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第7官界彷徨
ローザルクセンブルクの時代
2007/7/27
近くのマンションのノウゼンカズラ(凌霄花)です。暑さに負けず元気です。中学生の頃、芥川龍之介の「偸盗」という作品の中にこの花の形容をみつけてから、田舎の家の庭にあったこの花を、特別なものとして好きになりました。
花が似ていて、最近はサラダでも食べる「凌霄花蓮」は、花言葉が「愛国心」なんだそうです。明日は選挙ですね。国を愛することはその構成員である国民の幸福を願うこと。
平和で自由でゆたかで文化的な暮らしのために、愛国心をいっぱいこめて意思表示をしましょう。
1918年秋、監禁されていたブレスラウの獄中で、ローザ・ルクセンブルクはこう書いています。
「普通選挙、無制限な出版・集会の自由、自由な論争がなければ、あらゆる公的な制度の中の生活は萎えちじみ、偽りの生活になり、そこには官僚制だけが唯一の活動的な要素として残ることになろう」
「ただ、何の拘束もない、沸き立つような生活だけが、創造的な力を持ち、あらゆる誤りを自ら正すことができる」
と。
100年前と比べて、時代は明らかに進歩しています。歴史の歯車は決して過去へは戻らないと言われてきました。
それを引き戻したい人たちがいる。
その人たちは、まず教育基本法を変えることに着手し、素早く変えてしまいました。多分、賛成した議員達がその中身も理解しないままに。
昨日の週刊金曜日に俳優の高橋和也さん(日本の青空で鈴木安蔵役をした「男闘呼組」の人)が、小学生の子どもさん(彼は6人の子持ちのりちぎもん!)の書き取りに「愛国心」とか「日本陸軍」とかの出題があってびっくりした。
と話していらっしゃいました。
歴史を元に戻したい人たちは、過去の亡霊の祖父たちにおどらされているんでしょうか?
不気味です。
高橋和也さんはこうも言っています。
「国民と政治家・官僚の考えが完全に乖離していて、とても同じ世界に生きているとは思えない。もっと「民意」を政治に反映させなければならないと思います。」と。
2008/1/13
ローザの手紙
1918年、1月14日、カールの妻ゾフイーに宛てて
「少なくとも来年は、私自身が花を持って誕生日にあなたをお尋ねできるでしょう。その時はまた植物園や野原をご一緒に散歩することもできるでしょう。
ここは、今日は零度でした。だというのに、大気には肌触りも柔らかい、水水しい春の息吹が漂っています。そして空には高く、ミルクのように白い厚ぼったい雲と雲の間から、真っ蒼な空がちらちらと顔をのぞかせています。
私は、もう春が来たのだと有頂天です。
(中略)
まだ冬の雪に覆われている北半球の私たちの国でも、1月がはじまると、まるで魔法の杖にでもかかったかのように、植物界や動物界が目を覚ますのです。花のつぼみはすでにほころびかけ、動物の多くはもう子孫をつくる営みにとりかかります。」
獄中をたらいまわしされている人とは思えない、快活で饒舌なローザの手紙は、手紙文学としても一級だと言われています。
2008/1/15
薔薇祭
今日1月15日は、1919年にローザルクセンブルクが惨殺された日です!人々と集まって楽しいお茶会というわけにもいかず、私はこの日を薔薇祭となづけてローザルクセンブルクを偲ぶことにしました。
ローザの喜びそうな大輪の薔薇とそれを囲むように早咲きの桜をいけて、たっぷりの赤ワインをそなえました。
亡くなる2年前の手紙、これもカール(ともに殺された)の妻ゾフイーに宛てた手紙に、カラマーゾフの兄弟のことが書いてあるので少しご紹介します。
「ソニューシャ、(ゾフイーのこと)、あなたは、わたしがこんなに長い間監禁されていることに対してたいへん腹をたてていらっしゃる。「人間が他の人間の運命を左右してしまうなんて、どうしてそんなことになってしまったのでしょう?それはなぜなんでしょう?」ごめんなさいね、わたしはこれを読んだ時、声を出して笑わずにはいられませんでした。ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」の中にホフラコーワ夫人というのが出てきますが、この人がしょっちゅうこれとそっくり同じ質問をするのが例で、そういう場合、大抵は社交界に集まったひとたちを途方にくれたまなざしで次々に見渡すのです。
わたしの可愛い小鳥さん、人類の全文化史は、物質的諸条件のうちに深い根を張っている「人間による他の人間に対する支配」を基盤として成り立っているのですよ。これを変革するには、さらに、いまひとつの、苦悩に満ちた発展を遂げなければなりません。」
☆ローザも読んだカラキョウ!
訳者の秋元寿恵夫さんは、ローザについてこう書いています。
「戦争がないとき、漠然と戦争に反対するのは誰にでもできる。また、ある種の戦争を予想し、それについての反対として明確な見解をもつ事は、必ずしも至難ではない。だが、すでに戦争が始まってしまってからでもなお、自らの見解に誤りがないと信じ続けるものの数はだいぶ減ってくる。しかし、少しは、ある。
けれども、この意見を公然と表明し、できることならその戦争をやめさせようと働きかけるものに至っては、もはや希有の存在に属するのである。
ローザルクセンブルクというひとこそは、正しくそのひとりなのであった。」と。
さて、今日ローザに語りかけるとすれば、「黄色い本」のみっこちゃんの真似をして。
「ローザ、あなたにきょう捧げた花は、極東の春の野山を彩るものです。かつては同胞愛(ユマニテ)の象徴とされた哀しい過去もありましたが。」
「ローザ、極東は苦戦しております。今日の新聞には、都心の新宿御苑でPAC3という迎撃ミサイルの発射地点の調査が行われた、と書いてあります。これは何故でしょう?軍事国家への道をまた進むための看板にするためでしょうか?こうして人々は戦争が日常の日々に慣らされていくのでしょうか?」
ローザは笑って答えるでしょうね。「憲法も選挙権もあるあなたがたが、何をいっているの?」と。
2009年5月
獄中の宮本百合子もローザの手紙に思いを馳せていたそうです。
生活の道より
宮本百合子
今年の一月から半年ばかりの間、私は大変非人間的条件の下で生活することを余儀なくされた。
今になって見ると、その不自由な生活の終りに近くなってからのことであるが、私は心臓が弱って氷嚢を胸に当てていないと、肺動脈の鬱血で咳が出て苦しい状態にあった。
そういう或る日、塵くさい木造建物の二階の窓際で髪を梳かし、少しさっぱりした心持になって不図わきを見ると、二三冊の本と一緒に「ローザの手紙」という茶色表紙の本が目に入った。
手にとって見ると、ローザ・ルクセンブルグがヨーロッパ大戦中三年四ヵ月の間監禁生活を強いられていた、その期間にカール・リープクネヒトの妻にあてて書いた手紙が集録されたものであった。
ところどころ、それとなく拾い読みをしては私は激しい読書の飢渇を医やしたのであったが、そのような条件の中で偶然私の視野に入って来たこの小さい一冊の書翰集は二様、三様の感想をそのときの私の心に呼び起した。
その本の出版されていることを、私はずっと以前から知っていたし、訳者の井口という人をも少し知っていた。私が最初の小説を発表した時分、和服でまだ帝大の制帽をかぶっていた訳者は、私の仕事について何通かの手紙をくれたし訪問もされた。私はまだごく若くて、その人の専門の学問その他に注意をひかれるより、単純にその人の書く手紙に英語の詩やその他所謂偉大な思想家の著作からの引用文があんまり沢山あることで、何か親しみ難い感情を抱いた。
私は、手紙の中に様々の引用文などをする人の好みとは反対の好みを持っていたのであった。
訳者と私とのつき合いは発展せず、そのまま何年かがすぎ、しかしその人がドイツへゆくとき、又外国で病を得てスイスの療養所にいること、妻子の様子などについて短い消息は、エハガキなどで忘られた時分送られて来た。
それから後の数年の間に、私は日本の知識階級出の一婦人作家としては懸命な発展への道を辿り、訳者は、日本にであろうかベルリンにであろうかドイツ婦人の妻とその間に生れた子供をのこして早世した。
このローザの書翰集の粗末に扱われていたんでいる表紙の上にのこされている訳者の名は、帯もない姿で読んでいる私にそのような十数年以前のことを、おのずから思い出させた。そして長谷川如是閑氏や吉野作造氏の序文がついていることから、当時は全くわからなかったが、その井口という人が新人会初期の時代に青年期を生活した人であったことを理解し、当時の進歩的であった大学生の生活と今日の急進的学生の生活内容との間にある違いの大さを、深く感情を動かして思い較べたのであった。
ローザについては又別のことも思い出された。片山潜がアムステルダムの大会で演説をしたとき、ドイツ語の通訳はクララ・ツェトキンがやり、フランス語へはローザが翻訳して大衆に伝えたという話をきいたことがあった。
片山潜は、ローザの熱情あふれた才能につよく心をひかれた様子で、うむ、あれは傑物だった。葡萄酒がすきで、その大会なんかの時も朝から一杯やって、談論風発という勢だった。クララの方はもっと常識的な女だね。老人は、自分で煮た苺のジャムを食べさせながらそのようなことをも話した。
ローザの手紙はこのほか、カウツキーの妻にやったのを纏めたのが翻訳出版されているのである。しかしこの手紙のところどころ読んで、私が最も強く精神を引立てられたのはローザと自分との間にある歴史の発展の大さということについての実感であった。
獄中におけるローザの手紙は、その中に吐露されている自然の鳥や花に対する優しい情緒や憧憬やに充ちている点で有名である。そのような環境の中にあって公然と書き得る手紙の内容は略(ほぼ)きまったものであることは云えるのだが、私はあのように不屈であり、高い気概に満ちていた尊敬すべきローザでさえも、当時のまだ方向が決定しなかったドイツの運動の段階においてはさけがたいものであったろう或る種の制約をうけていたことを、手紙の多くの箇所に、特に彼女がゲーテの自然科学を研究した観念論者らしい態度に賛同し、自分も環境を無視して今地質の本をよんでいると書いているところで、強く感じたのであった。
情緒の昂揚に全身をまかせ、詩について音楽について、憧憬(あこがれ)ている旅の楽しさについて物語る時、マルクス主義の立場で経済論を書くローザはいつともなく黙祷だの、美しさだの、神秘だのの感情に溺れている。雲の綺麗さに恍惚として彼女は「こんな色や、こんな形があれば、人生は美しく生甲斐がありますわね」とソーニャに書き、「神様や、空や、雲や、人生の凡ての美しいものはウロンケにいのこりはしません」私の生きている限り、私と一緒にいると云っているのである。
これらの言葉は、混り気ないローザの心の虹であり、私の感情に非難を呼びおこすどころか、寧ろこの偉大な活動家であったローザのロマンチックな熱情を、可憐なようにさえ感じた。
私は、一人の平凡な婦人である自分がローザの心持をやさしく眺めて、それをローザが生きていた頃よりは広い土台の上に立って批判をもしていることに、驚かされたのであった。
個人の才能ではローザのようにとびぬけたものでは決してあり得ない一人の女が、猶且つ卓抜なローザをその歴史性によって理解し得るということはどこからその力が生じているのであろうか。私は、そこに、階級の発展が平凡な大衆の一人一人を、いつしか前進させている力の意味深い実際と、ローザが流した血が無駄でなかったこととの実証があると思ったのであった。
私は、その書翰集をよみとおす間もなく、再び流通のわるい空気の中に、汗と小便との匂いがつまっている格子の内に、追い下されたのであったが、なかなか感動は消えず、更に一つのことを思い起した。それはゴーリキイが、どうして今日の彼にまで発展することが出来たかということについて或る人が書いていた言葉であった。
ゴーリキイは、作品の中に「凡て必要なものを獲得し、獲得したものを手離そうとはしない」階級の気分を吹きこんだ。そればかりでなく、自身全くそのように生きて来たから、今日のゴーリキイたり得たというのである。
〔一九三四年十二月〕
2012年1月15日
今日は、ローザ・ルクセンブルクの命日なので、薔薇の花を買ってローザの好きなワインを供えました。
第一次世界大戦を起こしてはいけないと運動し、戦争が始まってしまってからも、兵士たちを守るために抗議の演説をし続けたローザ。
3年半ほどの間、その発言を押さえるために「保護監禁」として刑務所をたらいまわしされたローザは、差し入れの花束を美しい押し花にしていたそうです。
刑務所からのローザの手紙。
「ハクサンチドリにはなかなか典雅なおもむきがあるけれど、いかにも奇抜で不自然なその姿には何かしら、一種のすれっからしの、頽廃した気分があるように感じられてなりません。
これを見ると、わたしはいつも、ロココ時代のあのあでやかに身を飾り立てた侯爵夫人を思い出さずにはいられないのです。
一般に頽廃したものや、倒錯したものをみると、何によらずすぐ反発を感じてしまうわたしの生まれつきの性質から、こうしたものを見ると内心はなはだおだやかでなく、ある種の反発を感じてしまうのです。
わたしには、たとえばタンポポのようなあっさりしたものの方がどんなにうれしいか分かりません。
タンポポは、太陽の光をたっぷりとその色合いのうちに貯え、陽の光りに向かえば生き生きと感謝のこころを籠めてその花びらを開き、ちょっとでも日陰になろうものなら、すぐさましょげてつぼまってしまう所など、私とそっくりそのままです。」
こんな率直なローザは、1919年1月15日、白テロルの犠牲となったのです。
さて、今日の夜10時からのNHKEテレで「日本人は何を考えてきたのか2」「自由民権東北で始まる」という番組があり、菅原文太が被災地を訪問するそうです。
菅原文太といえば、今、CSの時代劇CHで放映中の「獅子の時代」で、さまざまな明治政府の政治の歪みを体験した上で、「自由自治元年」の旗を立てた秩父困民党に参加していきます。
秩父は農地が少ないために、農民たちは養蚕に取り組んでいたのですが、大きな赤字の穴埋めをしようとした、松方正義の増税策のために消費が冷え込み「松方デフレ」となり、秩父の農民たちは一家離散し、高利貸しの追求におびえている所です。今の野田内閣が彷彿としてきます。
今日のEテレでは、そんな菅原文太さんが、「明治政府と民権派が福島で衝突!真相は」と追求していきます。
ぜひご覧ください。
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