翼のない鳥
「ワンッ ワンッ ワンッ!」 突然クックが吠え始めた。
そして数秒もたたないうちに、「バサバサバサバサバサッ」と、
けたたましい音が聞こえた。
少年が空を見上げると鳥達が群れをなして色々な場所へと移動
しているのが見えた。
「鳥か・・」
少年はポカンと口を開けたまましばらく空を見上げていた。
「鳥、鳥?」
目を凝らすと鳥以外の生き物が混ざっている事に気付いた。
「羊?うさぎ?あっ!」
少年は他の生き物達だけではなく、翼のない鳥も空を飛んでいる事に
気がついた。
ボワーンとした意識の中、少年は下の方に目をやった。
「ワンッ、 ワンッ」クックがまた吠えた。
どうやら他の生き物がいる事を察すると吠えるらしい。
「あれ?」
少年の目に翼のない鳥が、懸命に飛ぼうとしているのが映った。
そして、その近くに翼のある鳥が飛べずに、息絶えようとしている
事もわかった。
その直後、懸命に飛ぼうとしていた翼のない鳥が飛び立っていった。
「どうして翼があるのに飛べないの?」
「どうして翼がないのに空を飛べるの?」
少年の頭の中は、その事でいっぱいになった。
「考えよ、わからねば繰り返す迄だ」
またしても何処からか大きく低い声が聞こえ、一瞬にして少年を
100年の木の元に戻した。