介 「本当にもう良いのか?医者としてはもう少し休んだほうが良いと思うのだが。」
刻真 「問題ありません、最低限の行動ができれば。」
壮介は麻都が近くに居ない事を確認してから刻真に話しかける。
壮介 「・・・君達は一体何者なんだ?妙な怪我をしてきたと思えばすぐに去ろうとするし。」
刻真 「・・・・」
壮介 「・・・君は悪いヤツには見えん。だが、もし麻都に何かあったらと考えると」
刻真 「大丈夫です。」
壮介の不安を刻真はすぐさま否定する。
壮介 「・・・・信じていいんだな?」
刻真 「はい。」
壮介 「・・・分かった。」
麻都が駆け寄る。
麻都 「刻真、そろそろ行こ。」
刻真 「分かった・・・・それじゃあ。」
壮介 「あぁ。また何かあったら来なさい。それから麻都・・・」
麻都 「・・・・何?」
壮介 「・・・・気をつけてな。」
麻都 「・・・うん。」
刻真と麻都はその場を後にした。
外では英明とリーベル、そして瑞樹が居た。
リーベル 「もう大丈夫ッスか?」
刻真 「あぁ。心配をかけた。」
瑞樹 「あらあら、みんな思ったよりも心配してなかったわよ?」
刻真 「・・・?どういうことだ」
各々の脳裏に麻都の[ピコハン連打]の模様が思い浮かぶ。
英明 「・・・・本当に大丈夫なのか?」
刻真 「・・・・何故そこまで心配する?」
英明 「・・・いや。」
その場に沈黙が訪れる。話の種が自分であることに気づいた麻都は顔を赤くしている。
刻真 「・・・ところでリーベル。渚の事なんだが・・・」
英明の精霊、渚。レオンによって人為的に精霊化していた彼女は、今では姿を現す事もできない。
リーベル 「モチ!考えたッスよ!!」
英明が反応する。
リーベル 「知っての通り、渚はレオンのおかげで精霊として存在していたッス。今はレオンの力から供給が受けられない状態だから姿を見せないッスね。」
麻都 「へ~。・・・・んで、策としては?」
リーベル 「ヒントは・・・刻真君ッスよ!」
全員が刻真に注目する。
刻真 「・・・・・俺?」
リーベル 「刻真君の精霊は他の物とは全くもって違うッス。」
瑞樹 「・・・・何が違うのかしら?」
刻真 「・・・・心か?」
刻真が呟く。リーベルは満面な笑みを浮かべて肯定した。
リーベル 「その通りッス!刻真君の精霊・・・ファントムは麻都チャンへの忠誠心、ゴーストは刻真君の闘争心を表してるッス。つまり」
英明 「俺も渚に対しての[何か]を表せって事か?」
リーベル 「いい勘してるッスねぇダンナ!!」
英明 「だぁれがダンナだ!!」
刻真 「・・・・リーベル、何か良い事でもあったのか?」
麻都 「・・・・さあ?」
英明 「・・・だがよぉ、俺は今まで1秒たりとも渚の事を忘れたつもりはねぇ。・・・なのに何故今まで精霊化しなかった?」
刻真 「おそらく今までは精霊を操る[能力]が開花してなかったんだろうな?」
瑞樹 「・・・能力」
リーベル 「大概の[精霊使い]は[精霊を行使するための能力]を持ってるッス。これは誰彼持ってるワケじゃないンスよ。」
麻都 「へぇ・・・」
刻真 「人為的とはいえ、1度は渚という[精霊]を手に入れた。そのおかげで英明の中の能力が[強制的に開花した]のだろうな。」
英明 「・・・そこんとこは感謝しなきゃなぁ・・・あのヤローに。」
英明は不敵に微笑んだ。
麻都 「・・・で、結局のところ英明さんは何をすればいいワケ?」
リーベル 「簡単な事ッスよ。3日3晩精神統一してればいいッス。」
英明 「・・・・・・は?」
英明は耳を疑った。
リーベル 「だぁかぁらぁ、3日3晩飲まず食わずで渚の事を考えてればイイッスよ。」
英明は凍りついた。
麻都 「英明さん・・・可愛そう。」
瑞樹 「あらあら・・・大変そうねぇ。」
刻真 「これも訓練と思って観念しろ・・・酷だがな。」
リーベル 「ネッ☆」
英明 「おぉまぁえぇらぁ!!」
勝手な事を言う全員に英明は怒りを見せた。
刻真 「お前、さっきも言ってたよな?[1秒たりとも渚のことを忘れた事がない]と。」
英明 「うっ・・・・」
リーベル 「良かったじゃないッスか!得意分野で。・・・まぁ、ご飯食べないのは初ッスが。」
英明 「・・・・・わーったよ!やりゃあいいんだろが!」
リーベル 「腹くくったッスね!?じゃぁ、英明はボクと一緒に来るッス!」
刻真 「そうだな・・・俺もまだ完治した訳でもないし・・・リーベルに任せる。」
麻都 「瑞樹さんはどうするの?」
瑞樹 「リーベル君に付いてくわ。何だかワタシ、リーベル君の[マスター]になったみたいだから。」
麻都&刻真 「な!?」
2人は驚いた。あっさりと言ってのけた瑞樹に対して。
リーベル 「・・・えへ~」
麻都 「!?り、リーベル君!?」
刻真 「・・・なるほど、そういう事か。」
麻都 「そういう事ってどういう事よ!?」
刻真 「とにかく、後は頼んだぞ、リーベル。瑞樹さんも・・・リーベルを頼みます。」
リーベル 「任せてよ!」
瑞樹 「大丈夫よ、弟が出来たみたいで楽しいし。」
麻都 「・・・・な~んか釈然としないんですけど。」
同時刻 場所 不明
レオン 「・・・・ゼロ達が動いたようだな。」
???1 「あぁ・・・そうこなくっちゃな・・・俺もいい加減飽きてきたぜ。」
???2 「・・・英明は・・・寝返ったようね。」
レオン 「予想範囲内だ。」
???2 「精霊行使の能力を開花させたのも?」
???1 「俺も気になってたんだがよ、わざわざ開花させる必要があったのか?」
レオン 「・・・・・・」
???1 「・・・あ~、ダンマリかよ。まぁいいや。んで、俺達はいつ動けるんだ?」
レオン 「そうだな。そろそろいいタイミングだ。動くぞ。ヴェスタは小僧を、ファナは英明を頼む。」
ファナ 「分かったわ。」
ヴェスタ 「おいおい、俺はあの二挺拳銃使いじゃねぇのかよぉ?比べてみたいんだよ、俺の[双子]とアイツの[双子]の性能をよぉ。」
レオン 「・・・ゼロには俺が会いに行く。確かめたい事もあるからな。」
背後から女性が現れる。エレンだった。
エレン 「・・・・もうそろそろよね?あの子の中で[生まれる]の。」
レオン 「・・・そのはずだ。でなければ・・・・困るだろ?お互いに」
エレン 「そう・・・ね」
エレンは俯きながら返事をした。
レオン 「俺だけ生まれても意味がない・・・ゼロ・・・今会いに行ってやる。」
レオンとエレン、そしてヴェスタとファナも闇の中へと消えていった。
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