蒼い森の備忘録

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カテゴリ: 本・まんが
光り輝く夜のあたしを見てくれ。


勝ちたい。勝ちたい。勝ちたい。
一番になりたい。尊敬されたい。
誰からも一目置かれる存在になりたい。
凄い社員だ、佐藤さんを入れてよかった、と言われたい。


誰か声をかけて。あたしを誘ってください。お願いだから、あたしに優しい言葉をかけてください。
綺麗だって言って、可愛いって言って。
お茶でも飲まないかって囁いて。
今度、二人きりで会いませんかって誘って。

(本文より)



一週間ぐらい毎晩毎晩、繰り返し繰り返し何度も読みました。
1~2ヶ月くらいは、この作品の毒気にあてられて、ぼーっとした状態が続いていたと思います。

何がそんなに私の心をとらえたのだろうか?


出てくる女が全員嘘を言っている、あるいは自分に都合のいいことしか言っていない。いや、本人たちにとっては、全て自分にとっての真実なのだろう。
「本当のこと」なんて、誰にもわかりはしない。


誰もがあるがままの自分を受け入れられない。
もがいてもがいて、「こうありたい」「こうあるはずだ」という自分と少しずつずれていく。
「天才」であったはずの ”ミツル”
「孤高の存在」であったはずの ”私” は、実はみんなからバカにされ、相手にされていなかった。
「一番になりたい」と願う ”和恵” にはその力はなく、それを認めることもできず、限界いっぱいまで自分を追い込んだあげく、昼と夜の顔を持つ街娼となる。
一人、「美貌」しかない ”ユリコ” だけは、その「美貌」だけで生き、「美貌」の衰えと共に転落していく自分を受け入れているようにみえる。同じ娼婦でも、そこが ”和恵” と違っている。


多分、私自身が自分に違和感を感じていたのだろう。「こんなはずじゃない」という思いが、 ”和恵” とシンクロして恐ろしくなったのだろうと思う。「私は ”和恵” と同じじゃないのだろうか」という恐怖に似た共感が、ページを繰らせたのかもしれない。
と、今は思っている。









グロテスク
『グロテスク』桐野夏生
2003年第31回泉鏡花文学賞受賞
発行:2003年6月
発行所:文藝春秋
価格:\2000(税込)

 文庫本 文春文庫 


  下(税込\660)





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Last updated  2007.12.17 04:43:09
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