お座敷ばんび・PIYO

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君のぬくもり・5



君のぬくもり・5



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今年も夏がやってくる

暦の上では梅雨であるが、今年は空梅雨のようだ



月日が経ち、何もかも変化している

変化に気いていないわけではないが、ゆっくりと実感している時間がない

とにかく本当に多忙だった。





「  バーボン人生  」

2007-07-29 20:04:24



列車が東京駅に着いたには予定の定刻であった。

わたしは水色のTシャツにGパン、右手に小型の旅行かばんだけを持ってホームに降りた。

新学期の時期を迎えて、新しく大学に入った学生や、新入の社会人達の姿が目立つ。

ホームの中ほどには、転勤していく人を見送るらしい一団が輪をつくっている。

わたしはそのそれらの人ごみの中を抜けて階段をおりると、

新幹線の改札の左手にある公衆電話の前に立った。

隣街の従兄弟とでも呑みに出てみるか・・・



わたしと名前が一字違いの従兄弟だが、年は2つ上である。

電話番号を確かめ携帯から発信をかけと、従兄弟は仕事も終えた声で出た。


「今、東京駅に居るのだが今夜は空いてないだろうか。」

急に思いたっただけに従兄弟の言い方はおのずと低姿勢になる。

「これから定例会に出なくてはならないんだ。1時間ほどだが、その後、

 懇親会の座敷にも顔を出さなくてはならくてはね。どうしたんだ。」

「別に用事はないんだが、久しぶりにどうかと思ってね。」

「状況によってだが向かえるときには連絡する。」

「定例会か。じゃあ、銀座でいいんだろう。」

「もちろん、そのほうが近い。」


従兄弟はわたしと同業で、定例会には親族も揃っている。

抜け出しづらいのは想像するまでも無いことだ。




派手な女の多い銀座で並木通りの一角に外国ブランドの

商品だけを扱う店がある。その店の並びに「レスコー」と

いうクラブがある。「マノン・レスコー」からとった名前

らしいことはすぐに連想できる。店の前に立ち扉の右手の

小さな文字盤に目をおとした。もともとこの店は会員制だが、

なかに入るにはこの地盤の中から決まった文字盤を選んで

指で押さなければならない。「風の中の羽根・・・」 

わたしはつぶやきながら「風乃中乃羽根」と文字を追う。

この6文字がいわば暗証番号で、押し終わると同時に中から

ドアが開く仕掛けになっている。この言葉もヴジェルディーの

「風の中の羽のように、いつも変わる女心・・・」

の節からとったことは明白である。言い換えると、それを承知で

入ってきて欲しいという店主の気持ちなのかもしれない。






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