旅の途中

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六感


     五感の体験は大切 臨床心理士・金盛浦子

 今年の夏も熟年のためのセミナーをカナダで開き、私もカナダの夏を楽しんできました。朝焼け、夕焼けがきれいで、さらに満天の星空の美しいこと。久しぶりの自然の輝きを見て、私の五感が生き生きと動き出すような感じでした。

 セミナーには、カヌーやトレッキングなどの遊びも組み込まれていて、私は乗馬とハイキングに参加しました。

 馬に乗って、自然の中をホーストレッキングすると、五感がフル稼働です。風が梢(こずえ)を渡る音、鳥のさえずり。馬の息づかいに混じって、森の息吹が感じられます。馬が大地を踏みしめる、その微妙な揺れに体の動きを合わせていく。

 ふと、周りを見ると、40代、50代の参加者の表情が生き生きとして、まるで子どもに返ったように輝いています。

 その中にMさんという60歳の男性もいました。彼は定年を2年後に控えた58歳の時、勤めていた会社を辞め、自分で事業を起こしたのですが、うまくいかず、半年前に会社を閉鎖しました。そんなこともあって、鬱々(うつうつ)として楽しむことがない感じだったのですが、そのMさんまでが見違えるようにニコニコしているのです。その日の夜になっても、満足そうな表情が変わりませんでした。

 五感を活動させるのは、人間にとって大切なことなのだなぁと、あらためて感じさせられました。

 五感というのは、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のことで、あわゆる情報のセンサーともいえます。ちなみに仏教でも眼、耳、鼻、舌、身が前五識といわれていて、第六感は意識、つまり心です。五感がどういう働きをしているかで、見たり聞いたりする感覚が変わってくる。心も変ってくるということでしょうか。逆に、心が変ることで、見たり聞いたりする感覚も変ってくるということでしょう。

 こういうふうに考えると、大人はもちろん、いまの子どもたちには、あまりにも五感体験が少ないのではないでしょうか。五感というセンサーを通じて得た情報が極端に減少し、意識と感覚伝達のシステムが崩れつつあるような気がするのです。

 風の音、花の香や草の匂い、泥に足や手を突っ込んだ時の肌の感じ、高いところから飛び降りた時の足裏と体の感触…。こうしたものが、おおむね危ない、汚いなどで禁じられています。「キレル」という言葉で表される意識反応と無関係ではないかもしれません。 今回はカナダのセミナーの例を紹介しましたが、私が行っている「SEPY」や「親の会」では、ナイトウォーキングやハイキングを定期的にやっています。そうしたイベントの中でも、明らかに表情に変化が表れる人がいて、やはり五感が大切だと感じられることが少なくありません。




■人物略歴 東京心理教育研究所所長 臨床心理士・金盛浦子



六感とは、五感に”こころ”が加わったものだと言う。

最近の子は、手で触れたり身体で感じることが少なくなってきたのではないだろうか?

私が子供の頃、虫を採取したり観察したりと、色々な自然に触れる事が出来た時代だ。

「百聞一見にあらず」とは、正にその通りである。

いくら綺麗な風景写真を見ても、現地へ行き その広大な風景を見た時の感動は

その写真からは得られないのである。








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