■昨日(2月5日)見た『ズムサタ』(日テレ系)では、司会の 上重聡
(PL学園高-立教大)がレポーターとして日本ハムのキャンプを訪れていた。話題のルーキー・ 斎藤佑樹
(早稲田実-早稲田大)を追いかけ、斎藤に声をかけ返事をしてもらう度、ハシャいでみせていた。
その卑下するようなリアクションには多少の演出もあったろう。ただ上重だってPL学園時代は斎藤とほぼ同格の高校球界を代表する投手だった。(マウンド上の立ち姿や仕草、投球フォームは上重が尊敬する 桑田真澄
とソックリだったこともボクはよく憶えている)。
また立教大時代はヒジの故障に悩まされ、通算成績は30試合登板9勝3敗、防御率2.31と斎藤の成績には遠く及ばなかったものの、チームの主将を務め、 多田野数人
(現・日本ハム、八千代松陰高-立教大-インディアンス)らとともに活躍した。さらに2000年秋季リーグでは、史上2人目の完全試合を達成した記録保持者でもある(10月22日、対東京大2回戦)。
■上重聡。最もボクの記憶に残っているのは1998年夏の甲子園、準々決勝の対横浜高戦だ。追いつ追われつの好ゲーム、PL学園のエースだった上重は7回から登板し、延長17回まで投げ抜いた。結局、141球目に決勝打を浴び敗れ去ったものの、 松坂大輔
と互角に戦った上重の力投ぶりはファンに感動を与えたものだった。
またこの試合は 「松山商高vs三沢高の延長18回引き分け再試合(1969年夏・決勝)」
や 「早稲田実vs駒大苫小牧高の延長15回引分け再試合(2006年夏・決勝)」
と並び、甲子園の名勝負として後の世代に語り継がれている。
(1998年8月20日、延長17回)
横浜 000 220 010 010 000 1 2
=9
PL 030 100 100 010 000 10 =7
(横)○松坂、(P)稲田-●上重
■勝負が決まったのは延長17回だった。上重はたった2球で2人の打者を凡退させ、あっという間に2アウト。そして次打者は2球目を平凡なショートゴロに打ち取った。誰もがこの回の終了を確信した直後、ドラマが起きた。ショート・ 本橋伸一郎
の一塁への送球が高く逸れてしまったのだ。本橋の信じられないエラー・・・。
エラーが試合の「流れ」を変えることはよくある( 「星稜高vs箕島高の延長18回サヨナラゲーム(1979年夏・3回戦)」
はその代表例。ま、今日のブログでは触れないけど)。このPL対横浜戦も本橋のエラーが試合の「流れ」を微妙に変えた。詳細は書籍『ドキュメント・横浜vsPL学園』(アサヒグラフ特別取材班、朝日新聞社刊)に詳しいので、以下に一部を引用して紹介したい。
ツーアウトから、いないはずのランナーが一塁に生きた。
ここでまず第一の選択肢がある。守備側はタイムを取るべきだったか。ポンポンとリズムよくアウトを取っていって、エラーでランナーが出た。イヤな雰囲気がする。タイムを取り、三つ目のアウトを慎重に取りにいく考え方である。
PL学園のキャプテン、ライトを守っている平石は気配が変わったことを感じていた。平石はすぐさま右手にはめたグローブを水平に、左手をそのグローブの下に垂直につけるタイムの仕草をとって、一塁手・三垣を呼んだ。
「ミガキィッー、タイムや、タイムを取れぇ!」
だが歓声にかき消されて平石の声は内野まで届かない。
左のバッターボックスに常盤が入る。
ここで第二の選択肢がある。このバッターの初球に何を投げるべきか。状況は2アウトだから小細工はない。打席の中で常盤はバットを目一杯長くもっている。
PL学園の河野監督はこのとき指一本を立てて、
「カミシゲー! 初球だ、初球に気をつけろ」とベンチから叫んでいる。
上重も「最初は変化球でボールにしようか」と思いつつ、キャッチャー田中雅彦(2年生の控え捕手)のサインをのぞいてニヤッとした。サインは告げる。「ストレートをアウトコースに」。
「自分はこれまで左バッターに変化球を二度ホームランされているんです。だからマサ(田中雅彦)のサインを見た時、『あれ、コイツあのこと知ってんのかなぁ』と思ったんです」(上重)。
正捕手の石橋に代わって途中から出場した田中雅彦はサインの理由をこう説明する。「自分は一塁ランナーの柴さんが盗塁を仕掛けてくるかもしれないと思ったんですよ。だから二塁に速く送球しやすいように、アウトコースのまっすぐを要求したんです」
上重がゆっくりとモーションを起こし始める。ライトでは平石が叫んでいる。
「ミガキィー、タイムだ、タイム取れ」
ベンチでは河野監督が指を立てている。
「初球だ、初球に気をつけろ」
だが上重には田中昌彦のミットしか見えない。上重投手の141球目はアウトコースから内側に入った。無心で振り抜く常盤。
右中間スタンドへ、2ランホームラン。
ライトのキャプテン平石は、打球を二、三歩追いかけてやめた。「あぁ~」とため息とも叫びともつかない声をあげている。
スコアボードの横浜の17回に、重い「2」という数字が掲げられた。3アウトを取り守備からベンチに戻ったPL学園の選手たちにはもう泣いているものがいる。サードの古畑は、
「まだ2点や、まだまだ行けるッ」と声を出しながらボロボロ涙をこぼした。ショートの本橋はベンチで泣きながら「ごめんな、ごめんな」と誰彼なく謝っている。
河野監督が「泣くなっ、試合はまだ終わってへん!」としかり飛ばす。平石も「泣くなっ!」と怒る。上重だけが笑いながら、本橋のユニフォームの袖をつついた。
「おまえなに泣いてんねん?ホームランを打たれたのはオレで、おまえ関係ないやんけ」
(以上、『ドキュメント・横浜vsPL学園』)
※本文中の平石とは、現・楽天の 平石洋介
(PL学園高-同志社大-トヨタ)のこと。
■試合終了後には、アナの名実況があった。敗者であるはずの上重投手に笑顔があり、勝った側の 小山良男
(現・中日ブルペン捕手、横浜高-亜細亜大-JR東日本)が号泣するシーンもあり。その様子を見たNHK実況の石川アナは 「勝って泣く顔があります。負けて笑う顔があります」
と実況し、見ていたものの胸を熱くさせたという。(wikipediaより)
■YOU TUBEに「1998年夏準々決勝 横浜vsPL学園」の映像があります。
延長17回のシーンに興味ある方は こちら
をどうぞ。
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