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晒し場
タイムリミット
《人物紹介》
雪村 佑介
高校二年生
あまり他人と関わらず、友達も少ない。いつも物事に無関心で、日々適当に生きている。そんな彼はある運命を見せられる。
なお、血液型が稀少なボンベイ型である
天津 俊彦
高校二年生
佑介の幼なじみ。明るく、そこら中を走り回っており落ち着きがなく、クラスのムードメーカーということになっている。
佑介の異変に気づき行動を始めるが・・。実はまだ1、2歳の頃に両親を失っていて養子である。
なお彼もまた、血液型が稀少なボンベイ型である
死なんてのは、まだ自分には関係ないことだと思っていた。たとえ、誰かがいつ死ぬかと分かっていても・・・・。
俺は今夢の中にいる。何故そんなことが分かるかって?さあな、だが俺は昔っから分かるんだよ。夢の中にいるってはっきりとな。
いつからかは知らないんだけどな、いつも決まって人が死ぬんだよ、夢の中で。
そして、その人間は3日後に死んでいく。
だから、俺はニュースで殺人事件が起こっても、たいして驚きはしない。だけど、この日の夢が特別になる・・・・なんて俺は微塵も考えていなかった。
10/21
「うわぁぁ!!」
俺は悲鳴と共に声を上げ、起床した。
背中に冷や汗がつたい、体が細かく震えているのが確認できる。
時計を見るとまだ午前の5時。
「・・・・。」
思考が正常に働かない。夢の中の登場人物は俺一人。
そして・・・・。
それ以上は考えたくもない、と思考を切り替えようとするが、頭の中には霧がかかったようにもやもやしている。取りあえず、寝間着から着替え、散歩にでも出かけてみる。
気晴らしには一番これがいい。うやむやしたことがあればいつもこうしていた。・・・・・・一通り自分の町の周りを歩いてみる。公園や学校、保育園や郵便局etcいつも見ているはずのものが、その日だけ違って見えた。
何故かは分からない。だけど、心の中には焦燥感がこみ上げてくる。
町の中に人の動きが出来はじめてきた頃、俺は自宅へと戻った。家の中には当たり前のように母や父と朝の挨拶をし、
何処にでも存在する、ありふれた朝の一幕が繰り広げる。
適当な時間になったら家を出て学校へ向かう。学校に通うようになってから早10年と半年。朝寝坊することは滅多になく、ごく当たり前のように登校する。
見慣れた通学路。幸いにも、小中高とあまり場所が変わっていないため、いつも同じ道を通っていた。
そこを通っていけば、いつものように腐れ縁で結ばれた友人が待っている。
「よお、雪村!」
こいつの名前は天津 俊彦。
親同士が仲が良かったから小さい頃から結構一緒に遊んだ仲だ。
「ああ、おはよう」
「なあなあ、昨日のアレ・・見たか?」
「アレって何だよ、アレって?」
「アレはアレだぜ。」
「まあ見たと言うことで勘弁してくれ。」
「変わんねぇな、そうゆうところ。」
「お互い様だろ。」
いつまでも続くと思っていた日常。友達とふざけ合い、たわいもない会話を繰り返す。ただ、普通に平凡に変わりなき日常を・・・。
学校に着けば、先生や先輩、クラスメイト達と挨拶する。HRが過ぎ、授業を受ける。授業中に居眠りをすれば、先生に教科書で叩かれて怒られ、みんなの笑い者にされる。部活に所属していない俺は真っ先に校門を飛び出し家路に着く。
途中、本屋に立ち寄ったり、コンビニで買い食いしたり・・・。
寄り道と呼べるような店には行ってみた・・・・普段はしないくせにと、心の中でつぶやいてはいるんだけど・・・。
本当に何故なんだろう・・・・あからさまにおかしいんだよ。って考え込んでいたら・・
「おぅ、雪村!!今帰りか?」
目の前にはこれまで生きてきて、嫌と言うほど見てきた顔が俺の視界を遮っている。
「まあ、そうだが・・・どうした?」
「いや、お前が寄り道してるなんて珍しいなって思ってな。」
「そうか?」
「そうだぜ、なにしろ高校に入ってから、お前さっさと帰ってるじゃねぇか。」
「あんたがそこら中寄ってるだけだろ?」
「・・まあ、確かにそれもあるど・・・。」
「どうした?」
「いや、本当に一緒に帰るなんて久しぶりだなぁって思っただけさ。」
「俺はまだ、一緒に帰るなんて決めてないぞ。」
「つれないぞ雪村よ。」
「でもまあ、いいかな・・・たまには。」
「・・・。」
なんだよこいつの方こそ珍しいじゃないか。バカの一つ覚えのように只ひたすら動き回るようなやつなのに・・・
「・・・変じゃないか、今日のお前。」
そんだけ考えて出した結論がそれかよ・・
「そうか?」
「いや、何というか・・・」
とにもかくにも行動を・・・という俊彦がまた考え込んでいる。雨を降らされちゃたまったモンじゃないからな。
「やめてくれ・・・思考を働かせるなんてお前らしくないぞ。」
「ひでぇ」
「気にすんな。」
「まあ、そうかな。」
「あぁ」
そういって会話にけりを付けると、俺たちは歩き出した。こいつも既に用が済んでいるようで、このまま真っ直ぐに変えることに成功した。そして、
「ただいま。」
と到着の挨拶をした後、母の返事も聞かず俺は自分の空間へと入り込んでいった・・・といっても自分の部屋なんだけど。
「何だったんだ・・・今日の夢は?」
半日たったんだ、整理くらいつけられるだろう。
(確か、夢の中で俺は・・・町を歩いていた・・・一人で。その後、俺は・・・)
この先を思い出そうとした瞬間、俺の体中、全身に身震いが走った。
(今まで、俺の夢の中に出てきたやつはみんな死んでいった。)
(で、そして今日の夢も・・・?)
(もしかして、俺も・・・・死ぬのか?)
たどり着いた結論は結局これだった。
「自分の死」
認めたくなかったんだろう・・・今まで、死ぬことなんて考えたことがなかった。
じゃあ、何だ?今日の俺の行動は?今まで見てきたものが何か変わって見えたり、慣れないことをしていたり・・・。
自分でも説明がつかない感覚や行動に、半ばいらだちを覚えてしまう。
「明日考えることにしよう。」
俺は無理矢理に思考を終わらせ、夕飯も食べず、風呂にも入らず、ベッドの上で眠りに落ちた。
そして、眠りに落ちる直前に頭の中にある一言がよぎった。
「俺の余命は後二日?」
という恐怖しか与えない言葉が・・・。
10/22
俺が目を開け、一日の活動を開始したのは時計の長針と短針がそれぞれ反対方向に向いていて、時計盤の中央を通っているときであった。
その日、俺は初めて夢を見なかった・・。正直言って戸惑った。
今まで、毎日のように見てきたものを初めて見なかったのだから・・・。
(どうしてなんだ?)
(昨日見たのは自分の死だった・・・それが本当なら俺の余命は後二日。)
(つまり、今日から三日後に死ぬ人間のことは既に見る必要が無いって事か?)
中学時代に以前、俺は一度だけクラスメイトが死ぬ夢を見た。知っているやつが死ぬのは気分が悪かったからだろうか?俺はそいつをどうにかしようとした。
だけど、そいつは死んだ・・・。きっと見てしまったら変えられないんだ・・
「死」という結果を・・・。
そうなると、本当に俺の余命は後二日となってしまう。
(俺はどうしたらいいんだ?)
(どうにかして生きようとすればいいのか?それとも諦めればいいのか?)
考えれば考えるほど、俺の頭に痛みがかけずり回る。痛みを断ち切るために、俺は考察をやめ着替えをし、朝の支度をした。
普段なら学校に着き、HRを受けているときであろう。
だが、今俺は学校には行かず、生まれてきてからずっと住んでいる町のほとんどを視認できる丘の上に立っている。
手にはコンビニで適当に調達してきた昼飯を入れたビニール袋を下げて・・・。
(嫌なことがあればいつもここに来ていたなぁ。)
親に怒られたときや、テストの点が悪くて家に帰りづらかったときや、俊彦とケンカしたときや・・・俺の思い出の半分がここにあると言っても過言ではないだろう。
遠くからは、学校のチャイムが聞こえてくる・・・。
ここに来たのは整理を付けるためだ・・・今までの俺の人生を。何にも考えず過ごしてきた16年と半年の人生を。
適当に過ごしてきた・・・これからたっぷりと時間があると油断してきたためである。
俺は苦笑した・・・そんな自分から見ても哀れとも言えるような俺の人生をな。
気が付けば、手にしていたビニール袋の中身は軽くなっていて、日も落ちかけている。
俺が体を翻し、家に向かおうとしたそのときであった。
「雪村!!」
俊彦であった。
「お前今日学校どうしたんだよ。」
当然の質問であった。
「勝手にサボりやがって!」
「何だっていいじゃないか・・・。」
「よくねぇよ!」
俊彦がきっぱりとそう言い返すと
「昨日からおかしいじゃねぇかよ、お前。何かあったんなら言ってみろよ!」
「別に何にもないよ。」
「嘘つくんじゃねぇ、何年付き合ってきたと思ってるんだ、俺たち。」
その通りであった。今までどんなに上手く嘘を言ったと思っていても、俊彦にはばれていた。
不思議と分かっているんだ、俊彦が嘘をついても、俺だってすぐに見破れた。
「言えよ!」
「いやだね!」
「何でこういうときに限ってお前は強情なんだよ!普段はいい加減なくせに!」
「じゃあ、言えば信じるって言うのか!」
俺は未だかつて無いほどに尖らせた目で俊彦を睨めつけた。驚いたのだろうか、しばしの間、言葉がとぎれ風の音だけが聞こえてきた。
しかし、しばらくすると
「上等じゃねぇか、信じてやるよ。」
俊彦が腹をくくった目で睨み返してきた。
「それなら、言うよ・・・明日俺は死ぬんだ・・・。」
「えっ!」
さすがに虚をつかれたのか、俊彦の目からは動揺の気持ちが手に取るように分かる。
「どういうこと・・・だ?」
「言葉のまんまさ、俺は死ぬんだよ、明日にはな。」
「何で分かるんだ?」
俺は今まで誰にも話したことの無かった、自分の不思議な力について話した。
そして、昨日見た夢が自分の死ぬ夢だったということを・・・。
「本当・・なのか?」
「ああ、冗談に聞こえるか?」
「いや・・。」
俊彦の目には未だ動揺の気持ちが表れている。
「それで、お前はどうしたいんだ?」
「何のことだ?」
「生きたいのか、お前は・・・。」
「死にたい・・・なんていう人間かこの世にいると思うか?」
「・・・。」
その後しばらくの間、沈黙が流れたが、
「どうにかできないのか?」
俊彦がまるで助けを求めるような目をしながら俺を見ている。
それに対応するため、中学校時代のクラスメイトが死んだことに関しても話した。
それ以降、俊彦は何も語らずに気づいたらその場を去っていた。最後に見たあいつ目には涙が浮かんでいた。というより浮かんでいる様に見えた。
10/23
俺の人生の最後の一日となる日が来てしまった。今まで生きてきて想像することができなかった日が・・・。
そして、今も悩み続けている。自分はどうすべきなのか。
それともう一つ、気にかかっていることも
(本当にあいつに話すべきだったのか?)
「明日死んでしまう」・・・・そんな誰もが
想像し得ない言葉を、昨日俊彦に吐き捨ててしまったからである。あいつがどれだけショックを受けたことか、容易に考えられることである。
何だかんだいって、いつもあいつとは一緒にいた。ケンカをしても、自然と翌日には仲直りをしている、そんな仲であった。
だけど、今はあいつと会いたくない、というよりどういう顔をしてあいつと話せばいいのか分からない。
そういえば、昨日は家に帰ってから、親に思いっきりしぼられたっけな。無断で学校サボったし・・・。
まあ、怒られたもっともの原因は携帯の電源を切っていたからだけど・・・。
「いったい、、どれだけ心配したと思っているの!!」って母親に泣きつかれる始末だっだしな。
でも言っていないんだよ、俺の能力とそれによって知ったもの・・・「自分が死ぬ」ということを・・・。
本当は今すぐにでも言ってやりたい・・・「ごめん」という言葉と共に・・・・。だけど言えなかったんだ、どうしても・・・。
よくよく考えてみたら、俺の死ぬ瞬間は夕暮れ時でしかも私服だった・・・。
つまり、学校に行ってもさして問題はないということだ。そういうわけで、俺はサッサと朝の支度を済ませ、学校へと向かった。
当然ながら学校では先生方からのきついおしかりを受けた・・・まあ、仕方がないんだけど。が、その後自分の教室へと入った瞬間、俺は違和感を覚えた。
俊彦の姿が見あたらなかった。あいつが学校を休むところを見たことがなかった。じきにHRが始まり、授業が開始された・・。
その日も何事もなく授業が終わり、下校の時間となった。俺は感慨深い気持ちを伴い教室を出て、校門をくぐり抜けた。まるで一人だけ、卒業式の気分に浸っているような・・・・。
俺を叱咤激励してくれた先生、共に色んな時間を共有したクラスメイト。向こうは考えてもいないだろう、二度と会えないということを・・・。
その後俺は真っ直ぐと家に帰り、余生とも言えるわずかな時間をゆったりと過ごしていた。もしかしたら家を出なければ死なないという、浅はかな希望と共に・・・。
だが、俺の運命は決まっていた。
ある一本の電話。それが、俺の命の最後を告げるものだった。
電話の相手は俊彦の母。話によると、あいつが交通事故に遭ったそうだ。
さらに、俊彦は今日、無断で学校を休み家を出ていたそうだ。どうやら、俺の話を聞いて町で呼びかけをしていたらしい。
「車で町を出ないで下さい」というために。
俊彦らしいとこんな状況ながら笑ってしまう。でも、笑っていられる状況ではなかった。
実を言うと、俺と俊彦には一つ共通点があった。それは、何千人から一万人くらいのうちに一人しかいないと言われるボンベイ型という血液型。
そして今、あいつの出血がひどいそうだ。
町の中には俺を含めてほんの数名しかいない、他に同じ血液型が見つかるとは到底思えない。普段の俺なら、取る行動はただ一つ、今すぐに病院にいくことだった。
だが俺は渋った。もし、家を出れば死がほぼ確定する。だが、家にいれば俺はこのまま生きていけるかもしれない。
だけど、本当にそれでいいのか?いつからそんな卑怯な人間になったんだ?あいつを殺してまで俺は生きるべき人間なのか?今までの人生、いい加減に生きてきたの明白だ。だけど、俊彦は違う。日々を楽しく一生懸命生きてきたあいつとは・・・・。
自問自答の末、俺は結論を出した。病院に行くという結論を・・・。それが自分にとって一番良かったとは思えない。
だけど俺はあいつのことを見捨てることなどできなかった。俺のことをどうにかしようとしたあいつを・・・たとえやっていたことがいかにバカバカしくとも・・・。
数十分後、交差点で青信号を渡ろうとした男子高校生が信号無視の車に轢かれた・・。
そして、彼の服のポケットの中からはある1枚の紙が発見された。
そこにはわずか一行の文が残されていた。
「俺はボンベイ型だ、俺の血を天津 俊彦というやつに使ってくれ」
という意志を残して。
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