月の光

月の光

小説 2


目的などない

否、僕にはある
でもそれは地上から天空へ行くようなもの
方法も順序も何も思いつかない
雲をつかむような話だ

でも僕にはその目的を果たすことしか出来ない
自由を制限されている以上、こういった裏の世界でしか生きれないんだ

「!!」

僕の少し後ろからついてきていたストリークが不意に立ち止まった
耳をぴんとたて、空気のにおいをかいでいる

「ストリーク?」

声をかけると、静かにしろというようにストリークは歯をむいた
少しして、ストリークは突然走り出した
狼の体は雪の中で暮らすのに凄く適している

ストリークの姿はあっという間に見えなくなった

僕は特に何も感じなかった
寂しいとも、せいせいしたとも思わず、ただ立ちすくんでいた
何に恐怖を感じていたのか、自分でも分からない
今思うと、僕はストリークが感じた気配を、自分でも気づかぬうちに察知していたんだと思う
僕はハンターとしての才能を後々開花させたから

ストリークが戻ってくる気配もないから、僕は再び歩きはじめた
行くべき場所もないが、止まってられるほど僕のおかれた現状は優しいものでもない

ぼんやりとはしてられないんだ
警察に捕まる気なんかない
僕は何もしてないんだから

少しづつ明るくなってきた
夜が明けるようだ
今日はどこで休もうか
日が昇ってから、夕方になるまで休むのが毎日のスケジュール
暗いなかを移動したほうが人の目に止まりにくい

どの道こんな大雪原、人なんかどこにもいないけど
まさか雪に埋まって寝るわけにもいかない
警察に捕まる気はないが、死ぬ気もさらさらない
大体死んだら負けを認めることになる
不戦敗は勘弁だった

「ウォーオーオー・・・」

狼の遠吠えが聞こえてくる
ストリークのものかと一瞬頭をよぎるが、ストリークのものではない
ストリークよりももっと低い声だ
ストリークの声は聞こえてこないか、耳をすますが聞こえてくるのは同じ狼の声のみ

なぜか―――嫌な予感がした

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