闇と光のレッスン
闇と光のレッスンはじめ、世界には
闇しかなかった。
その深い闇のなかで、
あるとき、いのちは、
自分が存在している
ことに気づいた。
いのちは、自分が
いのちであることを
知らなかった。
ただ、存在している
ことに気づいた。
いのちは、かたちを
もっていた。
いのちは、そのかたちに
ふれてみた。
それが何という名前で
あるかは知らなかったが、
いのちは、自分には
かたちがあることを知った。
いのちは、そのかたちを
動かしてみた。
動かしてみて、それが、
はじめて動くもので
あることを知った。
いのちは、ふれ、動かし、
やがて、立ち上がった。
気がつくと、あたりには、
光が満ちていた。
いのちは、光というものを
知らなかったが、
それはとてもまぶしく、
そして、うつくしかった。
光のなかで、いのちは、
はじめて、
自分のすがたを見た。
光のなかで、いのちは、
はじめて、世界には
自分以外のものが
存在することを知った。
いのちは、歩き、
自分以外のさまざまな
ものにふれた。
いのちは、そのたびに、
さまざまなことを知った。
熱いということ。
冷たいということ。
やわらかいということ。
かたいということ。
くだけるということ。
はじけるということ。
ちぢまるということ。
流れるということ。
とけるということ。
あわだつということ。
それが何であるかは、
何ひとつ知らなかったが、
それらがすべて、
世界であることを知った。
やがて、からだの
まんなかのあたりが、
きゅっと苦しくなる。
からだが何かを
欲していることが
わかる。
理由はわからないけれど、
からだのどこかが、
そう言っているのだ。
いのちは、からだの
おもむくままに手を伸ばし、
ふれたものを口に入れる。
口のなかで、
不思議な感覚が広がる。
いのちは、その感覚を
しみじみと味わう。
あの苦しさは、もう
どこかに消えていた。
いのちは、はじめて、
食べるということを知る。
いのちは、やがて、
たくさんの、ほかの
いのちたちと出会う。
ほかのいのちたちも、
自分と同じように、
歩き、そして、食べた。
歩き、そして、食べた。
歩き、そして、食べた。
歩き、そして、食べ…
やがて、
食べものは、尽きていく。
いのちたちは、
食べものをもとめ、
たがいにあらそい、
うばいあう。
オレノモノダ！
ワタシノモノ！
ダレニモヤラナイ！
ヨコセ！
イヤダ！
ヨコセ！
うばいあい、そして、
次々に、ちからつき、
たおれていく。
ちからつき、たおれていく。
すべてのいのちが、
たおれて、
動かなくなる。
…。
………。
……………。
長い、ながい、ときがたつ。
気がつくと、
いのちは、
闇のなかにいた。
その深い闇のなかで、
いのちは、
自分が存在している
ことに気づいた。
なぜ、自分が
ここにいるのか、
知らなかった。
自分がなにもので
あるかも、
知らなかった。
ただ、もう一度、
はじまることだけが
わかっていた。
過去の記憶はなかった。
でも、何かをうしなった、
痛みのような感覚だけが、
かすかに残っていた。
その痛みが、静かに
いのちの、
深いところを揺さぶる。
もう一度、
この闇のなかから、
立ち上がり、
何をするのか。
いのちは、
気づいていた。
何をするのも、
選ぶのは、すべて、
自分であること。
…。
……。
………。
しずかに、世界に、
光がさしこんでくる。
いのちは、立ち上がる。
もう一度、はじめるために…。
※このレッスンは、２００８年２月１３日の
稽古のなかで、おこなったものです。
ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
-
-
- お買い物マラソンでほしい！買った！…
- 楽天お買い物マラソン攻略法！家族も…
- (2024-12-04 20:30:09)
-
-
-
- 避難所
- 大マスコミカウントダウン！N党立花…
- (2024-12-04 18:43:49)
-
-
-
- たわごと
- スマホ手続を始めて、時間かかりまし…
- (2024-12-04 11:39:33)
-
© Rakuten Group, Inc.
