am5:36

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「家族だんらん」


「家族だんらん」

母 「ハルミ、そろそろ夕飯にするわよ」
ハルミ「はーいママ、今日の夕食は何?」
母 「肉じゃがと生姜焼き定職よ」
ハルミ「定食?ならば肉じゃがは定食に入るんじゃないの?」
母 「何いってるの!肉じゃがは肉が入ってるじゃないの。だから定食じゃないのよ。」
ハルミ「でも生姜焼きは肉じゃないの?」
母 「生姜焼きは、生姜がメインで肉は一口位しか入ってないから定食なのよ。」
ハルミ「でも少しでも肉は入ってるんじゃないか!」
母 「ほら、見てごらんなさいよ。ここのどこに肉が見えるのよ。」
ハルミ「肉入ってないじゃん!しかもなんで定食用のプレートにのせてんだよ。定食のくせに生姜焼きしか皿にのってないよ。」
母 「まあ口答えの多い子ねえ。誰に似たのかしら。」
ハルミ「もういいよ。こんなんだから、ミチコちゃんに家のエンゲル係数の事心配されるんだよ!!」
母 「まあ、ミチコって誰よ?同級生でそんな名前の子はいないじゃない!」
ハルミ「合コンで知り合った子だよ。」
母 「あなたまだ小学生じゃない!合同コンパしてるんじゃないわよ。」
ハルミ「合同コンパじゃなくて合同コントだよ!そこはナイーブな部分なんだ!間違えないでくれよ!」
父 「なんですかなんですか、二人ともそんなに大声あげて。また隣の貴婦人が家の夕食狙って遊びに来るではありませんか。」
母 「聞いてくださいよ。ハルミったら、今日はやけに反抗的なの。」
ハルミ「パパ、なんで僕はハルミなんだよ。女みたいでイヤだよ。」
父 「そんなこと言われましても・・・当方としましてももうワタクシの母親が決めておりまして・・・。」
母 「あなた、家では敬語は禁止だって一週間前に決めたじゃありませんか。」
父 「ああ、そうでした。ところで、夕食の方が冷めてしまいますよ。」
母 「その事でもめていたのよ。ハルミったら、私の作った夕食にケチをつけるのよ。」
ハルミ「ママ訳わかんないよ。肉じゃがが定食に入らないというんだ。しかも生姜焼き定食には肉が見当たらないんだ。」
父 「おかあさん、その前にご飯がありませんよ。」
母 「あらやだ。定食にどうやって肉を入れないか考えていたら、すっかり忘れてしまっていたわ。」
父 「そもそも定食に肉は禁止という決め事はございませんよ。しかも、肉じゃがが定食に含まれているところをワタクシ、見掛けた事がございます。」
母 「そうなの!?私ったら隣の貴婦人にそう教え込まれて十二年も頑張ってきたのに・・・。」
父 「だからプレートに肉がのったことがなかったんですね。ああ、それとご飯は安心して下さい。なんせ十二年間で一度もご飯をたいているおかあさんの姿を見たことがございませんから、私が今日もオリ○ン弁当で白米を買って参りました。」
母 「ごめんなさい、そそっかしくて・・・。」
ハルミ「そそっかしくて、十二年もご飯炊いてない?」
父 「まあとにかくまずは席につこうではありませんか。」
母 「ごめんなさいね・・・。でも今日はすごいの。見たこともない移動販売車が来てね、破格の値段で買えたから、肉じゃがの肉はたっぷり入ってるわよ。」
ハルミ「でも母さん、これって牛肉じゃない?」
母 「だから何よ。」
ハルミ「狂牛病はやってんじゃん!ヤバいよこれ。」
父 「安かったってことで、よしとしましょう。」
ハルミ「安いからヤバいんだよ!もういいよ!」
母 「どこにいくの!ハルミ!?」
ハルミ「本当は今日合コンがあったんだよ!オレはそっちに行くよ!」
母 「ハルミ!」
父 「ハルミも、大きくなったんですねえ。」
母 「何言ってるのよ。・・・もう、お父さんったら、甘いんだから。」
父 「コンパでしょう?私は今度いつ行こうか考えているところですよ。」
母 「コンパじゃなくてコントなんですよ。今の時代は。あなた、チョット、コンパに行ってらっしゃるの?聞いてないわよ!」
父 「ああ、まあ私は若人の仕切り役なんでして、自分で楽しんだことなんて、一度もございませんよ。」
母 「それならばいいけど・・・。あなた、敬語、直らないみたいね。」
父 「そのようですね。もしよろしければ続けさせていただくことは出来ませんでしょうか?」
母 「十二年間そうだったんですものね・・・仕方がないわ。」
父 「恐縮です。」
母 「・・・。」
父 「お母さん、食が進みませんね。」
母 「・・・あなた、一つ聞きたいことがあるの。」
父 「・・・。」
母 「十二年間心にしまってきた事、今言っていい?」
父 「・・・わかりました。私も覚悟を決めましょう。」
母 「・・・あなたの職業って、何?」
父 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
そして、今日も平穏なある家族の夜は更けていく。


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