そよかぜにっき

そよかぜにっき

ブルー



月のひととき


10数年前、私は育児ノイローゼになっていた。

5年勤めた仕事を辞め、

結婚2年目で授かった女の子を育てるため、

専業主婦となったのです。

喜びの中で育児できると考えたのもつかの間で、

数ヶ月のちには、すっかり落ち込むことになりました。

 抱き癖のついた赤ん坊は、

私の手を腱鞘炎にし、

洗濯を干すのもままならなくなり、

完全に2人きりの時間が増えたことで、

イライラはつのる一方でした。

「5階の家の窓から、赤ん坊を抱いて、

そっと手を伸ばし、その手を離すと、どうなるだろう。

きっと、この泣き声から開放されて、楽になる。」

毎日そんなことを考えるようになっていました。

実際に、窓に近づくと

実行に移してしまいそうな自分が恐くて、

窓辺にはいけなくなってしまっていました。

 どんどん煮詰まってきた私は、

夫にそのことを打ち明け、

そして、私が窓から手を出せないよう、

アルミフェンスをとりつけてもらうことになったのです。

少し、とぎれとぎれになった青空を見ながら、

「もうこれで、実行することは、できない」

そう思うと、心からほっとしました。

 今、かわいい赤ちゃんを連れたお母さんが、

ブルーな目をしていたら、

「あなたも、あの頃の私みたいに孤独と戦っているんだね。

がんばって!すぐに子供は大きくなるよ」

と声援を送りたくなるのです。

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