ふたりで電車に乗るのは珍しい。
彼が指定席を買ってくれて、ゆったり座る。
「来てくれてありがとう。ごめんね」
そう言って、すぐ、手を繋いでくれた。
「ごめんね・・・忙しかったのに、朝から落ち着かなかったでしょう」
それだけ言うと、涙が出そうになった。
電車なので、小さい声で、なんとなく主語抜きで・・・
ちょっとずつ、話していく。
「お前ならどうする?」
そう聞かれて、即「離婚」と言った。
「完璧、棚にあげての話だよ~」
って、ふたりで笑った。
「1回であろうと、何年も続いていた関係であろうと、それは関係ない。私の中ではすべてがNGになる」
「そうか・・・」
「同じ部屋の空気も吸いたくない」
強烈な言葉を次から次へと、よくまぁ、自分のこと棚に上げて、って
ほんと言ってて自分で笑ってしまった。
「でもね、私なら、相手の女にはいかないな・・・」
「ん?」
「直接、夫につきつける」
「うん」
「携帯、逆パカとか」
「うん」
「それがね、あなたの奥さん、私のところにきたよね。
あなたとの生活を壊したくないということだよ。」
夫の不倫を知っても、それでもあえて、夫との生活を守りたいと言う。
「主人を失いたくないんです」と・・・
「よかったじゃん、『差し上げます』って言われなくて。必要とされているってことだよ」
「それに・・・『○○の妻です』って・・・その件名がすべてよ。私にはそう思えたよ」
頭の中、パニックになってるかと思いきや・・・
饒舌な私・・・
いや、混乱してたから、よけいおしゃべりになったのかも。
彼を、守りたいという思い。
私ごときのことで、彼の今の生活を壊してはいけないという思い。
奥様が「別れてさえくれれば」そう言ってくれてる今のうちに
彼を戻さなきゃいけない、そう感じていたのかも。