ねこねここねこ

ソチラをまわって

    ソチラをまわって



ソチラをまわって
降りて下さい
読経の僧侶
六月の
輝く墓石群
私たちは
めいめいに
ほぼソチラだと思うあたりのだらだら坂
まわって
墓地を降りてきた
降りてから気がついた
そこが墓石のない誰かの墓所であることに
死者を踏んだのだ
軽い悔い
ドクダミの花
しかし
それも
すぐに忘れた
父の
一周忌
さて
ビールや
挨拶
会話の繁みに
時に
父の背中もみえがくれする酔界の死生観

終って その夜
だが
ソチラとは?
と考えざるを得なかった
土の沈黙
痛い
と死者は思ったか
思いはしない
どうせ
世界はことごとくが墓地
と考えることはたやすいが
それも
すぐに忘れること
痛い
と私はベッドではねた
はねてみた
ほぼ
ソチラだと思うあたりの生存の
斜面を確かに転がるように


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