バイカルチャーとセミリンガル



母)今日は学校で何をしたの?

娘)Ah~、まず"Morning message"をやったの。それから~、
  "Spelling"のTestがあって、え?うん、100%(英語読み)だった。
  それから~、"Science"ルームに行って"Body"のこと
   Learnしたの。あとぉ~、"Lunch"で~"Fish"を Eatingしたの~。
母)・・・

おそらく皆さんは驚かれたと思う。
これでも5歳くらいまでは、日本に住む同じ年齢の子供が話す程度の
日本語を話していた。たしかに英語は今ほど身についていないにしても。

バイリンガル教育について、色んな本を調べたり先輩ママたちの経験を
参考にして、私が実践してきたことは、まず 第一言語をきちんと
無意識下に刷り込んであげることであった。
娘がまだ、片言しか話せない2歳の頃、「ママー、ミルク~!」と
言ってきたのを、毅然として「ミルクって何のこと?」と
突き放してかわいそうだった、と今でも”ばあちゃん”は言う。 
それほど、徹底して日本語にこだわっていたのだ。
しかし、それは”言葉”だけであり、文字の読み・書きなどの教育は
いっさい施して来なかった。敢えて教えることはしなかった。
その甲斐あって、娘はたくさんの日本語を知っている。5歳からは
日本語補習校に通わせたこともあって、友達との会話もスムーズであった。

一方、英語に関しては家庭ではいっさい使っていない。たまにVTRを
1週間に1本くらい見せる程度。絵本の読み聞かせは日本語の本のみである。
その代わり、地域の図書館での"Story time"に足繁く通った。
そこでは、学齢前の2~5歳までの子供たちに”読み聞かせ”をしたり、
歌ったり、踊ったりしながら、アメリカの文化に親しむことが目的である。

こちらでは満4歳で公立の小学校に入学できる。ちなみにプレ・キンダー
といわれ、その上がキンダーガーテン、1~5年生までを含めてエレメンタリー・スクールと呼ぶ。
それまでは、いつも私と一緒に公園とか、図書館で過ごしてきただけなので、言葉の壁の前に、”母子分離”の問題があったのである。
登校初日、教室に連れて行き、「それではまた後でね。」と踵を返すや否や、
「ママーいやだよー。」と言って泣き出してしまった。
この”セパレーション”が完全にできるまでに約ひと月を要した。
クラスの中に子供たちの写真が1枚ずつ貼ってあるが、娘のものだけ”ママだっこ”姿の写真でこのまま1年間そこにあった。
ひと月が経ち、慣れはじめたことと、少しずつお友達が出来たこと、そして決め手は、担任の先生がいつも私と握手を交わし、娘に「先生とママはいいお友達よ」と言ってくれたからだと思っている。

このプリ・キンダー時代にたくさんの英語を憶えてきた。
そして、よく遊んで上のキンダーガーテンに進級した。
今でも娘は言う、「あの頃は楽しかったなー。」と。
同じ校舎の中で、楽しく遊んできた思い出があることはいいなと思う。

6歳の1年生に進級してからのことだ。
これまでは日本語・英語とよいバランスで使いこなしてきたのが
突然、狂いはじめた。
それは、突然英語の語彙が急激に増えたことが原因だった。
また、ある程度ぺラぺラに英語をしゃべっていたので、親は油断してしまい、「学習英語」に対する認識が不足していたのであった。

英語だけを話す家庭では、自然と大人がつかう言葉をキャッチし、語彙を増やしてゆくことができる。
それは、子供たちの書いた作文を見たら一目瞭然である。
なんといっても、形容詞、比喩が豊かなこと。
私のように、外国語として英語を学んだ日本人が”すてき”と言う言葉
をいくつ英語で表現できるか?うーん、多くても5つしか思いうかばない。
これには、友達と家族ぐるみのおつき合い、それから地道な読書で言葉を
増やしていく方法が有効だと聞いて実践している。

前述の日本語補習校のこと。ここでは毎週土曜の一日(あるいは半日)だけで
日本の一週間の授業分をこなしていくハードな面がある。学年が上がるにつれて、宿題の量も増える。
しかし、子供たちはというと、どことなくリラックスして見える。
ここには大きく分けて3つのタイプ、例えば親の転勤で長期間あるいは短期間で来ていずれ帰国する子、両親ともに日本人であるが永住予定の子、そして
親のいずれかが外国人の子といった様々なバックグラウンドの違いがある。
ただひとつ共通しているのは、日本の文化を持ちながら同時にニューヨークで
アメリカの教育を受けていることである。
表面的にいくら英語をしゃべっていても、100%アメリカ人の心にはなりきれない。そこには、”二つの文化”を合せ持つ者同士の共通の感情があるのだと想像する。わずかな時間を惜しむかのようにしゃべりまくっている。

いったいどのレベルをもって”バイリンガル”と言えるのだろうか。
2つの言語を同じ程度理解し表現できるということならば、娘のそれは
程遠いものであろう。”おしゃべり”程度でバイリンガルと規定されるのならば、へたをするとどちらも中途半端な”セミリンガル”になってしまう心配もある。
言葉の発達において、学齢期、4年生、8年生とターニング・ポイントがあるという。これを上手にくぐり抜けていけば、いつかは夢のバイリンガルとなる日もそう遠くはないと確信している。
これからアメリカで赤ちゃんを産む予定の日本人のお母さん、こんなことを考えてみましたか?

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