Motor & Outdoor Journalist 安藤眞の         逆説的よろず考現学

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Mar 26, 2013
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カテゴリ: カテゴリ未分類

みなさん、こんにちは。

 表記の件、ビアンキのクロスバイクで走行中に、「サスフォークが抜けた」とする事故で頸椎を損傷し、下半身不随になったかたが起こした裁判で、東京地裁で1億5千万円の賠償を命じる判決が出ました。僕は40年来の自転車マニアでもあるのですが、どうも腑に落ちない点があり、ちょっと調べてみました。

 「抜けた」とされるフロントフォークは、台湾のRST社製で、アウターチューブに水が侵入すると中に滞留してしまう構造になっており、なおかつ伸び側のストッパーをバネだけに頼っていたことから、バネが腐食破断してストッパー機能を果たさなくなり、走行中の振動で抜けたと判断され、自転車側の欠陥が認定されたことによる判決だそうです。

 なるほど、水が入ったら滞留する構造や、ストッパーがフェイルセーフ構造になっていなかったという点では、「問題のある設計」と言うことができます。しかし、自分でサスフォークを使用したり、分解したりした経験から、それだけで走行中に抜けるとは考えにくいんですね。

 サスフォークのストロークは少ないものでも3cmぐらいはありますし、それをスムーズに動かそうとすれば、少なくとも10cmぐらいの”差し込みしろ” が必用です。これを走行中に抜こうと思ったら、歩道の段差(切り下げの無い部分)を乗り越えるような感じでフロントを持ち上げるか、ウイリーでもしない限り不可能なんじゃないかと思うんですね。 

 再現実験は簡単です。スプリングの固定を外すか、意図的に破断させた状態で、どんな状況なら抜けるのかを確認するだけでよろしい。事故のあった場所を原告の供述と同じ走りかたで走行して、抜けるかどうかも確認してみれば良いでしょう。

こんなサイト

 これを見た限りでは、バネの破損は事故よりかなり以前に(少なくとも、バネのは断面を錆が覆ってしまう程度の時間)発生していたのは明白です。今回の事故との相関は低いのではないかと思います。

 さらに、アウターチューブの破断面が楕円になっていることからも、フォークには強い曲げ応力が作用していたと考えられます。もっとも現実的なのは、前輪に何かを巻き込んで、それがスポークとフォークの間に挟まってロックし、自転車がジャックナイフ状(ウイリーとは逆に、後輪が持ち上がって逆立ちすること)になって転倒したのではないか、という転倒モードです。これなら、原告の「ふわっとなった」という証言とも整合しますね。

 もちろん、ジャックナイフをしたぐらいでフォークが折れてしまうとしたら、それはそれで強度不足=設計上の欠陥ということになりますが、「真実でない理由」のまま判決が確定してしまうことだけは、避けるべきではないかと思います。

 恐らく販売元は上告すると思われますが、そうした視点からも検証が行われるべき事案ではないでしょうか。

3月30日追記

担当弁護士から判決文が公開されました。

原告被告双方で再現実験も行われたようですが、結論の「分離の場合前のめりに転倒する」というのは、当たり前すぎ。実験しなくてもわかります。立証すべきは「転倒の原因がフォークの分離なのかどうか」であるはずですが、そこがどうなったのかには触れられていません。

念のため書いておきますが、僕は被告の肩を持つわけではありません。怪我をされた原告のかたはお気の毒に思いますし、早く判決が確定されれば良いと思っています。でも、なんだかスッキリしないんですよね。事故車は原告の元にあるようですが、警察が証拠保全のために押収しなかったことが、なおさら事態をややこしくしてしまったのではないでしょうか。 






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Last updated  Mar 30, 2013 07:52:22 AM コメント(3) | コメントを書く


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