バル対策本部元帥の間

三章　私から君に狂喜ヲ　FINAL

俺の中の悪魔を・・・

「天使は・・・チェイサーみたく甘っちょろくないですよ・・・ｸｸｸ」

「また倒されでもしたら、リアルで生きてる保障なんて」

「ありませんよ、絶対に・・・ｸｸｸ」

三章　私から君に狂喜ヲ　FINAL　

天使の存在

狂鬼が語った、最も脅威なる存在

己の悪魔と同等の力を持ち

倒されれば生きる術なし

「今の段階で、あなたはまだGMの脅威にはなっていません」

「ですから、今は手を下さず、あなたを観察しているのです」

「天使は、我々の悪魔と同じ存在です」

「ですが、13体の天使の内半分以上がGMの手で捕獲されています」

13体の天使・・・

俺は天使という存在を見たことが無い

でも・・・チェイサーが蔓延るこの世界での

GMの切り札的存在である事は分かった

狂鬼の口調も真剣なものへと変わっていった

「大雑把に天使や悪魔といっても何のことか分からないでしょう」

「彼らは元々空っぽの器・・・」

「形だけで中身の無い存在でしたが」

「チェイサーがそれに憑依し」

「ここからが私の分からない所ですが・・・」

「空っぽであるはずの器がチェイサーを乗っ取り」

「自ら動く術を得た・・・・」

動く術を得た・・・

それで、天使と悪魔は逃げ出したという事か・・・

そして俺らに憑依した・・・

・・・ちょっと待て

「13体って悪魔も天使も13体居るって事だよな・・・」

「合わせて26体・・・ってことはこの力を持ってるのは26名」

「俺と狂鬼を除いても24名・・・」

「敵か味方か分からない奴が24名も居るっことか！？」

狂鬼は目を細め、低い声でこう言った

「まだ、PCに憑依できずに居る天使が居ます」

「GMが所持している天使は8体」

「天使は一般PCには憑依できないので」

「所持している人物はかならずGMの誰か」

「もしくはGMから与えられる事でしか天使を所持できません」

それが、悪魔と天使の違い・・・

悪魔は放浪し、見定めた相手に憑依するのか・・・

狂鬼はニコリと笑い、俺に悪魔の武器を見せた

「あなたが完全に悪魔に染まれば」

「天使達は容赦なく、あなたを狩りに来るでしょう」

「あなたは、あなたの中の悪魔で戦いなさい」

「Devil weapon、この武器を振るい」

「あらゆる敵を薙ぎ倒しなさい・・・ｸｸｸ」

あらゆる敵を・・・薙ぎ倒す・・・

狂鬼の話は、俺の考えていた以上だった

狙われる立場というのは

これほどの不安と恐怖を生み出すものなのか

俺は、こうしている今でも

誰かに観察されている・・・

狂鬼は気にせずベラベラ喋っているが

狂鬼も狙われる立場で有る事は間違いない

俺は狂鬼に聞いた

「狂鬼・・・お前も、天使に狙われてるんだろ・・・」

「こんな一般フィールドで話してて良いのか・・・」

「俺が観察されているってことは・・・」

「お前がここに居るってことが知れる」

「大丈夫なのか・・・わざわざ俺にこんな詳しい事教えて」

狂鬼は気にするそぶりも見せず

俺にこう言った

「彼らの事はすべて把握済みです」

「PC名やプレイヤーまでもね・・・ｸｸｸ」

「もちろん、襲撃された事もありますよ」

「人数は3人ほどでしたか・・・まぁ大したことは有りませんでしたが」

勝ったのか・・・天使3体と・・・

いや、退けただけだろう・・・

むしろ、狂鬼は何故生き残れた・・・

「お前・・・3人も相手して大丈夫だったのか？」

「天使も悪魔も同等の力を持ってるんだろ？」

「なんで無事だったんだ・・・」

この質問も、狂鬼は澄まし顔で聞き

ゆっくりとした口調でこう言った

「良いですか？いくら力を持っていたとしても」

「相手を殺る気にならなければ、脅威ではありません」

「中途半端な仕事という感情で私を殺せると思ったのでしょうか」

「 1人残らずバラバラにしてやりましたよ・・・ｸｸｸ」

狂鬼が言い終えた瞬間、狂鬼の顔が悪魔のように見えた

殺したのか・・・

なら天使は・・・？

「その・・・そいつらを殺したってことは、天使は？」

「始末・・・したのか？」

俺は当然、始末したのだと思っていた

脅威となる存在を放って置くとは思わなかった

「いいえ」

「襲撃者以外のGMは、モニターを見ながらこう思ったのでしょう」

「【勝てない】と」

「他のGMは3人の戦闘途中、PCから天使を強制サルベージしたんですよ」

「 天使を失わない代わりに、仲間を見捨てたんですよ・・・ｸｸｸ 」

仲間を見捨てただと！！？

そんなに天使が大事なのか・・・

人の命よりも大切なのか！！？

「GMは、追い込まれて居ます」

「この世界にチェイサーをばら撒いてしまい」

「悪魔と天使を生み出し」

「その影響で死者も出ている」

「 GMにはもう余裕は無いんですよ 」

「この事態を収める手立ても見つかっては居ないでしょうし」

「最後の切り札である天使を失うことは絶対に避けなければいけない」

だからって・・・

人は駒じゃ無いんだぞ・・・

これが目的のための犠牲だと・・・

狂ってやがる

「さて、そろそろ話は御仕舞いにしましょう」

「私も、いつまでもここに留まって居るわけにはいかないんです」

チェイサーが寄ってくるからか・・・

相変わらず余裕がありそうな口調だが

俺もここに留まってるのは流石にまずいんだろうな

「あ、最後に一言あなたに言っておきますね」

「 オトモダチにはご注意を 」

そう言うと、狂鬼は笑いながらログアウトした

俺は、この狂鬼の最後の一言を

いずれ身を持って、知る事になる

三章　私から君に狂喜ヲ　FINAL　完

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