子犬たちの今後については、クロの仲良しの人達とよく話しました。
まだ見ぬ子犬達ですがみんな気がかりで仕方ないのです。
それだけの犬好き犬バカですので、飼える環境にある人はすでに飼えるだけ飼っています。
あとは家庭の事情で飼えなかったり、住宅問題で飼えないのでクロに愛情を注いでる人などでしょうか。
当然うちにもその頃は家の中で4匹も飼っていたので、それ以上は無理だったのです。
約束の時間に行くと、人の良さそうな年配のご夫婦がクロの家の前に座っていました。
その人達が例の年賀状のご夫婦です。
クロは用心して子供達を穴の中に入れて、出てこないようにしています。
どんな合図をしているんでしょう、不思議ですね。
その方達は偶然このクロの子供達の事を知って、このまま大きくなったら大変だろうし、今は犬を飼える環境だからうちで貰ってあげようと話し合ったそうです。
それにしても子供達が捕まらないので、しばらくクロを無視したフリをして無駄話しをして待ちました。
そのうちクロは子供達を順番に外に連れ出します。
それでも私達の手の届く所に、子供達が行かないように見張っていました。
長い時間をかけて、やっと一匹渡すことができましたがその後は、決して子供達を穴の中から出そうとしませんでした。
とうとう私達が根負けして、一匹だけで諦める事にしました。
もちろんクロには、いっぱい謝りました。
クロはあの時、どう思ったんだろ。
やっぱり私を恨んだだろうか・・・
子供達がコロコロと走り回れるようになったある日。
駐車場に出ると、クロが迎えに来ました。
隣の空き地の隅っこに子供達を連れて来ていたのです。
そっか、もう崖を登れるようになったんだね、すごいねみんな。
子供達は嬉しそうにもつれ合って遊んでいます。
クロと仲良くしていた人が「クロの子供を見せてもらった!」と興奮した様子で嬉しそうに報告しました。
どうやらクロは自分に親切にしてくれた人が来ると駐車場まで呼びに来て、子供達を見せていたようです。
それにしても、みんなの喜びよう・・・まるであれはジジババの顔ですね(笑)
私もそんな顔をしてたのかな?
子犬を見た喜びと、クロに選ばれし者の優越感が、みんなをあれほどまでに狂喜させたんでしょう。
雑種の子犬を見てそれほど喜んでいた人達も珍しいでしょうね。
クロはそうやってみんなに恩返しをしたんでしょう。
そんなクロ一家を冷たい目で見ていた人がいたなんて、その時はまだ知りませんでした。