VTEC style

第1話


北関東を統制していたチームがあった。その名は『COLOR's』。
メンバーは4人。
白のS2000ターボ、黒のRX-7、同じく黒のプレリュード、黄のS2000。その中でも白のS2000ターボは異常な速さだった。
しかし1年後、この4人は忽然と姿を消した。
北関東の走り屋の世界は混乱した。最速を目指す為、多くの走り屋が争い出した。
………。
ここは、群馬県某市にある1軒家。その家のガレージの前には1人の青年がやってきた。
その青年は不思議な感じがしている。20歳前後に見える。顔立ちは女の子のようだが、それよりも目につくのは黄緑色の髪と瞳。
見た感じ染めたわけでは無さそうだ。その男はガレージのシャッターの横にある扉を開けて入っていく。
中ではもう1人の男がクルマのエンジンルームを覗いていた。
「やぁ、ガーネット君」
黄緑青年(仮)が話し掛ける。
「ん?ミツルか」
ガーネットと呼ばれた男は顔を上げてこちらを向く。この男も赤い瞳をしていて、目をひく。
クールな顔つきで黄緑青年とは正反対の顔立ちである。
「にしてもFDとは欲張ったね」
ミツルは不思議そうにFDを眺める。
「そうか?ま、おかげで貯金がほとんど無くなったけどな。それよりもお前、また抜け出してきたのか」
ガーネットは呆れ顔で言う。
「まーね」
「バレてもオレは知らねぇからな」
「大丈夫だよ。このFDイジった?」
「ああ、サスとかブレーキとか結構」
「ふーん。エンジンは?」
「まだ。とりあえず吸排気系とターボのシーケンシャルシステムを取っ払ったぐらいかな」
「金欠って辛いね」
「諦めろ。身分上しょうがねーよ。でさ、お前何にすんだ?クルマ」
「うーん、考えてないなぁ…。でも親父、日産党だから、日産車なら半分ぐらい出してくれるかな~?」
「親に頼るな」
「だってさ、バイトすら出来ないだよ。金なんか増えないよ…」
「まあ…な」
「で日産車だったら何にするんだ?GT-Rか?」
「いやいや、Rは好きじゃないから。FRがいいけどシルビアとかじゃ物足りないからなぁ…」
「と、なるとフェアレディZか」
「そうだね。32よりは33に…」
「NAじゃん」
「ターボは後付けで十分だよ」
「かなりのジャジャ馬になりそうな気が…」
「うーん、そうかなぁ…。絶対に32より33の方がいいけどなぁ」
「ま、どれにせよ…」
「あと2年待つのかぁ…。待ってられないよ…」
「ともかく、頑張れよ」
………。
ここは榛名山。某マンガの影響か走り屋はかなり居る。いつも白熱したバトルで盛り上がっている。
しかし、今日は違っていた。周りの空気が張り詰めている。ガーネットは今日も走りこみにやってきていた。
「なんだろ…。変な感じだな」
そんな内に山頂に着いた。頂上で何か人だかりが出来ている。
「何かするのか?」
ガーネットはすぐに端の待機所に入る。しばらくそばで見てみる事にした。真ん中では2人の男が話し合っている。
「オレ達は『群馬オールドスターズ』っていうんだけど、いきなりで悪いがこの辺で最速のチームか走り屋を知らないか?」
「オレらは『榛名ストリートライズ』ってチームをやっているけど、自分らでは最速だと思ってる」
「…なら話は早い。来週の土曜にうちのチームとタイムトライアルをしてもらいたいんだが」
「…別に断る理由も無いが…」
「じゃ、決まりだな。さっそく走りこませてもらうぜ」
そう言うと男は颯爽とクルマに乗り込み、走り出していく。他の3人のメンバー(らしい人)のクルマで出て行った。
「…何だよあれ。なんだかんだ言って挑戦しに来てんじゃないか!いつも走りこんでる俺達の方が上だろ!」
「そうだ!追っかけまわそうぜ!」
そう言うとこちら側の人たちも出て行く。残ったのはオレだけ…では無い。2人程残っている。
「…あれ?お前…」
ガーネットが見つけたのは1人の少年…いや、ボーイリッシュな少女だった。
「あーっ、木下!」
「上原じゃないか…」
「元気にしてたか?」
「…まぁな。で、何してる」
「何って、走りに来たに決まってんだろ?そしたらさ…」
「なるほど…。何に乗ってるんだ?」
「エーダブ。スーチャの。お前は?」
「FD」
「ふーん、金持ちは違うな」
「誰が金持ちだよ。貯金崩したんだ。で、あいつら、何なんだ?」
「オレも良くシラネーけど、向こうのチームの情報なら少なからず知ってるぜ。あのさっき、うちのリーダーと話していたのがリーダーの相葉 壮介。クルマはXX(ダブルエックス)」
「シルバーのツートンの奴か…。そういや、お前、走らないのか?」
「無理無理。走っても追いつけないって」
「そうか…。他に情報は?」
「他には…、残りのメンバーのマシンは、S30(エスサンマル)、SA(エスエー)、AW(エーダブ)だったかな?」
「ふーん。ま、オレの知った事ではないがな。じゃ、帰るわ」
「そう…。じゃあな」
ガーネットは颯爽とFDのコクピットに滑り込み、エンジンをかけてそのまま、去って行った。
………。
それから数時間後。榛名山の頂上に2台のクルマが…。S30とSA。
「高崎、もう帰ろうぜ。このままじゃ、朝になる」
「…そうね。俺達も引き上げましょ」
しかし…。
「あれっ?」
「どうした?」
「エンジンがかからない…」
「え…」
「どうしたのかな…」
「手伝おうか?」
「いいよ。自分でするから」
数分経過…。
「…まだ?」
「ごめん、もうちょい待って」
また数分経過…。
「…やっぱり手伝おうか?」
「いいって。先帰っといて」
「…わかったよ」
さらに数分後。
「ふぅ…、何とかかかった…。さて、早く帰ろう」
………。
「遅くなっちゃった…。急ごう」
すると、後ろからヘッドライトが…。
「?何か来る?」
あっと言う間に追いついて来た。
「リトラか…。180?MR-2?…上等ね。コーナー2つでバックミラーから消してあげるわ」
高崎はアクセルを踏みつけて加速する。Zはリアを左右に振って加速していく。そして右コーナーにブレーキングからリアを出してドリフト!
「…!?RX-7!?」
高崎が目にした光景は真後ろを同じようなラインでドリフトを決めるFD型RX-7。
「くっ…。馬鹿にして!」
高崎は更にアクセルを踏みつける。焦りは増すばかりでFDは全く離れない。
「悪い夢でも見ているの!?オレは群馬オールドスターズのNo.2よ!」
そして、右のヘアピンが迫る。高崎はギリギリまでブレーキを遅らせる!だが…。
「…!そんな…!」
FDはその横をすり抜け、さらに奥でブレーキ!そのままターンイン。リアがズルズルと出て行く。
「万事休すッ。オーバースピードで後輪(うしろ)が出てる。曲がれる訳無いわ…!」
しかし…。FDはガクッとロールし、フッと残像を残して消える。
「………」
高崎は暫し呆然としていた。
………。
翌日。榛名山付近のファミレスにて…。
メンバー4人で会議中。
「…で誰が走る?」
リーダーの相葉が喋っている。
「オレはパス」
赤城はそういってコーヒーを飲み干す。
「たまには赤城君が走っても良いんじゃない?」
上野が提案する。
「毎回タイムトライアルだけじゃなくて、バトルもすれば?走る参考になるかもよ?」
「えー」
赤城はあっさりと嫌がる。
「ねえ、葵はどう思う?」
上野は横に居た高崎に話し掛ける。
(…にしても、何だったのかしら。オレは榛名で死んだ走り屋の幽霊でも見たのかな…)
高崎の頭の中は昨日のあれの事しかない。
「………」
答えは返ってこない。
「おい…」
「………」
相葉の声も聞こえていないようだ。
「高崎?」
「………」
赤城は手を振ってみるが反応なし。
「葵、葵ってば」
「へっ?」
上野に揺すられやっと気付く。
「何?加奈子」
「どうしたの、葵。さっきからずーっと神妙な顔で考え事してるけど」
「ううん、なんでもない」
「ならいい」
相葉は安堵する。
「ホントか?」
イマイチ納得していない赤城。
「そう…。じゃ来週は赤城君で決まりっ!」
「待ってくれよ!」
赤城はおお焦り。
「そうしよう!」
「高崎までかよ!」
「あはは…」
(でもあのFDはなんだったんだろう…)

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