マリィのつぶやき

2006年02月28日
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カテゴリ: 日記
若い頃(私にも若い頃があった)

きっともうその店はないのでいうけど「レストラン京子」という地下1階の店だ。

ビルの名前も覚えてはいないが道路からその店にだけ降りる階段があって、その階段のところに一見客が入らないように「会員制」という小さな札が下がっていた。
何のことはない、飲み屋だった。

ママは本郷に住んでいてママのお母さんは新潟の出、そのころ70代だった。
そのお母さんが昼間いろいろなお惣菜を作っておいてくれる。
しかしなかなかおいしくて、ただの田舎のばあさんの作ったおかずという趣は少なくかなり洗練されていた。
しかしおふくろの味的雰囲気がいやがおうにも漂っていて、それがきっと魅力だったのではないかと思った。



「レストラン」というだけあって、その前は板前を抱えていたのだそうだ。
スペシャリテは豚ロースのソテーで、それはママが焼いていた。

大きな本格的なフライパンで焼く、ワインを振り掛ける、そして醤油。
これがうまいのだ。
ご飯もちゃんとあった。



ふとした縁でその店に厄介になったのだが、、、なにせ飲み屋と酔っ払いが嫌い。良く勤まったものだ。

私は化粧もせず(長い髪を飲食店だという自分の一存で縛って)入り口のドアの真正面のカウンターに立っていた。

ドアが開く・・・その前にガラス越しにお客の顔がみえる。
(あっ、○○さんだ!)
(ううっ、△△さんだ、、、)
お客の好き嫌いで顔が変わってしまう私をママはいつも笑っていた。


お客は近くの丸紅の社員が多かった。
そのほかも名の知られている企業の社員が多かった。
大学の先生もいた。

私は何でもやった。うるめをあぶる、たたみいわしをあぶる。
たたみいわしなんてこの店ではじめて見た。


お燗もつけた。
日本酒は剣菱と越の寒梅。
やはり出身が新潟なので手に入れやすかったらしい。
普通は剣菱をだしていたが寒梅もそれなりに出ていた。

お燗はアルミの雪平で直接加熱した。
だいたいのところで徳利にいれてだす。


基本的にママと私とほかのバイトで2人か3人で回していたので小さい店だったが混むとそれなりに忙しい。

そんなとき寒梅のお燗をした。

ふと気がつくとなべから薄紫色の炎がゆらいでいる・・・
加熱しすぎてアルコールが燃えているのだ。

あっちゃ~やべー

ビンから少し注ぎ足し温度を下げて何食わぬ顔で徳利に入れて出した。

内心はマッツァオだった・・・


「・・・う~ん、寒梅はうまいね~マリィちゃん、お燗上手だね」
お客がそういった。

それを聞いて私は非常に複雑な気持ちになった。
そのときの自分の顔を自分でも見てみたいものだ。


きっと今度は気をつけよう!と思った、しかし剣菱も寒梅もそれぞれ2回ほどは燃やした・・・



そこでは 小沢昭一のラジオ番組「明日の心だ~」 をよく聞いた。
テープがあって小椋桂を良くかけていた、きっとママが好きだったのだろう。

お客のリクエストにも応じた。

ママ、あれかけて、という70代の客がいた。
あれとは軍歌だった・・
私には信じられなかったが別にほかの客は気にもしていないようだった。
その客には気に入られた。
初恋の人に似てるといわれて手を長い間握られたりした。

その間はお燗も付けられなかったけど・・・

でもママとお客さんにはとてもかわいがられた。
今考えると・・・ありがたいことだ。
今、京子ママはどうしているだろう・・・







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最終更新日  2006年02月28日 09時12分16秒
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