SHINOBI.帝国-おむらいすの里

第二部 第16話~第19話


あっという間にバジュラとヴァルキリアスは
追い込まれていった。このままじゃ負ける。
誰もがそう思っていた。しかし朝日にまぎれて、
クリーチャーと思われる影が見えた。それはまさしく
不死鳥・エターナルフェニックスだった。
エターナル・フェニックスの後押しによって、神は押されていった。
しかし神がこの程度で終わるわけがない。へビィ・メタルは最後の力を
振り絞り、封印術を使ったのだ。まばゆい光とともに、両軍は
石になった。エターナルフェニックスの姿は見当たらない。何とか
終戦となった。この世界は救われた。しかし偉大な存在だった竜が
いなくなったため、この世は乱れ、やがて戦争が始まった。
あのときバジュラたちが必死に守った意味はあったのだろうか。
戦争が続けば、おそらくこの世界は崩壊するであろう。
神が舞い降りたのは戦争への警告だったのかもしれない。
しかし竜たちは己の力と血を二人の小さな勇者に授けた。
彼らがきっとこの世の乱れを防いでくれるはずだ。

「以上だ。」

マグマハンマーは本を閉じた。

「・・・。」

ピコラは無言だった。

「どうした?自分の真実に驚いてアゴでも外れたか?」
「・・・ちがう。」

ピコラがそっとつぶやいた。

「ん?何が違うんだ?」

マグマハンマーは理解できなかったようだ。

「神はやっぱりこの世をまとめ、平和にさせるための
存在だったんだ!破壊と殺戮を行うはずがない!あいつらは
自分自身の圧倒的な力を他のやつらのために使うのはもったいない、
自分たちがこの世界の頂点に立つべきの存在だと思ってるんだ!
だから・・・!だから俺たちがやつらに本来の目的を思い出させる!」

マグマハンマーは軽く笑った。


ピーカプが帰ってきてからもう一週間も過ぎた。
いまだに神は動いていない。しかしこの日、
地獄が始まろうとしていた・・・。

「今日もいい朝だ。」

マグマハンマーは朝日を眺めていた。

「しかしなんか妙だ。嫌な予感がする・・・。」

その予感は見事に当たることとなる。朝9時。
ほとんどの超獣たちは起きている。いつもと変わらない
朝を送っていた。そう、誰もがいつもと変わらない日だと
思っていた。しかしこれからこの場は地獄に変わるのだ・・・。
ズウンという音と共に地震が起こった。しかもかなり揺れが大きい。
そして太陽のほうから影が見えた。まぎれもなくそれは神の姿だった。
緊急集合令が発令し、すぐに軍が出動した。

「フハハハハ!いいか!お前たちは歴史に刻まれる瞬間にいられるのだ!喜べ!」
メタルは高らかに笑った。

「ククク・・・。さすがに俺も笑わずにはいられん。
フ・・・フハハ・・・フハハハハ!」

へビィも笑い始めた。そのとき、キングがへビィ・デス・メタルの前に立った。

「へビィ様。メタル様。そしてデス様。
神が何故存在するか、おわかりでしょうか?」
「ん?どういうことだ?」

さすがのへビィもこれはわからなかった。

「神はこの世の乱れを防ぎ、この世界をまとめ
ていく者。つまり平和の象徴なのです。クィーンが
何故わざわざデスの生贄となったかわかりますか?
それはこれから起こる災害をあなた方が防ぎ、
この世を平和へと導いてくれると思っていたからです。」

そのとき。二つの衛星が黒く染まり、時空がゆがみ始めた。

「何をした!?」

アルカディアスが問い掛けた。

「ククク。俺が仕掛けた罠によって衛星は汚染され、時空をゆがませた。」

そう。一昨日へビィはこの星の二つの衛星に
罠を仕掛け、時空がゆがむようにしたのだ。

「時空をゆがませて何をする!」

今度はピコラが問い掛けた。

「時空をゆがませることによって、この世界の
生き物を全滅させ俺たちが新しい世界を創る。
そしてこの世を完璧な神の世界にするのだ!」

へビィは高らかに笑った。

「そんなこと絶対にさせねぇ!俺がお前たちを止める!そしてこの世界を救う!」

ピーカプが叫んだ。

「貴様に何ができると言うのだ?」

へビィは軽く笑った。


「ゆくぞ皆の者!」

牙がそう言うとたくさんのクリーチャーが神に立ち向かっていった。

「無駄だ。貴様らが私たちにかなうわけないのだ!」

デスがへビィとつながっている目から光線を出した。

「うおっ!?」

かろうじて避けられたがあたったら確実に蒸発していた。

「うおおおお!」

ふと見るとピーカプがデスに向かっていっている。

「あの馬鹿!あれほど向きになるなと言ったのに!」

ヴァルボーグはピーカプを止めようとした。しかし間に合わなかった。

「クックの仇だァァァァァ!!」

ピーカプは無心に剣を振り回した。

「フン。その程度か?」

へビィはピーカプをあざ笑いながら叩き落とした。

「ぐうっ!!」

ピーカプは動けなくなった。

「ケッ、バジュラの子孫がこの程度だったとはな。ガッカリだ。」

そう言うとデスはピーカプを踏み潰そうとした。
しかしピコラがピーカプを抱えて避けた。

「馬鹿野郎!あれほどヴァルボーグさんから忠告を受けていただろ!
たしかに悔しいのはわかる。でもお前が死んだら元も子もないんだぞ!」

ピコラはピーカプに怒鳴った。

「・・・すまん。」
ピーカプは反省したようだ。
へビィはピコラを見てこう言った。

「貴様、ヴァルキリアスの子孫だな。」

なんとへビィはたった一度ピコラの動きを見ただけで
ヴァルキリアスの子孫と判別できたのだ。

「だったら何だ?」

ピコラは少し喧嘩腰で言った。

「貴様を抹殺する!」

へビィはデスとつながっている目から光線を出した。
なんとか避けることはできたが少しかすってしまったようだ。

「ぐう・・・。」

ピコラは痛がっていた。少しかすっただけでものすごい火傷を負った。

「大丈夫か!?」

ピーカプがピコラに寄った。そのとき。

「クハハハハ!死ぬがよい!」

デスが光線を撃ってきた。

「なっ・・・!」

さすがに避けきれない。このままでは死ぬ。そのときだった。

「お前は生きろ。世界を救え。」

ピコラがピーカプを思いっきり突き飛ばした。
ピコラのおかげでピーカプは光線に撃たれずに
済んだがピコラはまともに受けてしまった。ピコラの姿はなかった。

「ピコラ・・・。」

ピコラはピーカプをかばって死んだのだ。

「馬鹿野郎。俺なんかのために死にやがって・・・!」

ピーカプは立ち上がった。

「お前ら!お前らは俺の大切な親友を
2人も奪った!絶対に、絶対にゆるさねぇ!」

ピーカプはほおに一筋の涙を浮べていた。


「もう一度言おう。貴様ごときに何ができる。」

へビィは軽く笑った。

「俺がお前をぶっ潰す!そうすればすべてが終わるんだ!」

ピーカプは拳をぐっと握り締めた。

「ピーカプ、お前だけにいい格好はさせねぇ。俺も戦うぜ!」

ドライブが一歩前に出た。

「俺たちも続くぞ!」

ヴァルボーグが号令をかけ、みんながそれに
答えた。この光景にへビィはひるんだ。

「どうです、へビィ様。世界を救うためすべてのクリーチャーが
一致団結し、我々に立ち向かってくる・・・。これは
本来あってはいけない光景なのです。神はこの世を平和に導くもの。
それがどうして理解できないんですか?」

キングはもう一度へビィ・デス・メタルを説得した。

「うるさい!我々の力を、この程度の下級種族に使うのは
もったいないのだ!この力で世界を支配せずにいられるかっ!」

その後へビィはキングを地面にたたきつけた。

「私は死ぬわけにはいきません・・・。クィーンが
私にこの役目を残した限り、あなた方がわかってくれるまで、
死ぬわけにはいかないのです!」

へビィがイラつき始めた。

「ぐぅぅぅ・・・!貴様、我らには向かう
というのか!よろしい!処罰を下してやる!メタル!」

「ヒャハハハハ!待ってました!」

へビィがそう言った瞬間、メタルとデスを結ぶ目から光線が撃たれた。

「キング!」

ピーカプが叫んだ。しかしキングは動けなかった。

「ぐ・・・。私もここまでか。すまない、クィーン・・・。」

キングは完璧にあきらめきっていた。そのとき。
メタルが放った光線が何者かにはじかれたのだ。

「な、何が起こったというのだ・・・?」

キングは、クリーチャーたちは、ただまばゆい光を
前に呆然としていた。その光は鳥の形をしていた。

「まさか本当にあいつがやつ自身だったとはな・・・!」

マグマハンマーはつぶやいた。

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