おんな鮎釣り師のホームページ

②野良犬のクロ・・・恋の季節


職場の駐車場には何匹も犬や猫が捨てられました。
ニワトリを捨てられたこともありました。
ヒヨコを飼っていたら大きくなってしまって、そのうち朝方に『コケコッコ~~~!』と啼くようになって、近所から苦情が来たので困って捨てたんでしょうかね。
人間が大好きなニワトリで、首を傾げて人の顔を覗き込んでくる姿は憎めなくて可愛かったそうです。(私は残念ながら見ていません)

いろんな動物が捨てられている度に、みんなで手分けして飼ってくれる人を捜す作業は、それは毎度大変なことでした。
親犬や親猫が子供を捨てる事はありません。
全て人間が捨てるのです。

職場の裏手は切り立った崖になっています。
その下には小さな細い川が流れています。
その崖の窪みや穴にクロは住んでいるようでした。


クロもお年頃になりました。
その頃夜になるとどこからか首輪をつけた柴犬が来て、クロと遊んでいる姿が見られるようになりました。
若くしなやかな体つきの二匹が、夜の闇の中を走っている姿は壮観でした。
一緒に走ろうと誘いに来る事もありました。
なんで犬のデートに、ついて行かないかんねん!二人で行っておいで。
そう言って断ると諦めて、また二匹で闇の中に消えて行きました。(笑)

初霜が降りた頃、クロの体つきが変わってきた事にみんな気付きました。
キュッっと、切れ上がっていたお腹のまわりが大きくなっています。
どうやらお母さんになるようです。
これは大変と、いらなくなった布団やドラム缶を持ち寄り、お客さんが崖の下に置きに行ってくれました。

その年は、ひときわ寒い冬でした。
何年かぶりの大雪が降ったクリスマス・イブの夜、クロはご飯を食べに来ませんでした。
よりによってなにもこんな寒い日に、生まんでもいいのに・・・
みんな心配そうに雪の降る空を見つめていました。



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