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晒し場
ことり編 1話 始まりは夢の中
『キキーーーー!!』
地面に響く轟音が辺りを制した。
そんな中、一台の車が地面に不自然なタイヤの後をつけ、見る影もなくもなく潰れていた。そして、その車の軌跡のすぐそばで腰を抜かす一人の少年がいた・・・大事そうに帽子を抱えて。さらにそこから、少し離れたところに呆然とする少年と、泣き崩れる少女。
「これは・・・誰の夢だ・・・?」
「誰ですか?」
「えっ?」
他人の夢を見る能力を持つ純一にとって、散々夢を見せられてきたが、話しかけられたことはなく、純一は少々困惑した。その相手は白い髪・・・白髪の少年だった。
「悲しいですよね、こんな夢・・・」
「さあな、こんな誰か分からない悲劇を見せられてもかったるいだけだ。」
「本当にそうでしょうか?朝倉さんが無関係だと思いますか?」
「どういう意味だ?」
純一は質問の意味が分からなく、思わず聞き返した。
「よく見てください・・・・あの女の子を・・・。」
「・・・・?・・・・!」
何かに気づくと同時に、純一が見ていた夢は途切れた。
教室
「・・・・・。」
「旭・・・君・・・。朝倉君も」
「ん?」
(誰だろう・・・ことり?)
「起きないと・・・ほら二人とも。」
「こらっ!起きろ。」
『ぼかっ!』
(!!!!!)
旭は眠りから帰ってくると、周りはみな席を立っていた。
「あれっ?暦さん?」
『ぼかっ!』
「!!!!!」
「学校では先生だろ!」
暦先生が『さん付け』で呼ばれたことを疑問
「痛い・・・」
「ほらっ!朝倉もさっさと起きろ。」
「・・・・。」
『ぼかっ!』
「!!!!!」
そんな二人は教室中の視線を集め、笑い者へとなっていた。
「じゃあ、週番、号令!」
「礼!」
号令が教室に響き渡るとすぐに、学生たちは動き出した。
「旭君!」
「何?ことり。」
「一緒にお昼食べない?」
「いいよ。」
二人の当たり前のような会話・・・だが、周りから見ると学園のアイドルと新しいクラスメイト・・・明らかに不自然な組み合わせであった。そんな二人に話しかけてくる一人の男がいた。
「おい、旭!」
「はい?」
「どうしたの、朝倉君?」
突然の呼びかけに、当然ながら二人は驚いている。
「さっきのあれは何だ!」
「あれって何のことですか?朝倉君?」
ことりが不思議に思うのも無理はない。だが、純一には答えられない。
「旭君、どういうこと?」
「えぇっと・・・これはね・・・。」
「もう、どうしたんですか?二人とも。」
ことりは二人のはっきりとしない言動に多少、苛立ちを感じているようであった。
「朝倉さん。」
「何だ?」
「そのことについては後で説明するから今は・・・その・・・・黙っていてくれませんか?」
「・・・分かったよ。」
純一はいまいち納得いかない顔をしていたが、この場を引き下がった。
「じゃあ、行く?ことり。」
「むぅ~~。」
ことりが少しむくれた顔をしていた。それに気づいた旭が・・・
「どうしたの?」
「何で教えてくれないのかなぁ~~?」
「まだ・・・気になるの?・・・そういえば、朝倉さんとことり・・・結構親しそうだったよね。僕のいない間に朝倉さんとは何かあったの?」
「べっ、別に何にもないよ!」
いきなり、質問の方向性を変えられて、ことりは戸惑った。さらに、頬が赤く染まっている。
「ふーん。」
旭は何かを察したよう笑みを浮かべていた。
「何が可笑しいの?」
「何にも。」
まだ旭は、悪戯っぽい笑みを浮かべたままであった。
放課後
「じゃあ、週番。」
「礼。」
暦先生の短いHRも終わった。
「旭!」
「はい?」
純一は旭を呼び止めると・・・
「昼のこと、きっちり話してもらうからな!」
「ははは・・・。」
旭は『まいったな』と言いたいような表情を浮かべながらも、渋々、純一に付いていった。
教員棟の屋上
「ここなら、どうせ誰も来ないだろ。じゃあ、説明してくれ。今日のあの夢はいったい何なんだ?」
「あれは・・・僕の夢だよ、そして朝倉さんが入り込んできた・・・それだけ。」
「それだけって、じゃあ、何でお前は俺に話しかけられたんだ?」
「それはね・・・朝倉さんは僕の夢を見れるんだよね?」
「そうだけど・・・。」
純一にとってはあまりにも馬鹿馬鹿しい能力であったため、この事について話したのは初めてだった。しかも、その相手が今日出会ったばかりの男になるとは思っても見なかった。
「僕の場合は、そういった寝ている人に話しかけたり出来るんだ。自分が寝ている時でもね・・・。」
真剣な面持ちで旭は喋り続けた。
「だけど、起きている人にはこの能力は使えないんだ。今回の場合はたぶん、朝倉さんが僕の夢の中に入ってきたからだと思う。」
純一は半分納得したような表情
「分かった。それともう一つ聞きたい事がある。夢の内容のことだ。あの女の子・・・ことりだろ?」
「そう・・・だよ。」
「それに、白い髪の男の子は、旭・・・あんただな。」
「その通りだよ。」
「で、あの夢は・・・」
その後の言葉を純一が続けようとしたとき、旭が
「それは聞かないでくれるかな?あまり、ことりにとっても、僕にとっても知られたくないことなんだ。」
「・・・・分かったよ。」
「じゃあ・・・いいね・・・も・・」
そうして、旭が会話を打ち切ろうとした瞬間。
『ギィ』
屋上にある鉄でできた重い扉の開く音が聞こえた。
「朝倉ぁ!」
鉄の扉が開くと同時に、威勢のいい声が響いた。
「ま・・眞子!」
純一が驚きの声をあげた。さらに、どうも彼の顔は青ざめているようだ。
「いったいこんな所で何してんのよ!」
「わ・・・。」
「輪?」
「わかげのいた・・・」
「知るか!」
『ドフ!』
「ぐはぁ・・・。」
純一が言葉を言い終える前に、眞子の鉄拳が彼の腹に炸裂した。
「ま・・・眞子・・・てめぇ・・・。」
純一は何か反論したいようなのだが・・・
「恋人を待たせるあんたが悪い!」
眞子がはっきりと言い切ると・・・
「すみませんでした。」
無条件降伏でした。
「あのぅ・・・。」
明らかに急展開を繰り広げた惨状に、旭は戸惑っていた。
「え?」
どうやら、眞子は旭の存在には気づいていなかったようだ。
「水越さん、どうしたんですか?急に。」
「えっと・・・ははは・・・。」
純一に発した言葉が原因であろう、眞子は頬赤く染めている。その会話を聞いた純一はある違和感を覚え、二人に問いかけた。
「なぁ?」
「え?」
「ん?」
「旭、さっき眞子こと・・・『水越さん』って呼んでたよな?」
「そうだけど、どうかしたの?」
旭はどうしてそんな質問をされるのか検討が付かず、キョトンとした顔をしている。
「まだ俺は『眞子』としか呼んでないはずだし、お前は今日、初めて学園に来たはずだろ?どうして名字を知ってるんだ?」
ほんの些細な事なのだが、純一のとっては恋人に関わることはどうしても気になるらしい。
「えぇっとね、何度か『コンクール』で話ししたことがあるんだ・・・。」
「そうよ、たまたま、声楽のコンクールと別会場だったけど、建物が同じだったの。で、空き時間に少し覗いた時にね、一人壇上で歌ってたの・・・男の子なのに凄く高くて綺麗な声でね・・・。それで、どうしても気になったから入り口で待ち伏せしてたの・・・どんな子なのかなって。」
「あの時はホントびっくりしたんだよ、いきなり声を掛けてくるんだから・・・。」
旭は笑いながら、昔の事を思い出すように語っていた。
「そういえば、旭君はこっちでも声楽部に入るの?よかったら紹介するよ。」
「えぇっと・・・実は迷ってるんだ・・・。」
少し申し訳ないような顔をしながら旭は喋っていた。
「そう・・・別に無理に勧めたりはしないけどさ・・・才能は無駄にしないほうがいいと思うよ。何か理由でもあるの?旭君ぐらい上手だったらきっと歓迎してくれるよ。」
残念そうな顔をする眞子はどうにか旭を説得しようとしていた。
「忙しいんだ・・・僕、色々あってね・・・部活動に入ったとしても、あんまりそっちに時間が割けなくなって、きっと中途半端になっちゃうから・・・。」
「まあ、しょうがないわ・・・。そこまで言うなら・・・。って、朝倉ぁ!旭君とこんな所で何してたの!」
思い出したように眞子が口を開いた。
「別に・・・何でもいいじゃないか・・・。」
急に質問の矛先を向けられた純一は上手く説明する事ができずにいた。当然ながら、純一は他人の夢が見れる・・・なんて、眞子にも説明していない。
「言えないようなことでもしてたの?」
喋っている言葉の口調を聞く限りでは・・・純一がおかれている状況がどんどんと悪化していることが雰囲気からひしひしと伝わってくる。
「違う・・・別にそんなんじゃないんだ・・・。」
必死に弁明しようとするが、肝心の理由を純一は喋れないため刻々と彼の死期が近づいてきている。
「眞子・・・落ち着け・・・俺にそっちの気はないし・・・誤解するな、いくら旭が女顔でも・・・俺は眞子のほうが可愛いと思うぞ・・・。」
なんとか、眞子の怒りを落ち着かせようと努力をするが・・・。
「何?その、世間一般から見たら旭君のほうが可愛いみたいな言い方は・・・。」
最後のストッパーが外れた。
『ドゴァ!!』
凄まじい効果音と共に純一の体は宙を舞った・・・。
「・・・。」
旭はそんな純一を見て、様子を観察しに近寄った。
「・・・。」
肩を揺らしたが、反応する気配がない・・・。
(どうやら、ただの屍のようだ・・・。いや、違うよね。)
「どうする?水越さん・・・」
「放っておけば、そのうち目も覚めるし、大丈夫だと思うけど・・・。」
「けど・・・って・・・やっぱり恋人のことは心配?」
旭の言葉に、眞子はうっすらと頬を赤く染めた。
「・・・。」
そして、俯いたまま言葉を失っている。
「じゃあ、運ぶ?」
「うん。」
眞子は俯いたまま、そう返事をし純一の体を持ち上げていった。
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