僕と月<後編>

《僕と月》

『何故だろう…』

『朝の光 明るいお日様と仲良くなれなんて…
    僕はただ 天に還り月の隣で輝いていたいだけなのに…』

今日も お日様は昇り
僕を優しく照らしている

そして いつものように僕は背を向けることしかできない…
それでも お日様は僕に話しかけてくる

「ねぇキミ!何故暗い日陰ばかりに顔を向けているんだい?
            たまには私にも顔を見せておくれよ」

そう言ってニコニコ微笑んでいる
僕は大きな声で言ったつもりだったが聞こえたかな…

「僕は お日様が嫌いなんです…」

「僕は暗い空に輝く月の隣にいきたいんだよ
    お日様は明るいから僕の気持ちなんてわからないだろ」

お日様はニコニコして話しかけてくる

「キミの気持ち?キミは何か勘違いをしていないかい?
   私は君達に「生」を与えてあげているのに・・・・」

僕は驚いた

「え?僕が生きているのは月の光を受けているからじゃないの?」

あきれたような顔をしてお日様は言った

「何を言っているんだいキミは…
  そんな日陰にばかりいるからいけないんだ
   私に顔を見せてごらん キミの最高の笑顔を見せてくれよ」

僕は…僕の心の中で何かが音を立てて壊れていく音がした

『僕は月の光を浴びて生きているんじゃないんだ…
              お日様の光で生きている…』

僕はまだ信じられないでいた

『お日様のおかげで生きているなんて…
    僕は月の光で生きているって思うのに…』

『でも…僕の背中はいつも暖かくて心地よい
     月が出る頃には眠りにつく僕の背中…』

『じっとしていると背中から聞こえてくる鼓動…
       僕が生きているのは背中の生気…』

『川のように水の流れる音…これは何?
       暖かい水の湧き出るような感じ
           これは何を意味するのか』

『僕は お日様の光を背中で感じ
           月の光を顔で感じている
  そして それが当たり前のように思っていた』

僕のまわりには たくさんの仲間がいる 
仲間の1人が言った言葉を思い出す

「キミは何故背中ばかりをお日様に向けているんだい?」

「キミの背中は偉いな キミが死なないように
         お日様の光をいっぱい浴びているよ」

僕は もうここには居たくないのに…
天に還ってお月様の隣に行きたいのに…

僕は月が出たら聞いてみようと思ったが
夕べ月に言われた事を思い出した

「お日様と仲良くしな」

仲良くしたら死ねないじゃないか…
僕は そっと日陰に顔を隠した

今夜月にもう1度聞いてみよう
ポカポカの お日様に背を向けて月が出るのを待った

僕が日陰に顔を隠してから
どれくらいの時間が経ったのだろう
ゆっくりと静かに辺りが暗くなってきた

空を見つめ心の中の疑問を思い出した

『僕の背中は元気で生ていることを楽しんでいる』

『僕は月の隣に行きたいと思っている』

僕と僕の背中は違う思いでここにいる…
月は お日様と仲良くしろと言う…

『天に還るのはいつになるのだろう』

『月と お日様は何故僕に話しかけてくれるのだろう』

お日様は 僕が嫌いだと言っているのに毎日話しかけてくる
僕は そんなお日様を無視すればいいんだからかまわないけど…

今の僕には 解らないことが多すぎる
僕はどうしたらいいのだろう…

暗くなっていく空を見つめ
月が出るのを待っている僕の頭の中は
月も星もない本当の暗闇の中にいるようだった

辺り一面に暗闇がやってきた
でも…

今日の月と星は いつもと違う…
ぼんやりとしか見えない…
月も出ているようだが うっすらと光が見えるだけ…

「僕はどうしたらいいの?」

見えない月に話しかけます

「お願い お月様 顔を出して!」

僕の声は深い霧の中に響いていて
月には届かなかった
その日…
僕は月と話しをすることができなかった

冷たい霧に包まれて
いつの間にか眠ってしまった

こんな暗い時間に眠ることなんてなかった僕
夢の中の月に話しかけるように
身体を揺らしながら
ぐっすり眠ってしまった

夢の中の月は

「さぁ ゆっくり眠りなさい
   そして 目が覚めたら お日様と友達になるんだよ」

そう言って優しく微笑んでいました

ぐっすり眠ってしまった僕が目を覚ました時
お日様が ゆっくり昇り始めた頃だった

いつもと違うすっきりとした気持ち…
お日様の陽射しが眩しかった

夕べの霧のせいか
僕の上に1粒の朝露が輝いていた

『なんて素敵な朝なんだろう
    なんて素敵な景色なんだろう』

僕の中で何かが変わった…

お日様がすっかり昇ったのを見て
僕は大きな声で

「おはよう!!!」

と 挨拶をした

お日様はビックリして目を丸くしたが
優しい声でこう言った

「日陰の好きな葉っぱ君 今日はずいぶんと元気だね おはよう」

ちょっと恥ずかしかった…
でも僕は俯かなかった
日陰に隠れることもしなかった

夕べの霧の魔法かもしれない…
気持ちよい朝を迎え
僕の中のたくさんの疑問は
いつの間にか消えていた…

朝露の中に映る僕の顔
真っ白で生気なんて無くなっている
僕の背中は蒼く眩しいくらいに輝いているのに…

僕は お日様に お願いをした

「僕の顔に優しい 温かな陽射しをあててください」

お日様は2度目のビックリ

「キミは私のことが嫌いじゃなかったのかね?」

僕は恥ずかしかったでも
もう 俯くことはない

「ごめんなさい…僕は あなたの優しさも月の優しさも
 まわりの仲間達のことも 何も解ろうとしていなかった
 僕は自分でやらなきゃいけないことまでを見失っていたんです」

僕は 夕べあったことを お日様に話した
夢の中の出来事だと思っていた
哀しい出来事を…

++霧が立ちこめた真っ白な夜
月に出逢えなくて1人淋しくしていた僕に
隣の仲間が話しかけてきた

「ごめんよ…キミより早く天に還ることになったんだ…」

『え?』

「呼んでいるんだよ…早く帰って来いってね…」

『なんで?僕じゃないんだよ!僕の方が先に月にお願いしてのに』

「僕の姿を見てごらん…」

仲間の言葉に顔を覗きこむと
顔が黄色に染まっていて
今にも枝から落ちてしまうくらいに力無く揺れていた

「僕は お日様の光をたくさん浴びてこの木に
   可愛い花を咲かせ 実をつける手伝いもした」

「だけど 木は大きくなり
  たくさんの若い葉を茂らせた
    年を取った自分にはもう花を咲かせることも
      実をつける手伝いをすることはできなくなったんだ」

黄色い葉っぱは言った

「なぜそんなに「死」を急いでいるんだい?
  キミには やらなきゃいけないことが いっぱいあるのに」

僕は黄色く染まった葉っぱを見つめた

「僕はここにいても何もすることがない
天に還れば街を見つめていられる
暗い夜の小さな物語を見ることができる
ここにいても友達はいないし
話しをする相手もいない
好きな子はいるけど…
そばに行くことも声をかけることもできない…
そんな僕がずっとここにいるなんて
出来るわけないじゃないか
いつも淋しくて涙を堪えてるのを
誰も知らないじゃないか
僕はここに居ちゃいけないから…
いつも独りぼっちはもうイヤなんだ」

僕は黄色の葉っぱに思っていたことを言った
黄色の葉っぱは首を振って聞いていた
僕の瞳に涙がいっぱいで落ちそうになった時
黄色の葉っぱが言った

「キミは何故 声をかけない?話そうとしない?」

「声をかけてくれるのを待っているだけじゃ友達はできないし
         好きな子にも振り向いてなんてもらえないよ」

「キミはいつも日陰に隠れて
           背中を向けてばかりだったじゃないか」

「何もできないなんておかしいよ
  できないんじゃなくて しないだけじゃないか」

「挨拶もしないで寝てばかりいたキミがいけないんだよ」

「私はもう長居はできない最後にキミと話せてよかったよ」

「お日様と仲良しになって元気になりな」

そう言って間もなく
黄色の葉っぱは
ヒラヒラと冷たいコンクリートの上に落ちていった
冷たい風に運ばれてカサカサ音をたてて
何処かに行ってしまった

僕は自分のいけなかったことを
黄色の葉っぱに教えてもらうことができた
ほんの少しの時間
僕は黄色の葉っぱと友達になれたような気がした…

黄色の葉っぱが風に運ばれ
天に還っていく姿を見て
僕は自分のしてきたことを思い返した

++仲間とも話しをしないで
自分の殻に閉じこっもっていた…

++誰も仲良くしてくれなかった…

++いつも日陰で寒かった
自分の背中がいつも温かくて嫌いだった…

++僕は この大きな木の邪魔もので
なんの役にもたっていない…

だけど…

違っていた…

僕が独りぼっちだったのは
僕が仲間になれなかったのは
僕が邪魔者だったのは

みんな僕の思いこみでしかなかった

これから僕は変わっていく
僕の葉にたくさんの お日様をあてて
花を咲かせ 実を付ける

そして

僕は仲間と楽しい毎日を送ろう
僕の葉が黄色に染まるその日まで
精一杯生きていこう
まだ やらなければいけないことはたくさんあるんだ

月の言葉…
それは僕に勇気と希望をくれた

「お日様と仲良くなるんだよ…」

黄色の葉っぱと話さなければわからなかった…
僕は緑の葉っぱなんだ

+++僕は葉っぱ+++

お日様の陽差しをいっぱい浴びて大きくなる
緑の葉っぱ

いつか花を咲かせる
緑の葉っぱ

いつか実を実らせる
緑の葉っぱ

僕の夢を叶えるため
その日がくるまで
一生懸命茂っている

緑色の若い葉っぱ

お日様の光ももう眩しくない
夜の暗闇でも
僕は怖くない

明日…

朝露で顔を洗おう

きっと素敵に笑ってる


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