東野圭吾
ミステリー
性同一性障害について。性同一性障害というのは例えば男性の心が女性になると単純に割り切れるものではなく、その心にグレーゾーンが多く存在するそうです。
テレビをみてもマツコ・デラックス、KABA.ちゃん、はるな愛、などやはり違いがありそうです。どのあたりが男性らしく女性らしいとあるのか、性別は男性で服装は男性のものを着ていて男性が好きなタイプなどあるようです。
男らしさとは、女らしさとは。本当の意味でのジェンダーフリーとは。私たちが思っている男らしさ、女らしさとは本来（自然）のものと即しているのでしょうか、後天的（もともとある価値観）に感じているものなのでしょうか。
また、同性愛者は犯罪もしていないのになぜ差別を受けなければならないのか。
難しい問題ですが一読して欲しい作品です。
100点
「手紙」
ドラマ
強盗殺人を犯してしまった本来心優しい兄。その弟の半生を綴っています。
よくある被害者側の人生ではなく。加害者側からの人生を描写しています。
兄の犯罪のためにどこに行っても成功を収めようとするとするりと逃げていってしまいます。
世の中からの差別にも苦しみます。
何も知らない刑務所にいる兄から毎月届く緊張感のない手紙が苛立たせます。
差別に憤りを感じることもありますが、その世の中が自分自身と重なるように書かれていて、「差別は当然と」主人公が勤めている会社の社長に言われるように、まったく偏見の目で見られないことも事実です。
差別に毅然と立ち向かおうとする主人公家族ですが、これを「甘え」だと社長に言われて弟のとった行動とは。
加害者とその家族、その周りに関わる人との人間模様がよく見えてくる作品です。
90点
「秘密」
交通事故で主人公の妻が亡くなるが生き残った娘に魂が移り、娘（１１歳）の体で妻が生きていくファンダジー。
夫は娘の体だけにセックスもできず、精神は妻のものだけに再婚も出来ません。
一方妻（娘の体だけに）のほうには男子学生が言い寄ってきて夫は気が気ではありません。
その辺がありえない設定にリアリティーを増していきます。
割と考えられる設定ですがその辺の心理描写が大変面白く、時に深刻に書かれています。
85点
「白夜行」
ミステリー
表面は品行方正の主人公雪穂。しかし実際は目的のためには手段を選ばない恐ろしい人物です。
それも後のつかないようにきれいに仕組む頭の良さと、どんなときにも動じない強靭な精神力を持っています。
その犯行が完璧すぎて美しく読むものを惹きつけてやみません。
100点
「幻夜」
ミステリー
白夜行の姉妹本。
相変わらず主人公の美冬の狂人的な精神力と悪運の強さには呻ってしまいます。
80点
「トキオ」
ファンタジー
主人公の亡くなった息子が未来からやってきて、青年時代の主人公を間違った方向に行かないよう導いていくファンタジー。
よくある話のようで話の筋が見えやすく、東野圭吾ファンとしては少し物足りなく感じました。
60点
「殺人の門」
殺人を起こしてしまうものの動機はどんなものなのか。
憎いという気持ちだけでは犯さない、その辺の理由が書かれています。
70点
「レイクサイド」
ミステリー
湖畔に集まったある３家族。主人公の愛人を殺したと告白する妻を全員が守ろうと隠蔽工作します。
その恐るべき理由とは。
50点
「分身」
サスペンス
クローンとして生まれた主人公が一人は札幌、一人は東京で過ごしあることをきっかけに数奇な運命に飲み込まれていくストーリー。
75点
「夜明けの街で」
ミステリー
不倫とミステリーとを一緒にした一見変り種の一作。ただ作品自体はそれほど異質に感じません。
主人公渡部は「不倫をする奴なんて馬鹿だと思っていた」と冒頭にあるように不倫に否定的で一般的な男性と言えます。
こう謳ってあるからこそ派遣社員で渡部の会社に入社した秋葉との関係は自ずと分かってしまうと思います。
渡部は浮気の定義を男女の関係を持ったらと言っていますが、私は恋人としかしないような行為をしたらもう浮気だと思うのですよね。
浮気が継続したら不倫。渡部の談ですが、浮気もいけないでしょう。
浮気をするのは男女の関係を持ちたいだけでなく恋人気分に浸りたいから。とありましたが、それはなるほどそんなものかと感じました。恋愛の感情はとめられないのでしょうか。
渡部はずるくて、卑怯で、弱くて格好つけたがり、こんなやつどうなってもいいと最終的に思ってしまいますが、本当にいやな奴で妻や愛人のことを簡単に見限る人物でもないのです。格好つける弱さでもあるのですが根底は優しいのです。東野作品は基本的に倫理観が漂っておりそれに反するものは格好いいと思わず、嫌悪感を抱くように作られています。
だから安心して作品を読めます。
さて、渡部の惚れた秋葉ですが、重大な秘密を握っています。とある目的実行のためにとられた秋葉の行動とは。
７0点
「悪意」
ミステリー
人気作家の日高邦彦が殺された。その動機等を求めて刑事加賀が第一発見者でもある野々口を疑います。
真実というのは一人（一方）から聞いてもなかなかたどり着かないものだと感じます。
８０点
「ダイイング・アイ」
ミステリー
雨村慎介は仕事帰りに何者かに頭を殴打され、瀕死の重傷を負ってしまいます。数日後、彼は意識を取り戻すがその中で重要な記憶の一部が欠落していることに気づきます。それは自らが運転していた車で死亡事故を起こしたということでした。彼は記憶を呼び起こそうとしますが、以前に自分が何をしようとしていたのかを思い出せないでいました。そして、彼の周りでは怪しい動きが。同居していた女の失踪、そして、謎の女の登場。
謎を大きくするために迫力をもって書かれていますが、それが読むものを期待させながら読ませます。ただその真実が少しがっかりでした。
ストーリーの構成はよく出来ています、読みやすいです。
７０点
「流星の絆」
両親を殺された兄弟は１４年後当時の目撃した人物と、父のハヤシライスと同じ味に出会い犯人を追い詰めていく。
６５点
「赤い指」
ミステリー
仕事場にいた前原昭夫に妻八重子から早く帰って欲しいと連絡が入ります。昭夫にとって家は居心地のいい場所ではありません。嫁姑問題、息子のいじめの問題、母の認知症介護の問題。
実は息子が少女を殺害していたのです。そのための隠蔽工作に取り掛かります。
少年問題が起きるとまず親の責任を問われます。私は親の責任がないとは言い切れませんが、中学生にもなれば本人の責任もあるように思います。
65点
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