2010年05月11日
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新版歌祭文(野崎村の段・油屋の段・蔵場の段)

歌舞伎で野崎村の段は何回か観ましたが、文楽では初めて。もちろん油屋の段・蔵場の段も。おみつが尼になってまで 添わせようとした(諦めようとした)お染・久松は結局死んでしまうのだということは知ってはいましたが、まさかこんな死にかただったとは・・・の蔵の段でした。

住大夫の語る浄瑠璃はいつ聴いても 知らぬ間に感情移入してしまって涙腺が刺激されるのですよね。他の大夫では起こらない現象なのです(先日の教育TVの文楽入門でも 「沼津」のほんの短い語りでも うわっときました)

簑助おみつのかわいらしさ。鏡をのぞく浮き立つ気持ちや お染に対するいけずな態度とか思わず笑みを浮かべてしまいます。おみつにだけスポットライトが当たっているか 3Dで迫ってくるような簑助マジックも健在でした。そこにいるのは人形でなく 息づている生身のおみつにしかみえないんですよねぇ・・・ 人形のちょっとした角度からくるものなのでしょうか。

最初こそおずおずしているものの 久松会いたさ一途でやってくる紋壽お染。大店のお嬢さんらしく 久松は私のものよ というお光とのさや当てが誇張されててつい笑ってしまうほど。清十郎久松は どっちにも好かれて困ったなぁ というたよりなさ・・・

決意して髪をおろして尼になったおみつ。もう余命いくばくもないおみつの母が「やれ祝言」とそれをたよりに生きながらえていたのに目が見えなくなった体で花嫁御料と信じていたおみつが髪をおろしたと知った時の嘆きに こちらも一緒に泣きました号泣 歌舞伎でおみつの母ってでてきましたっけ?どうも記憶が頼りないです
駕籠と船に別れて去っていく久松とお染を見送った後 歌舞伎ではぴんと張っていた気持ちが一気にほどけて 「どうしょうぞいなぁ」と父の足元に崩れ折れ、「もっともじゃ」と涙ながらに久作もおみつを・・・とおみつに感情移入してどっと涙があふれ出るところなのですが 文楽ではあっさり 船の船頭と駕籠かきのチャリ場へ。

おみつと久作の想いがほとばしる幕切れが好きなので あらあら文楽では情緒がないなぁと思ってしまったのですが、おみつの母の嘆きに加えてここでもとなるとあまりに重くなる心をチャリ場で気分転換させておくんだと江戸時代の工夫の面白さを感じました。
やりきれなくなっちゃうもんなぁ。
そして みどりとして歌舞伎では幕切れをあの演出にして余韻を残したんだと納得しました。

油屋の段では 勘十郎小助の悪だくみをしかけている場面での小面憎さ、それがばれそうになる(結局ばれるのだが)場面でのあわてふためきっぷりにたっぷり笑わせてもらいました。

蔵場の段 
おなかの子供をおろして他家に嫁げというお勝(お染の母)にびっくり仰天。
早く離縁されれば後に久松とそえる・・・? それではとなる話の展開も凄い
探し求めていた刀が偽物だったことで死を決意した久松が、お染にいとまごいをしにきて蔵の中にとじこめられてしまいます。一方、同じく死を決意してお染も蔵の前の井戸に。
アッと思う間もなく 久松は首をくくって お染は井戸に身を投げてしまいました。
本物の刀をさがしあてた勘六が久松の亡骸を抱いて嘆く下手と お染の死を嘆くお勝が上手で幕。

 周りの人たちはなんとかしようと奔走して ようやくなんとかなりそうだというほんのちょっと手前で心中してしまうお染と久松・・・

住大夫さんに「おおあたり」の声がかかったのですが、なぜか私はもやもやしたものを抱え込んでしまいました。もちろん大夫の語りは素晴らしかったのですが。
後日 大向こうのサイトの文章で なぜそう感じたのかがわかりました

 幸四郎の○千回記念公演の「勧進帳」 客席が最高に湧き上がっている最後の最後、花道の引っ込みでかかった声に雰囲気が一層盛り上がった。立ち見席まで超満員というようなお芝居にもっともふさわしい掛け声で ウワーと湧き上がった拍手の中に聞こえる「大当たり!」は華やかでいいもの。

別のサイトではすごく良かったことを伝えたいときに掛けるとしたうえで
期待を背負った役者が期待以上のものをみせてくれた「あなたの当たり役になりましたね」という例で 海老蔵初役時の「助六」先代ゆかりの狂言を当代が立派に勤めあげたという例で 勘三郎の「俊寛」があげてありました。
当代の俊寛には気持ちの強さがあるので「俊寛」にはぎりぎり掛けられるけれど、芝居の雰囲気を壊してしまうので「籠釣瓶」には掛けられないとも。

文楽と歌舞伎では 歌舞伎を観ている回数が断然多いので 聞きなれている歌舞伎の大向こうの基準(?)といったものがいつのまにか自分の中にとりこまれていたんだなぁと感じました。おみつの自己犠牲をかわいそうだ、辛いよねと沈んだ気分でいるから 高揚した気分で聞くことが多い「おおあたり」はなんか自分の中でそぐわなかったんだと。

団子売
おめでたづくしの景事。人形も踊るように操ると筋書きにあるように 踊りでした
その分 動きがかくかくしていて いかにも人形を操っているという感じでした。
悲劇のあとには 肩の凝らない軽い出しものでよかったんじゃないかと思います。






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最終更新日  2010年06月04日 01時11分24秒
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