ねこねここねこ

生没不詳

   生没不詳

厚い雨雲が、日本列島を
すっぽりつつんでいる気象図をみて
生没不詳、とつぶやく

六月がきて
またまた六月がきてとかくべきか
テイカカズラの緑の腕が
内田荘のほうに
みどりの影をおとして
にごし手の
ちいさな星の花をいっぱいつけているのをみる
そこが出口
いや出入り口かな
生死の、と思う

ことしは川に
魚影をみない
いまごろ、女房は
生徒たちに
どんな筋の英文を読ましているのだろう
墓地では母が
どんな告げ口を父にしているのか

生没不詳!
牛肉を
岡田精肉店で二百グラムつつんでもらって
また
六月の雨のなかへ
やれやれと
されば、小気味よく小手をかざし


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