お気楽カフェ

お気楽カフェ

こっそり、日記の続き。

日記 から何となく始まった、意味のないストーリー~
       ~真面目な人は読まないでね~


結婚17年間、愛妻家と信じてきた夫は、単身赴任を前に何故か生き生きしている。疑惑の念が頭から離れない冴子は、夕飯の支度も手につかない。せっかく朝から時間をかけて煮込んだボルシチも今ひとつ味が決まらず、塩を振り入れようとした途端、容器のフタが取れて塩が全部入ってしまった。些細なきっかけから、人生は転がり落ちるもの。冴子は投げやりになり、家を出てしまう。

それから数年。やっと目が醒めた冴子。
「こんなことではいけないわ。もう一度初めから生き直すのよ」と思い立ち、何と小学校に再入学。一学期は順調に過ぎていき、待望の夏休み。しかし生来の怠け癖が顔を出し宿題の大半は手つかずのまま8月31日を迎えてしまう。半べそをかきながら図画の宿題をやっとの思いで描き上げたところに、3日前に拾ってきた猫のペタジーニがやって来て、泥足で上がったばかりか爪でガリガリとかきむしって絵を台無しにして去っていった。


呆然と絵を見つめる冴子。半ばやけくそで、ボロボロになった絵を学校に提出したのだが、何故だかコンクールで金賞に選ばれてしまう。
「ついに光が見えてきたわ」と顔を幾分上気させ、嬉々として表彰式で祭壇に上がろうとした時、持ち前のおっちょこちょいが災いし、冴子は膝を強打してしまった。病院の診断は全治3ヶ月。好事魔多しとはよく言ったものだ。

3ヶ月の病院生活からやっと解放され、自宅に戻ろうと地下鉄に乗ったものの、あろうことか冴子は全財産の入ったセカンドバッグを置き忘れて、一文無しになってしまう。
さすがに天を仰いで、「私・・・もう駄目かも知れないわ」とつぶやく冴子。そんな彼女の目に、ひらひらと風に舞う紙切れが飛び込んでくる。
「何かしら」と独り言を言いながら、蝶のように舞うそれを追いかける冴子。すうっと風が止み、紙切れは舞い降りてきた。手に取ってみるとそれは宝くじ。当選発表は、まさしく今日であった。
「こんなに運の悪い私に、いいことなんかあるはずがないわ」と思いながらも、冴子は近くの宝くじ売り場まで足を運び、確かめてもらった。
「ちょっと!!お客さん!!当たってますよ、大当たりです!」
にわかには信じがたい話だった。

でも。もしかしたら神様は、今まで辛いことばかりだった私に、「幸せになりなさい」って言ってくれてるのかも知れない、と思った冴子は、意を決して銀行に行ってみる事にした。折しも月末であり、銀行はどことなく落ち着かない空気。番号札を手に取り、椅子に腰掛けて読むともなく雑誌を広げていると、背後にただならぬ気配を感じた。振り返ると、覆面をした男が二人立っている。どう見ても銀行強盗だった。

2人の男は両脇から冴子を抱きかかえるようにしてカウンターの前まで行き、「すぐにありったけの金をこのトランクに詰めろ。もたもたしているとこの女の命はないからな。」と言い放った。背中に冷たい感触がある。おそらくはどちらかの男が冴子の背中に拳銃を押し当てているのだろう。行員たちは青ざめながら、奥の金庫の辺りで慌ただしく動き回っている。それと共に、まるでガス漏れでも起こったかのような「シューシュー」という音が聞こえてきた。冴子の脳裏に「絶体絶命」という文字が行き交っている。言葉では言い表せないほど過酷な状況に置かれると、人間はかえって冷静な気持ちになったりすることもあるのだと冴子は知った。

その時。奥のドアやカウンターの下から、突然何かが犯人の方をめがけて飛び出した。色とりどりのそれは、エクササイズボールであった。定期預金をしてくれた顧客へのプレゼント品として、奥の倉庫にあったたくさんのボールに、男性行員が急いで空気を入れたのだった。いくつかが犯人の頭や腕に命中し、拳銃らしきものは床に落ちた。一瞬の隙をついて、冴子は男達の腕をすり抜け拳銃を遠くに蹴りやって行員達のそばに逃げた。

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