高校生の時に姉に言われた。
会社帰りの姉と駅で出くわし、帰路に向かう途中だったと思う。
姉が空を見て、
「わあ、星が綺麗」と喜んでいた。
私は当時、眼鏡を持っていたが、
どうも恥ずかしいので授業中以外は掛けなかった。
しかし非常に視力は悪かった。
そのせいで駅でおじさんに、
「あの、こういうの見た事ありますか?」
と聞かれ、それがよく見えず至近距離まで近づいて、
それが例のアレだと気付き凍りついた事もあったっけ。
(しかもそれは魚肉ソーセージのような・・・あわわ)
「ほんとだ、綺麗だね。オリオン座かなんかが見える」
私にはゴミのような四つの星が見えただけだったが、
それでもいつもは見えない星が見える、見えたのでそう言った。
すると冒頭の台詞を言われたのだった。
***
初めてコンタクトレンズを付けた時には感動した。
信号の色も、車のあかりも、
自分の家でさえも明るく見えた。
ゴミのように見えていた四つの星が浮かぶ夜空に、
無数の星が出現したのだ。
私には今までこの星が全く見えていなかった。
見えていないという事は、存在しないと同じ事。
そこに、ここにたくさんの星が生まれたのであった。
***
今、私には無数の星が見える。
初めてコンタクトレンズを付けた時ほどの感動はないものの、
それでもよく見える素晴らしさを噛み締めている。
そしてふと思う。
私の心の視力はどれくらいなんだろうか、と。
この世には、
星のように見えなかった事がたくさんあるのではないか。
在るはずなのに、存在していなかった何かが。たくさん。
もっと耳を澄まして、目を凝らせば、
そこにはもっと素敵な夜空が広がっているのだろうか。
私には何が見えているんだろう。
どこまで、どの位、どんな夜空が見えているんだろう。
私には何が見えないんだろう。
私の先入観や頑固さで、
どれほどの星が見えないのだろうか。
曇り空や雨の日の夜空のように真っ暗なのかも知れないな。
***
星を見渡して。
星を数えて。
素敵なものがもっと見えるように。
心にも眼鏡を掛けて。
あの時、初めてコンタクトレンズを付けたあの日のように、
色んな物を見渡して、
色んな色の美しさに感動して。
心の夜空を、満天の星で埋め尽くしてみたい。
***
今日も星が綺麗だ。
コンタクトがあってよかった。
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