藍夢わ~るど ~育児・ハンドメイド~

藍夢わ~るど ~育児・ハンドメイド~

ともくんの夢


藍夢の夢は…なんだったかな…小さい頃の夢って特別なかったような気がする。
ともくんは、いつだって、お絵描きするのは、船の絵だったよね…。
いつだって、どこだって、ともくんが描くものには、海や船があった。
そして、白いキャンパスに、こと細かに描かれていくのを、私は隣りでみていた。
ともくんは、親の仕事が、船屋だったせいもあって、後継ぎとして期待されていたし、
ともくん自身も、船屋の父親の仕事を継ぐものだと思っていたよね?
大好きな船に乗ったり、大好きな船の仕事をする。
きっと、小さい頃から、とも君が描いていた夢には、父親と仕事する自分自身の姿があったのだと思う。
いつだって、ともくんはお父さんの後ろをついてまわっては、仕事の様子をうかがっていたし、
父親好きのともくんにとって、お父さんは大好きな人であり憧れの人だったに違いない。

ともくん…あなたは、いつだって、どんな時も夢を捨てなかったね。
自分の描いていた夢が、親の都合で崩れそうな時も
ずーっと、ずーっと、船の絵を書きつづけた。
上級生になって、版画や彫刻の時間になっても、デッサンする絵には、船があった。
中学で作った筆箱入れも、丁寧に彫られたヨットの絵が書いてあったの、あたし、知ってるよ。
いつだって、君の中には、船があった。
きっと、そんな君のひたむきな姿は、お母さんにとっては夢を奪ってしまったようで、胸が痛いことだったのではないかって、今ではそういうふうにも思える。
 私は、とも君がいなくなった後、しばらく、とも君が作った筆箱入れを使わせてもらった。
とてもせつないほど、その筆箱にはとも君の夢が込められていた。
そして、その筆箱が、当時の私にはとても愛しくてならなかったし、その筆箱は、私のお守りとなった。

ともくんの夢は、船屋さん。それも、きっと、お父さんと2人で働く船屋さん。
お父さんは言っていたよ。
「将来は、ともみに継いでほしかった。」って…。
2人で工場で働くのが夢だったって…
良かったね、お兄ちゃん…。
あまり良い父親ではないけれど、お兄ちゃんのこと、ちゃんと思っていたみたいだよ。
今では、後継ぎもいないから、今後はどうなるかわからないけど、
後継ぎがいないからこそ、お兄ちゃんの存在は、そこにあって、誰にもお兄ちゃんのポジションは取られないようだよ。
良かったね、お兄ちゃん…。
次に、生まれてくる時には、船屋になれると良いね。
ね、お兄ちゃん…。


執筆日:01/12/28


© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: