2-34 腕輪



「なんとしてでも俺とのことは隠し通すんだ。でないと、親権を得るのは難しくなる。何かあったら、絶対に俺を頼ること。一人で解決しようとするな」

「わかった」

「それから、メールの送受診、電話の発着信履歴は、俺のだけ即消すこと」

「うん」

「俺は、結婚までにちゃんと働いて、お前達を養えるようになるから」

「・・・うん」朝子は涙を拭った。「ひどい顔してるんだろうな、私・・・」

有芯は静かに笑った。「暗いから分かんねぇ。・・・でも、お前は綺麗だよ」

「・・・ありがとう」

自分の気障な発言に照れたのか、有芯はそっぽを向いてからかうように言った。「どういたしまして、今日は素直なんだな、部長殿」

「部長殿って、なによその言い草は!」

「冗談冗談! 怒るなよ、ほら」

有芯は笑いながら、自分の手首にあった、銀と黒のブレスレットを外した。

「婚約指輪の代わり」

有芯は彼女の手首にブレスレットを付けると「婚約腕輪だな」と言って笑い、それにキスをした。

「愛してる・・・。必ず、迎えに行く」

「有芯・・・」

二人は抱き合い、息がつまりそうなほど長い口付けを交わした。

唇が離れると、有芯は朝子を見つめ言った。「マジでダメ? 俺、本気で今すぐ抱きたいんだけど・・・」

「絶対ダメ。部のOGとして許すわけにはいきません」

「了解、先輩」有芯はため息をついた。「あ~あ、早く抱きたいな」

有芯の素直な発言に、朝子は吹き出した。

「何で笑うんだよ?!」

「ごめん、その・・・有芯がね、かわいかったから」

「なんだよ、1個しか年違わないくせにガキ扱いか?」

「そういう意味じゃないって・・・」

「こいつ・・・!」

有芯は悪戯っぽく笑うと、両手で朝子の胸を揉みはじめた。

「もう・・・やめてってば!」

「いいだろ、触るだけなら」そう言うなり彼は朝子の首筋を舌でなぞった。

「あ・・・ん、ねえお願いやめて!」

「わかった。我慢する」

言いながら彼は、彼女のスカートの中に指を滑り込ませた。

「言ってることとやってることが違う! ・・・んっ」

「感じる?」

「・・・バカ」

有芯は朝子の両手首を掴むと、長椅子に押し倒した。

「ちょっと! ・・・お願い、ここじゃ・・・」

「ここに受け入れ態勢が整ってる、しかも誰よりも愛してる女の身体があるのに、そのまま返す男がいるかよ?」

「そんな男にあなたがなればいいじゃない!」

「変な理屈だな」

「変で結構よ!!」

「あ、婚約のキスを」

「キスなら何度も・・・」

「足りない」有芯は朝子に跨った。「もっと欲しい。朝子・・・俺は今までの人生で、これほど飢えたことはないよ」

「有・・・芯」

「ガキ扱いされても構わない。・・・俺を求めて、朝子・・・嘘でも嫌がられるなんて嫌だ」




35へ


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: