そよかぜにっき

そよかぜにっき

おばあちゃんの金の指輪




空と雲


随分と前の話だけれど・・・

 わたしのおばあちゃんは、

畑仕事が大好きだった。

50坪ほどの畑に、

たくさんの種類の野菜を植えていて

いちご、うり、とまと、なすといろいろあった。

そして病気になっても、

畑しごとをやめることはなかった。

 ある日、おばあちゃんは、

大切な金の指輪を畑で失くしてしまった。

やつれた、おばあちゃんの指から、

畑仕事の間に、するりと抜けてしまったらしい。

探してみても、みつからない。

 金の指輪がなくなり、

怒ったのは、おじいちゃんだった。

畑でなくしたという、おばあちゃんの言葉を、

信じようとしなかった。

誰かにやったのに、嘘をついているのだろうと

毎日おばあちゃんを、責め続けた。

 そして、おばあちゃんは、疑惑の晴れぬまま、

病気でこの世を去ってしまった。

それから、しばらくたったある日のこと、

事件はおきた。

 畑仕事に行ったおじいちゃんが、

杭をうとうとしたが、少しも土の中に入らない。

杭を引き抜いてみてびっくりした。

その先には、四角に変形した、

純金の指輪が刺さっていたのだ。

それは、まぎれもなく、

おばあちゃんが畑で失くした指輪だった。

 みずからの力で疑惑を晴らしたおばあちゃんの指輪は、

今も実家の仏壇で、きらきらと輝いている。




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