白いうさぎ 後編



・・・・

あなたに好きな人ができた。
それは、私の友達だった。

あなたのために、私は頑張った。

遊びに行ったり飲み会をしたり、
二人が親しくなるための場を、頑張ってセッティングした。

私を通して二人が親しくなって、
それからは、自分の胸の苦しみに頑張って耐えた。


私は、あなたが笑っていればそれだけで幸せだった。
あなたのそばに居られなくなれば、きっと私は死んでしまう。

二人が付き合うことになって、
「おまえのおかげだよ。」ってあなたが笑顔で言ってくれた時、
死にそうなほど胸が苦しかったけど。
私も笑って「感謝しなさいよ」って言えた。

あなたの幸せのためなら、
私がどんなに苦しくてもかまわない。
このままずっと、あなたの友達として、
あなたが笑ってる姿を見ているだけで、
それだけで私は良いって思った。



けれどあなたは、失恋した。

あなたがつらい顔をしてるのを見て、
私はなんとか慰めようと思った。

けど
よろこんじゃいけないんだけど
あなたが失恋してよかったって思った

ほんと、嫌な女。
あなたが幸せになればそれでいいなんて思ってたのに。
そんなの全部嘘だった。
自分をごまかしているだけだった。

あなたのそばに他の誰かが居るなんて、
あなたが誰かを想ってる姿を見るなんて、
そんなの、嫌。

あなたを見ているだけでいいなんて、
そんなステキな気持ちで居られない。
あなたから愛されたいって、貪欲に願いつづけている。


私は、ほんと嫌な女。

今だってあなたのことを慰めながら、
チャンスかもしれないなんて心のどこかで思ってる。

「・・ありがとうな。」
「ん?何がー?」
「オレのこと慰めてくれて。」
「ははっ。感謝しなさいよー。あんたのやけ酒に付き合ってあげてるんだから。」
「ほんと、ありがとう・・。」

ありがとうなんて、言わないで。
私は、自分がここにいたくているんだから。
あなたの隣にいたくているんだから。

「・・おまえがいてくれて良かった。」
「・・・何言ってんのよ。」
「いや、マジで。おまえがいてくれるおかげで、かなり元気付けられてる。」
「私なんかでよければ、いつでも一緒にいてあげますとも。」
「ありがとう。・・これからも、友達でいてくれな。」

・・・友達ね。はいはい。
なんかいい感じかと思ったら、まあ、そういうことだよね。
でも、私は嬉しい。
あなたが私を必要としてくれて、死ぬほど嬉しい。

「ま、腐れ縁だからね。そう簡単に友達はやめれないよ。」
「そだな。」

私は、うさぎ。
あなたが居なきゃ死んでしまう。

あなたから愛されたいと夢を見る。
もう一歩、あなたの方へ踏み出せば・・。
けれど、もしもあなたから愛されたとしても、
いつかあなたを失ってしまいそうで怖くなる。

今のままなら。友達のままなら。
一生あなたと居られる気がして・・。

あなたのそばにいられなくなって、
時がたって、いつかあなたの声も、空気も、全て忘れてしまう。
そんな日が来ることは、想像も出来ない。
きっと、あなたを忘れる日は一生こない。

あなたが居なきゃ、あなたを失った痛みできっと私は死んでしまう。

それならば、
あなたのそばで、あなたから愛されない痛みを抱きつづけたい・・。

私はうさぎ。
あなたに恋をしている、白いうさぎ。
とっても臆病な、白いうさぎ。


おわり

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