恋涙 ~ renrui ~

恋涙 ~ renrui ~

前世の追憶参



詠んでおりました、簾の前に人影が過ぎり私は怪訝な表情を浮かべ

『お帰りください、貴方に御逢いしたくはありません』

まるでその人影に心辺りがあるよう告げた同時に

簾は乱暴に開け放たれ私は男に押し倒されるように

躰を押し付けられた。

『嫌っ・・・』声を上げようとするも強引に口を割られ舌をすべり

込ませ絡ませられる、何度も何度もその舌はまるで蛇のように

絡みつき感覚を鈍らせる。

銀色の糸と共に離された唇を噛締め男を睨みつける、

『中将様、貴方がなさることは万死に値します』

切れ切れに言葉を紡ぐ私を見下ろし『笑止、欲した姫を奪われるぐらいなら』

そう言うと同時に横たわる私の着物に手をかけ太腿に手を滑り込ませる男

私は言葉を発そうとすると同時に触れられ言葉を飲み込んでしまった

嫌なのに気持ち悪いのに先ほどの口付けで感覚が鋭くなった私の躰は

男の愛撫に反応してしまう・・・気持ちとはうらはらな躰に悔し涙が頬をつたう

機械音が鳴り私は目を覚ます、可笑しな夢のせいで躰は寝汗を掻いている

月光に照らされた男の顔は、先刻見たあの男だった。

私の躰はブルっと小さく身震いをする・・・私はあの男に汚されたのかもしれない

幻想(ゆめ)なのに何故か心が泣いていて確信めいた何かが

私を責め立てた・・・私の手に雫が落ち頬に触れると涙が溢れていた

『幻想(ゆめ)なのに・・』

静まり返った部屋に風に揺らめくカーテンの音と声が響いた

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