太田誠
・前駒澤大監督の著書によれば、東都大学リーグの1・2部入替戦は、
特に1部(6位)チームの監督や選手にとって、相当な緊張感を伴うものらしい。
著書には、こう記してある。
「入れ替え戦には、いつの時代にも独特の雰囲気がある。ピーンと張りつめた
緊張感と切羽詰まった重苦しい空気である」
「二部に落としたら、OBにすまないし学校にすまない。そして何より神宮球場で
試合できなくなる選手たちに済まない。そんな思いが募ってきて、緊張感で足が
ガクガクになる」
(『球心、いまだ掴めず』(日刊スポーツ出版社刊)
■その1・2部入替戦1回戦が今日(11月7日)、神宮球場で行われた。
「足をガクガクさせる」
ほどの緊張感で臨んだのは強豪・青山学院大。今季、なぜか
1部リーグの最下位に転落。この試合の出場を余儀なくされた。応援席の学生
たちの数もまばら。
相対するのは古豪・国士舘大。久々の1部復帰を狙い、まさに意気軒昂。応援席も
試合開始前から大いに盛り上がる。席の両脇には「国士舘大学」と描かれた49本
のノボリが立ち、まさに「出陣」の様相。
最初に試合結果を言ってしまうと、応援席の雰囲気をそのままグラウンドに持ち
込んだ国士舘大がスコア5-4で逆転勝ち。1部復帰に向けて大きな1勝を挙げた。
■(1回戦、11月7日)
青 200 200 000 =4
国 120 000 02X =5
(青)垣ヶ原-●石井-川角、(国)○岩澤
国士舘大、勝利を決めたのは8回裏、二死走者なしから始まった3連打だった。
この試合途中出場の 大城亮
(2年、中部商高)がセンター前ヒットで出塁すると
続く6番・ 青山直樹
(3年、市立船橋高)がライト前にヒットを放ちチャンスを広げる。
ここで国士舘ベンチは勝負をかける。代打に 花島弘樹
(4年、成田高)が登場する。
そして初球だった。花島がフルスイングした打球は、快音を残してライト線へ転々。
2人の走者が生還する三塁打となって逆転に成功した。
国士舘ベンチからは選手たちが総出、生還した走者たちを迎え入れる。スタンドの応援席の盛り上がりも最高潮、勝利を確信したようなお祭り騒ぎだった。
打のヒーローが花島なら、投のヒーローは先発完投した 岩澤正登
(4年、立命館高)。
100~120km台の変化球を繰り出し、青学打線を翻弄した。187cmの長身ゆえ
本格派右腕の印象をもったが、さにあらず。直球も130km未満の投球でタイミング
を外し凡打の山を築いた。
■8回裏に逆転された直後、青学大の 河原井正雄
監督は投手交代を告げ、ベンチ
に戻りかけた。と、その時、 「河原井さん、まだ負けが決まったわけじゃないよ。頑張
れよー!」
と、年輩のOBから激励の大きな声が飛んだ。至近距離だったため、
たぶんその声は河原井さんの耳にも届いたはずだった。でも河原井さん、俯いたまま
帽子を深くかぶり直して、そのままベンチに消えた・・・。
結果こそ接戦だったものの、試合の「流れ」は終始、国士舘大にあった。ただ守備の
乱れがあって国士館が失点を重ねたに過ぎない。だから、青学大がリードした中盤以降でも青学大にはまるで余裕が見えず、遅かれ早かれ国士舘が逆転する雰囲気
が常にグラウンドを包んでいた。
太田氏がいう「緊張感」で、青学大の監督や選手が金縛りの状態に見える。
お隣りの神宮第二球場が、青学大のナインに向けて「いらっしゃい!」と手招きを
始めたか・・・?
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