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二冬続きの船の訪れに、村じゅうが沸いた。 けれども、中の者は皆死に絶えており、骸が着けていた揃いの赤い着物を分配後まもなく、恐ろしい出来事が起こった...。 嵐の夜、浜で火を焚いて、近づく船を坐礁させ、積み荷を奪い取る - 僻地の貧しい漁村に古くから伝わる、サバイバルのための過酷な風習"お船様"が招いた海辺の悲劇を描いて、著者の新境地を示す異色の長編小説。
舞台は能登半島。
時代は江戸時代。
たった150年くらい前
には生きるだけで必死なこんな生活が
あったわけで。
自分たちが飢えないためにたまに通りがかる船をかがり火で誘い込むようなまねまでして
船を座礁させ物品を奪うような。
命乞いする船夫たちを皆殺しにするのも致し方ないとするような。
9歳の子供が家族を飢えさせないために1匹でも魚を捕まえたいと願うような。
カレーうどんを食べながら読むような本ではなかったんですけれども
行きがかり上そんなハメになりなんだか申し訳ないような気分になりながら一気読み。
何度も言うようですがたったの150年ほど前。
5代くらい前のご先祖様はもしかしたらこんな生きるか死ぬかの毎日を生き抜いてくれたのかもしれない。
流石、過酷とか悲惨を書かせたら右に出るものがいない (と思う)
吉村センセの作品だけあります。
感想はまだ書いていないけれど『高熱隋道』なんか何度読み返してもその悲惨に深く打たれる作品です。
悲惨なんだけどそれを淡々と書く、でもぐんぐん読ませる筆は流石。
他人を殺してでも手に入れなければならない”少しのたくわえ”。
2度目の”お船様”で手に入れた1度も見たことも無い美しい着物は
天然痘を運んできて主人公の少年の母親と弟が発病してしまう。
何とか生きながらえたものの、発病したものは後々災いを残すということで
全員村を出て飢えて死ぬのがわかっているのに山に入っていく。
このときの母は 『あばたのひろがる母の顔には、不思議にも悲しみの表情は無い。目の光は澄み、穏やかな笑みに近いものすら口もとに浮かんでいるようであった。』。
彼女はあまりの貧困から、これで困難な人生から抜け出せるという
むしろ希望を感じていたのかもしれない。
たとえそれが死出の準備だとしても。
ビンボーだなんだと言ってもとにかく家に食べものがある今の暮らしは
そんな時代を生き抜いてくれた ご先祖様に感謝しなければいけない
なぁと
思わずにはいられない小説でした。
ご先祖様、ありがとう。
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