広河隆一さんの訴え





以下転送
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<出典>
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http://www.hiropress.net/          Tue, 27 Nov 2003

<部分転送>



■ コラム:イスタンブールのテロ

 「うろたえるな」

 イスタンブールのユダヤ教会堂爆破事件のニュースを聞いて、自分に言い
聞かせようとして書きとめたメモです。

 11月15日に25人、20日に27人の死者が出ました。

 「罪のない人々を殺すこうした行為は、動機がどうであれ、許すことがで
きない」

 これは世界中の国々の指導者たちが語った言葉です。

 しかしブッシュにはこれを語る資格はありません。

 日本の政府にもありません。

 なぜならイラク爆撃に反対する人々が、アメリカ政府や日本政府を批判し
て、同じ言葉を叫んでいたからです。「罪のない人々を殺戮する爆撃はやめ
ろ」と。

 英米日の指導者にとっては、罪のない人はトルコ人で、ユダヤ人で、アメ
リカ人であっても、イラク人やパレスチナ人ではないのです。

 私たちはブッシュや小泉やシャロンの勝手な論理に絡め取られてはいけな
いのです。彼らがテロを攻撃するときは、自分たちのテロを隠すときです。
そのからくりに引きずりこまれてはいけないのです。

 国家だろうが組織だろうが、テロはテロなのです。しかもテロを引き起こ
す原因を作ってきた者に、テロを批判する権利はありません。

 しかしおかしなこじ付けで人が殺されていることが分かっていても、それ
に抵抗するテロが起これば、世界の多くの人々は沈黙します。たとえ動機や
思いが同じでも、やむにやまれぬ動機があっても、テロは越えてはいけない
一線を越えます。それだけ戦いというのは困難なのです。私たちの戦いは、
相手と同じように殺戮の論理を使うことができないし、同じ土俵では戦えな
いから、なかなか勝てないのです。

 軍隊や警察をターゲットにするのはレジスタンスで、人々をターゲットに
するのはテロと呼ばれます。そのテロには大義が必要です。イスタンブール
の殺戮者は、教会堂に数人のイスラエル秘密警察の人間がいたから爆破の対
象になったといいます。

 これではアメリカの論理と同じです。アメリカがアフガニスタンを爆撃し
たとき、10人の子どもと女のいる家に1人の容疑者がいるという情報を得て、
爆弾を落としました。10人の子供たちの死は「付随的被害」と呼ばれました。
イラクで住宅密集地にアメリカやイギリスがクラスター爆弾を何百とばら撒
いたのは、その住宅地のどこかに潜む数人のイラク兵を殺すためでした。も
ちろん犠牲者の圧倒的多数は民間人となりました。この人々も「付随的被害」
と呼ばれました。

 そしてイスタンブールのテロリストは、アメリカと同じ穴のむじなとなっ
たのです。

 ユダヤ教徒を標的にしたテロは、陰惨ながけっぷちのその下の闇に、殺さ
れた人々だけでなく、私たちも突き落とします。人種主義の暗闇、テロの暗
闇にです。この暗闇に落ち込んだら、ほかの殺戮や弾圧が見えなくなってし
まうのです。打ちのめされた人々は、あらゆることに見て見ぬふりをするの
です。

 ここから次の殺戮が準備されます。批判者も、伝える人間もいない、目撃
者もいない殺戮が。知っても誰もが沈黙する暗闇の中の殺戮が。

 事態は私たちが予測したとおりに進んでいます。

 ブッシュと追随するイギリスや日本が行う「テロに対する戦争」はますま
すテロを加速させました。

 彼らはあたかも、テロが世界中に充満するのを待ち望むかのようふるまっ
ています。なぜなら世界中が「反テロの最前線」になることが望みだからで
す。力づくで権益を奪い、軍需産業を肥え太らせ、世界の構図を変え、管理
下におく。そんな彼らは、自分たちが原因となって引き起こすテロを待ち望
んでいます。彼らの誤算は、占領軍に対する攻撃を世間はテロと呼ばないこ
とでした。

 いらだつ彼らは、たてつくものをすべてテロリストの側に追いやります。

 「お前はテロリストの味方をするのか」

 私たちはこのからくりに飲み込まれてはなりません。

 反戦を叫ぶ人がどんどん過激派のレッテルをつけられ、沈黙させられ、封
じ込められていきます。今の日本ではこの傾向が加速していきます。

 数年前には戦争に反対するということが当たり前だったのに、数年後には
この言葉を言うものは、極左過激派と呼ばれるでしょう。

 そしてナチスの時代の白バラ運動のように、孤立し処刑されていくかもし
れません。

 すでにテレビは、自衛隊がイラクに行くのは当然という前提で番組を作り
始めています。

 数日前に見た教育テレビでは、子ども向けにコンピューターを説明する番
組で、戦車のテレビゲームを例にしていたのでびっくりしました。

 タレントのピーコは憲法改正を番組で語っていました。「自衛隊を出した
ら、東京を爆破する」という脅しがあったからといって、自衛隊派遣をあき
らめたら、テロに屈することになるから、自衛隊を派遣しなければならない
と、他の人も叫びます。憲法の改正が必要だと。

 おそろしいテロの夜明けが始まろうとしています。私たちがテロリストに
なり、殺戮者になる夜明けが。

 アキバ・オールというイスラエルの友人はユダヤ人ですが、イスラエルの
占領とシオニズムに反対する先頭に立ってきました。

 彼は「私は弾圧されている側に立つ。ホロコーストの時代にはユダヤ人の
側に、そして今はパレスチナ人の側に」と言っています。

 私たちは今、大地に足をしっかり下ろして、自分の基本となる考えを見つ
めなおさなければなりません。

 ここからが正念場です。

 私たちの政府のようなごまかしの口調ではなく、私たちは全身傾けて、ユ
ダヤ教会堂の爆撃に抗議しなくてはなりません。

 「罪のない人々を殺すこうした行為は、動機がどうであれ、許すことがで
きない!!」



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